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不動産賃貸事業で失敗するワケ 修繕計画の反映を

20代からのマイホーム考(28)

前回のコラムでは、15年から20年前に相続対策を目的として取得(または建築)した賃貸物件の経営が苦しくなってしまう主な理由として、賃料の低下に対する備えがないがしろになっていることをあげました。今回は、中長期的な修繕計画を反映した収支計画を立てないままに時間が経過し、経営が苦しくなってしまった例を紹介します。

大きな修繕を見込まぬ事業収支予想

投資用不動産の購入や賃貸住宅建築を検討する際は、30年程度の事業収支予想を見せてもらい、中長期的な収支の状態を判断材料の一つとすることが一般的です。前回は、この収支予想の内、賃料の下落や空室について注意しましょうと指摘しました。今回は支出部分に注目します。

賃貸事業での支出は、管理委託費や建物管理費、修繕費、固定資産税・都市計画税、水光熱費、保険料、金利などがありますが、事業収支予想では修繕費がさほど大きくないものがほとんどです。退去時に室内をクリーニングする費用や壁紙の張り替え費用といった一般的な修繕費しか含んでいないことが主な理由です。しかし、修繕費にはもっとお金のかかる屋根や外壁の全面補修、各種設備の全面交換といったものもあります。これが事業収支に組み込まれていないケースが多いのです。セールス上の都合もあるのか、こうした費用がかかることについてあまりクローズアップされません。

15~20年後に大きな修繕支出

次の表は、一般的な住宅における主な部位の交換または全面補修時期の目安です。数年おきに劣化状況を点検し、適切なメンテナンスを行えば、この表で示した期間より長持ちすることもありますし、立地によってはもっと周期が短くなる場合もあります。ですから、必ずしもこの表のとおりに交換または全面補修する必要はありませんが、将来、修繕費用がどのタイミングで発生するかについて、一定の目安になります。

表を見ると、15~20年程度で交換または全面修繕を検討すべき部位が多いことに気づくと思います。それぞれについてかかる費用は、物件の規模や立地、劣化状況によって様々です。例えば、筆者が所有する2階建で延べ床面積200㎡強、築35年の中古木造アパートで、外壁と屋根の防水塗装工事にかかった費用は、足場設置費用を含め300万円程度でした。このときは、前の所有者が一定のメンテナンスをしてくださっていたことから、屋根は全面ふき替えせずに塗装で十分と判断しましたが、ふき替えとなるともっと大きな額がかかったのではないかと思います。

手取りを使い切らない

こうした修繕費用がかかるという認識がないままでいると、当初の15年間で得た税引き後の手取りのほとんどを使い切ってしまうということもあります。その結果、修繕費負担が大きくなるころになって困ってしまうのです。ですから、取得や建築をしてからさほど時間が経過していないのであれば、今からでも修繕費用の積み立てを検討しておくとよいでしょう。

筆者の感覚ですが、新築時の建物代金の1%程度を当初から毎年積み立てると、15年程度で外壁と屋根の修繕費用がためられるというイメージです。建物代金が3000万円ならば15年で450万円となります。このほか、給湯器やエアコンも10年で交換する場合、毎年どのくらいのお金をためる必要があるか考えておくと、いざというとき困りません。

また、まだ大丈夫だろうと修繕しないまま放置すると、思った以上に費用がかかってしまう場合もありますので、少なくとも15年前後経過したところで建物診断をし修繕を検討したほうが、結果的に修繕費用を安く抑えることができます。工事会社に診断をお願いすると、本来修繕すべきでないところまで見積もられてしまうのではないかと不安になる方もいらっしゃるでしょう。その場合は、建物診断のみを行う中立的な調査会社に依頼をすると安心です。

タイムリーな修繕は、他の物件に対して競争力を維持することや、賃料下落、空室率の上昇を抑えることにもつながるので、賃貸経営の必須課題として常に意識しておきましょう。

田中歩(たなか・あゆみ)
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。

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住宅資金は老後資金、教育資金と並ぶ人生三大資金です。20代、30代から考えたい「失敗しないマイホーム選び」について不動産コンサルタントの田中歩氏が解説します。隔週月曜日に掲載します。

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