中古住宅の売買、相場を知る 査定より成約事例が有効
20代からのマイホーム考(60)

どんな不動産でも売買する際には相場を知っておくのは大切なことです。特に中古住宅は新築住宅よりも相場を知ることがとても重要になります。とはいえ、相場をぴたりと当てることは難しいものです。そこで今回は「相場の範囲」のつかみ方についてお話しします。
相場を逸脱した中古住宅も
まず予備知識として知っておきたいのは「中古住宅には相場から乖離(かいり)したものが存在する」ということです。新築住宅の場合は売り主である不動産会社が市場調査を行ったうえで商品企画をしていますので、相場から大きく逸脱するような価格設定をすることは一般的にありません。
一方、中古住宅は売り主に愛着や高く売りたいという強い思いがあるため、相場を超える価格で売り出すことがあります。また、不動産仲介会社は売り主が売却を依頼する媒介契約を獲得したいがために査定価格を高めに見積もってしまうこともあります。結果、中古住宅の販売価格が相場とかけ離れてしまうことが散見されます。不動産仲介会社の価格査定は、中古自動車屋さんなどのように自社で買い取ることを前提としていないため、こうしたことが起こってしまうのです。ですから、中古住宅の取引においては相場をしっかり把握しておく必要があるのです。
成約事例で「相場の範囲」をつかむ
相場を知るうえで最も有効な材料は、成約事例です。取引の参考になる成約事例を選ぶこつは、似たような物件を選ぶことです。立地、築年数、規模、最寄り駅からの距離、マンションなら所在階などの条件が、調べたい物件と似ている事例を選ぶのが基本です。
成約事例を公表しているサイトで筆者がお勧めしたいのは、全国指定流通機構連絡協議会が運営する「レインズマーケットインフォメーション」です。マンションや戸建てといった住宅の種類ごとに地域や沿線、最寄り駅、間取り、築年数といった条件を入力すると、成約事例の一覧表と散布図が表示されます。例えば「東京都世田谷区の東急田園都市線三軒茶屋駅周辺のマンションで、間取りが3K/DK/LDK」を選んだ結果が下の散布図です。

縦軸は成約単価、横軸が築年(竣工年)です。築年数が新しいほど成約単価が高いことが一目でわかります。23区南部が青色、世田谷区が緑色、三軒茶屋駅周辺が黄色、その他条件、つまり今回設定した条件に該当する物件が赤色で表示されており、対応する築年にどのような成約事例が散らばっているかを確認すれば「相場の範囲」がある程度わかるようになっているのです。例えば三軒茶屋駅周辺のマンションで2005年ごろに竣工した物件ですと、1平方メートルあたり80万~120万円の範囲に成約単価が分布していることがわかります。これで「相場の範囲」がある程度つかめるわけです。
販売事例も参考に
様々な物件検索サイトに掲載されている、売り出し中の物件も「相場の範囲」をつかむのに利用できます。売り出し価格は成約価格より高くなりがちです。どの程度高く見積もるかが難しいところですが、東日本不動産流通機構が発表した過去2年間の「市況データ」から筆者が概算したところ、東京都における過去2年間の「売却希望単価」に対する「成約単価」の比率は中古マンションで86~96%程度、中古戸建てだと74~88%という結果になりました。「市況データ」に掲載されている成約単価や売却希望単価は毎月の平均値なので実際は「ずれ」があるかもしれませんが、一定の目安にはなるでしょう。
ご自身の住まいや購入希望物件の「相場の範囲」は、こうした成約事例と売り出し中の物件をざっと眺めるだけでもわかるようになり、不動産仲介会社の査定価格や物件価格の適正さを判断する助けになると思います。

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