農産品輸出2年連続1兆円超 22年、円安も追い風に

2022年の農林水産物・食品の輸出額が10月までに1兆1218億円に達した。1兆円の大台を超えるのは前年(1兆2382億円)から2年連続で、ペースは1カ月早い。円安が追い風になっており、通年でも過去最高だった前年を上回るのがほぼ確実だ。政府は25年に2兆円の目標の前倒しも視野に入れる。
農林水産省が5日発表した1~10月の輸出額は前年同期比1486億円(15.3%)増えた。国・地域別では中国が24.5%増の2293億円で最も多い。ホタテ貝やアルコール飲料の人気が高い。米国が20.8%増の1655億円で続いた。米欧は新型コロナウイルス禍が収束に向かい、外食需要が回復した。

政府は同日の関係閣僚会議で、輸出先の食品衛生・検疫関連の規制に対応できる産地を増やす新たな戦略を掲げた。都道府県やJA、地域商社などが連携してサポートする体制を整備する。
例えばタイや米国などにリンゴを輸出する場合は園地の登録や、残留農薬などの基準値を満たす必要がある。海外展開には食品事業者や生産者などの対応が求められる。
閣僚会議では輸出拡大の余地が大きい重点品目にニシキゴイを追加することも決めた。色鮮やかなニシキゴイは観賞用として海外で人気が高い。これまで牛肉やホタテ貝、ウイスキーなど28品目を指定していた。
これらの品目について業界が一体となって輸出に取り組む「品目団体」も新たに11品目4団体を認定した。
輸出の裾野の拡大には、2011年の東京電力福島第1原子力発電所事故を受けた日本産品の輸入規制も壁として残る。22年はインドネシアと英国が撤廃するなど緩和の動きが広がるが、いまも12カ国・地域が規制を続けている。
11月中旬には岸田文雄首相が最大の輸出相手国である中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席に早期撤廃を要請した。23年春以降には福島第1原発の処理水の海洋放出も控える。科学的な安全性などに関する丁寧な情報発信が欠かせない。