熊本産アサリに外国産混入か 農水省、産地偽装で調査

農林水産省は1日、熊本県産と表示していたアサリの大半について、外国産が混入していた可能性が高いと発表した。全国の小売店を調査したところ、実際の漁獲量を大幅に上回る量が同県産として販売されていたこともわかった。産地偽装の疑いがある輸入業者や卸売事業者などに立ち入り検査し、実態把握を進める。
農水省は同日、国産アサリの産地表示に関する調査結果を公表した。生鮮アサリを販売している小売店829店舗から50点を買い上げてDNA分析した。熊本産と表示していた31点のうち、30点で「外国産が混入している可能性が高い」との判定が出た。
中国沿岸産や朝鮮半島西岸産のアサリが混入していたとみられる。北海道産や愛知県産も同様の調査をしたが、外国産の疑いはなかった。農水省は今回の結果だけでは原産国を特定できないため、輸入業者や卸売事業者など流通ルートをさかのぼって立ち入り検査を実施して実態把握を進めるとした。
調査では熊本県内の漁獲量を大幅に上回る量のアサリが、同県産として販売されている疑いがあることも判明した。2020年に同県でとれたアサリが21トンだったのに対し、21年10月~12月末までに同県産の表示で売られていた推計販売量は2485トンだった。3カ月間の販売量が、1年を通じての漁獲量を大幅に上回る結果になった。
金子原二郎農相は1日の閣議後の記者会見で「アサリをはじめとする食品の表示に対する消費者の信頼を揺るがしかねない」と述べ、「産地偽装に対して消費者庁や警察など関係機関と連携して厳正に対処する」と語った。産地偽装が確定した場合、食品表示法などに基づき対処する方針だ。
農水省などが11年度から現時点まで食品表示法に基づき措置した件数は計290件。アサリはシジミと並んで措置件数が最も多い。最近では熊本の水産加工会社が中国産と福岡県産のアサリを熊本県産と偽り販売していたことが判明し、同省が21年12月に再発防止を指示していた。