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PayPay、楽天ペイ、d払い、au PAY…QR戦国時代

QRコード決済を巡る業者の加盟店獲得競争が激しくなっている。最大手のPayPay(ペイペイ)が10月1日から加盟店から得る決済手数料を全面有料化した。これに対抗して、KDDI「au PAY」やNTTドコモ「d払い」など競合各社は相次ぎ無料期間の延長キャンペーンを打ち出している。大手による手数料の無料期間が長引けば、採算が取れない新興事業者の再編が起こる可能性もある。手数料を巡る各社の戦略、加盟店や利用者へのメリットについて解説する。

PayPayは10月から中小事業者向けの決済手数料を変更し、手数料率を最低1.6%とした。コンビニエンスストアなど大手加盟店向けの手数料はすでに有料化している。一定の顧客基盤ができたと判断して中小事業者にも手数料を導入し、収益化する狙いがある。消費者への高いポイント還元率は当面維持する方針だ。PayPayは2018年10月に参入。中小店舗の手数料を21年9月まで3年間無料にしたほか、利用客への積極的なポイント還元策で取引高のシェアは約7割を誇るまでに成長したが、約340万カ所の半分を占めるとみられる中小の加盟店が少なからず離脱する可能性がある。

8月下旬のPayPayの発表を受け、競合大手は一気に無料延長にかじを切った。KDDIはau PAYの加盟店から得る決済手数料の無料期間を10月から1年間延長した。au PAYの中小向けの決済手数料は通常2.6%。9月末までキャンペーンで無料としていた。新規の加盟店だけでなく既存の店舗も対象とし、事業者の売り上げ規模も問わない。NTTドコモもd払いの決済手数料について、新規の加盟店を対象に9月から最長13カ月間、無料にした。「楽天ペイ」は新規の中小加盟店(年商10億円以下)を対象に1年間無料とする。

手数料無料の狙いは?

無料にすれば各社の経営に悪影響を及ぼす。経営難に陥った独立系のOrigami(オリガミ)は20年にメルペイが買収。スタートアップのpring(プリン)は21年7月、米グーグル傘下に入ると明らかにした。LINEは10月から実店舗に対する加盟店の新規募集を停止し、PayPayを傘下に持つZホールディングスとの経営統合に伴い国内でのQRコード決済事業を22年4月に統合する。無料や還元競争が続けば今後も再編が起きる可能性がある。PayPayの21年3月期の営業損益は700億円超の赤字だった。ただし決済業者の大手は携帯電話を手掛ける通信会社が多く、電子商取引(EC)やウェブサービスを手掛けている。手数料無料や利用客へのポイント還元に費用をかけてでも、決済をきっかけに他の自社サービスの利用者を増やす狙いがある。

例えば、ソフトバンクグループソフトバンクが出資するPayPayは、「ヤフーショッピング」や「ゾゾタウン」と連携。PayPayを軸にECなど各サービスがポイント制度などで連携する「金融エコシステム」の構築を進める考えだ。楽天ペイは「楽天市場」のほか、楽天グループの銀行やクレジットカードなどと連携している。NTTドコモはd払いを通じて8100万件超の携帯電話顧客の利用を促す。au PAYは1億人の会員を持つ共通ポイント「ポンタ」と連携しており、KDDIグループのサービス利用につなげる狙いだ。各社は顧客を自社の経済圏に取り込めれば、携帯電話の契約つなぎ留めも見込める。

導入店舗や利用者の利点は?

中小加盟店のクレジットカードの手数料は一般的に3~5%程度とされる。通常3%程度の交通系など電子マネーと比べてもQRコード決済の手数料は1~3%未満が多く、初期の手数料が無料であれば導入する店舗側にとってはメリットが大きい。LINEペイは400万カ所、d払いは350万カ所まで加盟店が増え、小売店や飲食店のほか納税や神社のお賽銭(さいせん)にまで利用できる場所が広がっている。

