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藤井聡太時代が到来 将棋四冠への歩み

(更新)

将棋の第34期竜王戦七番勝負で、挑戦者の藤井聡太三冠(19)が13日、豊島将之竜王(31)を破り、対戦成績4勝0敗でタイトルを奪取した。14日の記者会見では「昇龍」と書いた色紙を手にし、書いた理由について「竜王戦だからということもあるが上を向いて目指していけるようにと意味を込めた」と話した。竜王は将棋界最高のタイトルの一つ。19歳3カ月の藤井新竜王は王位・叡王・棋聖と合わせた四冠となり、羽生善治九段が達成した22歳9カ月の最年少記録を28年ぶりに更新した。将棋の八大タイトルのうち藤井四冠が半数を占め、名実ともに棋界トップに立ったといえる。強さの源泉はどこにあるのか、これまでの歩みを振り返ってみた。

5歳で始め14歳2カ月でプロに

きっかけは5歳の時に祖母が買い与えた将棋盤。家族が教えられたのは駒の動かし方など基本的なルールまでで、「もっとやりたい」と母親に訴え、将棋教室に通った。教室では3手詰め、5手詰めの課題を次々と解き、指し方の基本形である定跡を書いた本は小学1年でクリア。通っていた将棋教室の文本力雄塾長は「物覚えがずばぬけて早い。天才とはこういうことかと思った」と語っている。

10歳で日本将棋連盟の棋士養成機関「奨励会」に入会した。師匠は杉本昌隆八段。順調に昇級・昇段を続け、勝ち抜きが厳しいことで知られる三段リーグでは1期目で13勝5敗のトップとなり、最年少の14歳2カ月でプロ入りを果たす。加藤一二三・九段、谷川浩司九段、羽生善治九段、渡辺明三冠に続く5人目の「中学生棋士」になった。

プロ棋士になる前から注目される存在だった。奨励会二段の2015年には、プロのトップ棋士らを破って、詰め将棋の解答の速さと正確さを競う「詰将棋解答選手権」で優勝したのだ。詰め将棋は、王手を連続させながら最短の手数で相手の玉を詰ませるパズルだ。いくつかの駒が置かれた「問題」を解く上では多くの選択肢があり、論理的な思考力が必要となる。一般の対局である「指し将棋」とは区別されるが、終盤戦での読みの力を鍛える練習方法としてアマチュアだけでなくプロ棋士にも定着している。8歳で初めて出場し、5回目の参加での快挙だった。詰め将棋の創作も行っており、専門雑誌に掲載されたこともある。

デビューから負けなし29連勝

デビュー戦から話題ずくめだった。対戦相手は当時現役最年長の加藤一二三・九段。「神武以来の天才」と呼ばれ、それまで62年間破られなかった14歳7カ月の最年少プロの記録を持っていた。76歳との対決に勝利し、この対局を含め負けなしの29連勝の史上最多記録を樹立した。「望外の結果」(デビュー11連勝の新記録達成時)「僥倖(ぎょうこう)としかいいようがない」(20連勝達成時)といった対局後に発する中学生らしからぬコメント力にも注目が集まった。

デビューからの活躍で将棋への人気が高まり、各地の将棋教室への入門者が増えたほか、関連グッズが売れた。幼少期に親しんだスイス製の知育玩具「キュボロ」がテレビ番組で紹介され、玩具店からの注文が急増し品切れが相次いだ。テレビやネットの中継を見て楽しむファン「観(み)る将」も増え、対局中の食事やおやつにまで注目されるようになった。

初のタイトル獲得は棋聖で17歳11カ月。「中学生棋士」の先輩である渡辺・現三冠を破っての快挙だった。18歳1カ月のときには「中年の星」と呼ばれる木村一基九段を破って王位を獲得し二冠になった。このときの王位戦の封じ手(2日制の対局で、初日を終え手番となった棋士が2日目最初の指し手を用紙に記入するもの)はインターネットオークションにかけられ最高で1500万円の入札があった。21年9月には竜王戦でも戦った豊島叡王を破り三冠を達成した。

29連勝のほか、棋戦優勝(朝日杯、15歳6カ月)、初のタイトル獲得(棋聖、17歳11カ月)など様々な最年少記録を打ち立ててきた。順調に昇段も重ね最高位の九段には18歳11カ月で到達した。今年でデビュー6年目。通算200勝以上挙げた棋士の中で唯一の勝率8割超えだ。17~20年度まで4年連続で勝率1位の成績を残している。勝利数も17、19、20年度で1位だ。20年度には初めて将棋大賞の最優秀棋士賞を受賞した。

全冠制覇への期待高まる

今後期待されるのは、羽生九段に続くタイトル全冠制覇がなるかだ。現在持っているタイトルは竜王・王位・叡王・棋聖。そのほかのタイトルホルダーは渡辺三冠(名人・棋王・王将)と永瀬拓矢王座の2人だ。

ほとんどのタイトルは勝ち続ければ1年で手にすることができるが、唯一の例外が名人だ。名人戦の予選ともいえる順位戦は、各クラスごとに1年をかけて戦われる。最上位のA級に属してトップの成績を収めなければ挑戦権を得ることができない。

順位戦ではC級1組在籍初年度に9勝1敗の成績を残したものの、当時の昇級枠2人の壁に阻まれ昇級が果たせなかった。翌年にはB級2組に昇級し、現在B級1組に在籍する藤井四冠は、11月12日現在で6勝1敗の2位につけている。上位2人がA級に昇級できる。A級で1位になり、名人に挑戦できるのは最短で23年春になる。そのころ藤井四冠は20歳。最年少名人の記録は谷川浩司九段が持つ21歳2カ月だ。羽生九段が1996年に全冠制覇(当時は七冠)を達成したのは25歳の時。当時よりタイトルが1つ増え、難易度は上がっている。

〈詰め将棋の解答〉▲1三飛△1四銀▲同飛成△同玉▲1三桂成△同玉▲1二と△1四玉▲1五銀△同玉▲4二馬△3三角▲同馬△同香▲4八角△3七歩▲同角△2六歩▲同角△1四玉▲1三と△同玉▲1四歩△同玉▲1五歩△1三玉▲3五角△同銀▲2五桂まで29手詰
グラフィックス 竹林香織

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