/

米国の高速炉計画に日本参加へ 原子力機構など協力

(更新)
think!多様な観点からニュースを考える

米国の原子力スタートアップなどによる高速炉の開発計画に日本が参加することが1日、わかった。日本原子力研究開発機構や三菱重工業が協力する。高速炉は使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策にとって重要な施設で、日本は技術の獲得をめざす。高速炉を巡っては西側主要国が開発を凍結するなど商用化へのハードルは高い。

米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が出資する米テラパワーと米エネルギー省の開発計画に、日本の原子力機構などが参加する。日米の関係者で協力に向けた覚書を交わし、今後、具体的な内容を詰める。

テラパワーはワイオミング州に2028年の運転開始をめざして高速炉を建設する。高速炉の出力は34.5万キロワットで、米政府に20億ドル(2300億円)近くの補助金を求めている。プロジェクトにかかる費用の半分程度を占めているという。

高速炉は高速の中性子による核分裂反応を使って通常の原子力発電所よりも効率的にプルトニウムなどを燃やす原子炉。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する核燃料サイクルに欠かせない施設の一つとされる。

日本で開発の中心だった高速増殖炉「もんじゅ」は実証炉への道筋をつくれないまま16年に廃炉が決まった。フランスの高速炉「アストリッド」計画への協力に軸足を移したが、仏政府が計画を凍結したため日本の高速炉研究は先が見えなくなっていた。

米国も本格的な高速炉開発から遠ざかっている。テラパワーの計画にあたり、日本に協力してほしいと持ちかけたという。日本はナトリウム漏れの事故を起こしたもんじゅの教訓や実験炉「常陽」のデータを提供し、大型ナトリウム試験施設「アテナ」も活用する。

日本政府は18年に決めた高速炉開発のロードマップに米国と協力する方針を記している。19年には日米で高速炉の試験炉開発に関する協力の覚書を交わしていた。

世界では、脱炭素やエネルギー安全保障の観点から発電時にほとんど二酸化炭素(CO2)を排出しない原発回帰の動きが欧州を中心に広がっている。

日本は東京電力福島第1原発の事故を受け、既存原発の再稼働は進んでいない。原子力を今後どう使っていくかの議論も進んでいないのが実情だ。

核燃料サイクルをめぐっては、1997年に完成予定だった日本原燃の使用済み核燃料の再処理工場(青森県六ケ所村)がまだできておらず、再処理の総事業費は約14兆円に膨らんだ。使用済み燃料を地中に埋める最終処分地の選定難航などの課題も抱える。リプレース(建て替え)の議論も封じており、原子力政策は行き詰まっている。

高速炉とは


高速炉は次世代原子炉の一つ。使用済み核燃料を使って効率よく発電する。高速中性子を使って核分裂を起こさせ、核燃料を増殖することや放射性廃棄物の毒性を低減できるとされる。ウランの有効利用につながるため、かつては「夢の技術」ともてはやされた。しかしナトリウムを冷却に使用する形式の場合、扱いが難しく、原子力技術で世界トップレベルのフランスですら開発を凍結している。世界でウランが余剰になったことも影響している。米国が開発する高速炉も実用化までは簡単な道のりではない。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

  • この投稿は現在非表示に設定されています

    (更新)
    (0/300)
(0/300)
投稿内容をご確認ください
投稿チェック項目誤字脱字がないかご確認ください
投稿チェック項目トラブル防止のため、記事で紹介している企業や人物と個人的つながりや利害関係がある場合はその旨をお書き添えください
投稿チェック項目URLを投稿文中に入力する場合は、URLの末尾にスペースか改行を入れてください
詳細は日経のコメントガイドラインをご参照ください

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

カーボンゼロ

温暖化ガス排出を実質ゼロにするカーボンゼロ。EVや再生エネルギー、蓄電池、各国政策などの最新ニュースのほか、データ解説や連載企画を提供します。

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン