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原発処理水放出、来夏ずれ込みも 東電が4日設備着工

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東京電力ホールディングスは3日、福島第1原子力発電所の処理水を放出する設備の工事を4日に始める計画を発表した。まず海底トンネルの掘削やタンクをつなぐ配管設置などの作業に入る。廃炉作業に欠かせない処理水の放出に向けて一歩前進した。一方、工事の完了は当初想定した2023年4月中旬から、同年夏ごろまでずれ込む可能性も明らかにした。

福島第1原発の廃炉に当たっては、作業で生じる溶融燃料(デブリ)などを安全に保管する広いスペースが必要になる。現在は処理水の保管に使っているタンクを減らし、敷地スペースにゆとりをつくれるかどうかが焦点で、処理水の放出はその前提とされてきた。廃炉を着実に進められるかどうかは、原子力政策の信頼にも関わる。

工事の完了が当初見通しより遅れる可能性について、東電の担当者は「台風など気象や海洋条件など変動要因がある」と説明した。原子力規制委員会の審査が2カ月長引いた影響もある。汚染水の発生量が減ったため、既存のタンクが満杯になるのは23年秋ごろを想定する。海洋放出スタートが23年春に間に合わないとしても、処理水があふれる事態は避けられるとしている。

東電が公表した工事計画では、原発敷地から沖合に1キロメートルほど続く海底トンネルの掘削、タンクから海底トンネルに続く配管の設置などの作業を4日から順次始める。21年12月時点の計画では22年6月に着工し、工期は10カ月と見積もっていた。

今後の焦点は漁業団体などが処理水の放出に理解を示すかどうかに移る。全国漁業協同組合連合会(全漁連)は6月、「断固反対であることはいささかも変わらない」とする特別決議を採択した。東電の廃炉作業の責任者である小野明氏は3日の記者会見で「当社の考え方について引き続き理解を得られるよう説明を尽くす」と述べた。政府と東電は実際の放出前に関係者の理解を得る姿勢を示している。

放出計画について規制委は安全性の問題はないとの判断を7月に示した。更田豊志委員長は「技術的には難しくない」と強調している。東電は21年に柏崎刈羽原発(新潟県)の安全対策工事の完了を発表した直後に、一部が終わっていなかったことが発覚する騒動を起こしており、なお不安視する向きもある。

処理水の海洋放出は本格的な廃炉に向けた最初の一歩にすぎない面もある。処理水のような液体なら海水で薄めれば安全に処分できる可能性は高まるが、デブリのような固体の廃棄物はいったん敷地内に安全に保管し、最終処分の方法や場所を決める必要があり、扱いがはるかに難しい。廃炉の完了はなお見えず、原子力発電の信頼回復に向けた課題として残されている。

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