利用者にとってはスマホアプリを起動させる手間があり、Suica(スイカ)やPASMO(パスモ)などの電子マネーに比べて決して使い勝手が良いとはいえない。魅力なのは決済業者ごとのポイント付与や期間限定での還元サービスだ。PayPayの基本還元率は利用金額の0.5%で、月々の利用状況に応じて最大1.5%にまで増える。楽天ペイは100円払うごとに1ポイント付与される。楽天ペイに登録した楽天カードのポイントも原則たまるので、使うたびにポイントを二重取りできる。d払いは実店舗で使うと200円で1ポイントたまりdポイントカードと併用すれば二重取りが可能だ。

QRコードの決済額は急拡大

各社の加盟店獲得競争や利用客への還元策強化で、20年のQRコード決済額は4.2兆円とクレジットカード(61兆円)、電子マネー(6兆円)に次ぐ3番手であるものの、急激に取扱高が増えている。クレジットカードは「ビザ」や「マスターカード」といった世界共通の国際ブランドを持ち、国や地域をまたいで使える。新型コロナウイルス禍の逆風が吹くが、旅行や宿泊など高額利用はカード決済が中心だ。一方、QRコード決済は加盟店への手数料を低く設定できる強みがある。自前で加盟店からの決済情報を処理するシステムを持つためだ。

国のキャッシュレス化推進で普及進むか

国のキャッシュレス推進策もQRコード決済普及の追い風になっている。20年にはQRコード決済の統一規格「JPQR」が本格始動した。店舗は専用のウェブサイトで申し込めば、複数のQR決済サービスに一括加盟できる。QR決済には店が掲示するタイプがあり、読み取り機が要らず低コストで導入できる。ただ事業者ごとにQRコードの規格が異なり、店舗は複数のコードを掲示する必要があった。加盟手続きも個別に申し込む手間がかかっていた。

また20年9月から始まった「マイナポイント」事業ではマイナンバーカード保有者が対象の交通系ICカードやスマホを使ったQRコードでキャッシュレス決済した場合、利用額の25%(最大5千円相当)のポイントが還元される。期間は21年12月末まで。総務省は23年度以降、地方税の納付書にQRコードを印字し、スマートフォンで読み取るだけで納税できるようにする。同省や全国銀行協会、地方自治体などでつくる検討会は6月、QRコードの規格をとりまとめた。

利便性が増しているQRコード決済だが、スマホ紛失時などの不正利用のリスクも高くなる。スマホ管理には今まで以上の注意が求められる。また、スマホを持たない高齢者をいかに取り込めるかも課題だ。内閣府によると60歳代の25%、70歳以上の57%はスマホを使っていない。総務省はスマホを使えない高齢者は約2000万人いるとみる。総務省は5月、高齢者らがデジタル化から取り残されないようにスマホやマイナンバーカードの使い方を教える「デジタル活用支援員」について、25年度までの5年間の事業構想を公表。毎年度5000カ所で講習会を開き、5年間でのべ1000万人の高齢者の参加を促す。QRコード決済の統一規格「JPQR」を使った決済の実体験なども盛り込む予定だ。

QRコード決済とは


QRは「クイック・レスポンス」の略。ウェブサイトに接続するための英字や数字など複雑な情報を小さくまとめて表示するので、読み取りが速い。QRコードは自動車部品大手のデンソーグループが開発し、もともと部品の受発注管理用などに使われていたが、コードの読み取り機能を搭載したカメラ付き携帯電話が普及したことで、消費者向けの用途が拡大した。

利用するには専用アプリをダウンロードし、銀行口座やクレジットカードなどを登録する。QRコード決済に対応する店では店員がタブレットなどでQRコードを表示し、これをスマホで読み取る。QRコードを読み込むと利用者のスマホがネットにつながり、支払額とカード情報の確認などが行われ、問題がなければ決済完了通知が客と店それぞれに届く。QRコードを読んだ後の一連の流れはネット通販でカード決済をするときと基本的に同じだ。

海外では中国勢が先行。アリババ集団傘下の決済アプリ「アリペイ」、騰訊控股(テンセント)の対話アプリ「ウィーチャット」は10年代前半から低コストのQRコード決済を始めた。利用者はいずれも10億人を超える。アプリ上の支払い履歴などをもとに個人への小口融資業務なども展開する。国内では16年ごろからOrigamiの「オリガミペイ」(現在はサービス終了)や楽天グループの「楽天ペイ」が開始。18年から参入企業が一気に増え存在感が増した。
駿河翼、グラフィックス 竹林香織

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