40代半ばで投資スタート 「リスク」って何?
Dr.マネーお悩み外来 Vol.19

お金の悩みは千差万別。でもご安心ください。解決策は必ずあります。「Dr.マネーお悩み外来」では、あなたがお金と上手に付き合い、より豊かな人生が送れるようファイナンシャルプランナー(FP)の白鳥京香がお手伝いいたします。本日もお金の悩みを抱えた人が「白鳥FP事務所」のzoom相談にやってきました。
Mさん 現在の貯蓄額は800万円です。老後の資金として増やしていきたいと思いますが、最悪、価格が下がっても将来生活に支障がない範囲で投資したいと思っています。いくらまで投資できますか。
白鳥 投資をするとき、どのくらい下がる可能性があるのかを考えておくことは大切ですね。
いくらまでならマイナスになっても耐えられるか、老後の生活に支障がないかというその度合いのことを「リスク許容度」といいます。リスクを取らなければリターンは得られませんが、リスクをとったからといって必ずリターンが得られるわけでもありません。リスクとは収益(リターン)の振れ幅のことですから、投資ではこのぶれ(リスク)を減らすために分散投資を行うことが大切なポイントです。
リスクの大きさは、過去の実績から測る方法があります。どのくらいの確率で、どのくらいの範囲のリターンが見込めるかをみるのが「標準偏差(σ=シグマ)」で、今回は「%」で表します。標準偏差というのは平均値からの標準的な距離のことで、標準偏差が20%で平均リターンが5%(いずれも年率)なら、1年後のリターンが平均リターン5%を起点として上下に20%ずつ、+25%から-15%の範囲に68%の確率で収まるということです。
標準偏差を2倍(2σ)にすると、+45%から−35%の範囲に95%の確率で収まるので、1年間に最悪は−35%下がることもあるという目安を知ることができます。
仮に100万円を運用した場合で考えると、1年間で最悪の場合は最大35万円の損を覚悟しなければならないということです。良いときはプラス45万円です。ただ売却や解約をしなければそれは「含み損」の状態です。お金が必要な時期に、下落した投信を解約せざるを得ないということにならないように余裕資金で行うことが大切です。
では、Mさんはいくらまでリスク商品を持つことができるのでしょう。
例えば、日本株式で運用するインデックス投信30万円、先進国株式で運用するインデックス投信70万円の合計100万円を保有すると、期待リターンは約5.8%、リスク約16%ですので(国家公務員共済組合連合会の前提数値「2018年度業務概況書」より計算)、1年間に最悪の場合約26万円下落の可能性がありますが、同時に38万円ほど増えるかもしれません。
1年間のリスクとリターンが変わらないことが前提ですが、運用を長く続けていくと、考え方としては図のように長期投資が有利といえるでしょう。

Mさんが800万円の資金のうち2割を日本株式インデックスファンドで、3割を先進国株式インデックスファンドで、残りの5割は預貯金で持っておくことにしたとしましょう。
計算を簡単にするために、内外の株式の期待リターンは共に5%、リスクは共に20%とすると、リスクは10%【20×0.2(日本株)+20×0.3(先進国株)+0×0.5(預貯金)】で、期待リターンは2.5%、最大損失率はマイナス17.5%(2.5%−2×10%)です。運用金額は400万円なので、最悪の場合は70万円(400万円×0.175)を失うことになります。
老後30年間は月にすると360月です。損失が70万円となると、毎月の生活費は約2000円減るということです。運用資金が800万円なら140万円減で、取り崩せるお金が約4000円減るということです。このくらいのリスクをとっていると理解しましょう。
資産運用の目的の一つに、将来インフレになっても商品やサービスを買う力を減らさないようにすることがあります。将来物価がどのくらい上がるかわかりませんが、物価上昇率を上回る利回りで運用できれば、購買力(商品を買う力)は減らないと考えられますので、資産の一部は運用しておいた方がよいでしょう。その場合はNISA(少額投資非課税制度)やイデコ(個人型確定拠出年金)を優先的に使い、信託報酬が安い低コストの商品を選びましょう。
きょうの処方箋です。
・投資は余裕資金で行い、長期・分散・低コストで。
ではまた2週間後に。

本日もお金の悩みを抱えた若者が「白鳥FP事務所」のドアをたたく……。ファイナンシャルプランナーの岩城みずほ氏がマネーリテラシーの向上のために様々なお金の問題を取り上げ、対話形式でわかりやすく解説します。隔週火曜日に掲載します。