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東電、処理水を海洋放出 いつ?濃度は?ビジュアル解説

東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出をめぐり、東京電力ホールディングスは実施計画を原子力規制委員会に申請した。原発の沖合1キロメートルほどの海洋へ放出する計画だ。トリチウム濃度を世界保健機関(WHO)が定める飲料水基準の7分の1程度にまで処理した上で、原発の敷地内から海底トンネルを通して放出する。原発事故から10年となるが、農産物や水産物の風評被害が続いている。沖合に放出することで今後どうなるのか、まとめた。

12月21日に原子力規制委員会に計画を申請した。規制委の審査や自治体の了解に6カ月、工事に10カ月あまりかかる見込みだ。海底トンネルのルートや放出口の位置は磁気調査などを終えて決めた。海底トンネルを通じて離れた場所に放出することで、放出した水が希釈用の海水として再び使われるのを避ける。海底トンネルの出口は日常的に漁業が行われていないエリアに設置する。

福島第1原発の処理水を巡っては、政府が4月に海洋放出の方針を決めた。東電はその後、沿岸と沖合のどちらで処理水を放出するかについて検討してきた。今後は漁業関係者など地元への説明を徹底し、2023年春にも放出を始める考えだ。岸田文雄首相も10月17日に福島第1原発を視察、処理水の海洋放出について「先送りできない大変重要な課題だ」と語った。

汚染水と処理水の違いは?

福島第1原発は2011年の東日本大震災による津波の影響で水素爆発や炉心溶融(メルトダウン)を伴う事故を起こした。現在も壊れた建屋に地下水や雨水が入り込み、高濃度の放射性物質を含んだ汚染水(20年で1日平均140トン)が発生している。そこから主な放射性物質を取り除いたのが処理水だ。処理水は原発敷地内にある1000基を超えるタンクで保管しており、今後の廃炉作業の妨げになる恐れが出ている。

トリチウムとは

汚染水は主に2段階で浄化処理している。第1段階のセシウム吸着装置では、汚染水に多く含まれている放射性物質のセシウムとストロンチウムを取り除く。第2段階の多核種除去設備(ALPS)で62種の放射性物質を取り除く。ただし、汚染水を浄化した後の処理水はトリチウムなどの放射性物質が残る。トリチウムは水素の放射性同位体で三重水素とも呼ばれ、水の中では水素原子(H)、トリチウム(T)、酸素原子(O)が結びついた「HTO」として存在する。水素と化学的性質が似ており、水と一体となっているため、現在の技術では取り除くのが難しい。

処理水は100倍以上に希釈した上で放出する。トリチウムを海水で希釈することによって人間の健康や生態系への悪影響を回避する。トリチウム濃度が1リットルあたり1500ベクレル未満とWHOが定める飲料水の基準の7分の1程度にまで下げる。さらに同社は防波堤の一部を改造し、処理水の希釈に使う港湾外の海水と港湾内の海水が混ざらないようにする。

トリチウムを含む水は濃度を基準値以下に薄めて海に流すことが国際的に認められている。国内外の原子力施設で実施しており、人や環境への影響はないとされるが、風評被害を懸念する声もある。

風評被害への対策は?

政府は、21年度補正予算で風評対策として需要減に対応して水産物を一時的に買い取る基金創設のため300億円を計上した。基金は放出前後に水産物の需要が減った場合、一時的に買い取ったり販路を拡大したりするのに充てる。風評影響を継続的に調査し、被害を抑えるための効果的な情報発信も探る。

また、政府は処理水の処分を巡り国際原子力機関(IAEA)が海洋放出の安全性などの検証を始めることで合意。22年1月以降に専門家が来日して処理水放出の安全性を検証する。政府はIAEAのお墨付きを得て海外に安全性を強調し風評被害の抑制を狙う。

11年の東日本大震災に伴う原発事故後、大気や海洋に放射性物質が放出され福島県産などの農産物や海産物を計54カ国・地域が輸入を制限した。福島県産ヒラメは全国平均との価格差が縮小するなど事故の影響から持ち直しつつある。ただ流通量や価格が落ち込んだままの農水産物もある。事故から10年たった今も韓国や台湾、中国など10以上の国・地域が輸入規制を続けている。

グラフィックス 内海悠

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