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豪雨で崩壊リスク高まる擁壁も チェックポイントは

20代からのマイホーム考(32)

「我が家の擁壁チェックシート(案)」をもとに擁壁をチェックしてみたい

ここ数年、経験したことのないような雨量を体験するという事象がしばしば発生しています。こうした中、住宅地にある擁壁(ようへき、斜面の土をとどめるための壁状の建築物)にも注意を払う必要が出てきたのではないかと考えています。擁壁は、その土圧を鉄筋コンクリートなどの構造で支えていますが、一定の技術基準を満たしていない擁壁や劣化が進んでいる擁壁の場合、大量の雨によって想定以上に高まった土圧に耐えられなくなり、崩壊してしまう可能性がないわけではないのです。今回は国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート」などから、擁壁のチェックポイントについて紹介したいと思います。

すぐわかる危険な擁壁

このチェックシートは、擁壁のおおまかな危険度を一般の方が自分でチェックできるように作られています。まず、以下の4つの擁壁は、宅地の擁壁として適切ではないとしています。これらは構造が不安定なものが多く、役所への届け出などをしないで勝手につくられたものもあるようです。こうした擁壁については専門家に相談すべきだとされています。

国土交通省「我が家の宅地安全マニュアル」より抜粋

特に、土の圧力で変形して膨らんでいる、大きなずれや亀裂が生じているなどの場合は早急な対応が必要です。住まいを買おうと思っている方は、こうした擁壁の上にたつ家、下にたつ家を検討する場合には注意が必要です。

水抜き穴や排水設備をチェック

次に、一般的によく見られる以下の3つの擁壁についてです。これらは先の4つの擁壁ほど危険性が高いわけではないため、チェックシートでは健全性をチェックするという内容になっています。

国土交通省「我が家の擁壁チェックシート(案)」より抜粋

主な健全性チェック項目のひとつに、「水抜き穴」の有無があります。擁壁は土の圧力を受け止めるようにつくられていますが、雨水が土に浸透するとさらにその圧力が高まりますので、それを開放するために水抜き穴がつくられています。この水抜き穴が3平方メートルあたりに1つ(内径75ミリメートル)あるかどうかがポイントになります。水抜き穴がないケース、内径が極端に小さいケースなども散見されますので注意が必要です。また、擁壁の上にある「排水施設(U字溝など雨水を排水する施設)」の有無も重要です。擁壁上部で排水できなければ水圧が高まる原因になるからです。

水抜き穴や排水施設がきちんと機能する状態になっているかどうかも重要で、土砂の堆積や雑草などによって適正な排水ができない状態になっていないかどうかもチェックポイントになっています。また、しばらく雨が降っていないにもかかわらず、常に擁壁面が湿っている、水がしみだしているという状態は、排水がきちんと機能しておらず、擁壁に想定以上の圧力がかかっている可能性が疑われます。想定以上の圧力から発生すると考えられるクラック(ひび割れ)や水平・垂直方向のズレ、擁壁コーナー部分のズレや開き、擁壁のふくらみや傾斜などもチェック項目になっています。

このチェックシートでは、こうしたチェック項目についてそれぞれ細かく点数化しており、その総合得点で3段階の安全度を確認できるようになっています。

擁壁所有者に問われる維持管理責任

擁壁が法律で必要とされる手続きが行われているかを役所で調べることも可能です。手続きが行われていないという場合は、現行法において手続きを必要としない規模の擁壁であるか、法律で規制されていなかった時代につくられたものか、届け出をしていないものかのいずれかということになります。

仮に法的な手続きを踏んだ擁壁であっても、維持管理が不適切であった結果、擁壁が崩壊する可能性もありますので、このチェックシートを利用して安全性を確認することは意味があることです。

なお、擁壁が崩壊するなどの事故が発生すれば、その所有者に責任が及ぶというのが一般的ですから、自身が所有する擁壁についてこれを機に確認していただくとよいと思います。また、これから住まいを買う方や擁壁の近くで暮らす方も、このチェックシートを利用するなどして、安全な暮らしに役立てていただければと思います。

田中歩(たなか・あゆみ)
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。

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住宅資金は老後資金、教育資金と並ぶ人生三大資金です。20代、30代から考えたい「失敗しないマイホーム選び」について不動産コンサルタントの田中歩氏が解説します。隔週月曜日に掲載します。

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