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高所得者に相次ぐ負担増、まずは直視を

知っ得・お金のトリセツ(33)

高所得者の負担が気がつけば大幅に増えている。先ごろ決まった児童手当の特例縮小に給与所得控除枠の段階的な圧縮や社会保険料の負担増……。足し上げていくとあれやこれやで年間で15万円以上にもなる計算。いかに高所得者とはいえ家計に響かぬわけがない金額だ。苦しい国の台所事情は分かるが「取りやすいところからコッソリ取る感」もにじむ。今後も同様の傾向が確実なだけに、対象者は一度負担増を直視し対応を考えるべき時だ。

負担増① 児童手当「消失」で年6万円

「月5000円減で家計が破綻するわけじゃないけど……」。東京都千代田区に住む40代女性は口ごもる。長年の不妊治療の末、昨年男の子に恵まれた。夫の年収は1200万円超なので児童手当は満額はもらえず、月5000円の特例給付を受け取っている。それが2022年10月以降はなくなる。児童手当は中学校卒業までもらえるので15年分、減額された特例分とはいえ累計90万円の収入減となる。「もらえるはずのお金が100万円近くもらえないのは痛い」。不妊治療にお金がかかって資産形成がままならなかった上、遅く授かった子どもの教育費がかさむタイミングで夫が定年を迎える。「まずは節約」と気を引き締める。

負担増② 給与所得控除枠減で年約5万円

「サラリーマンの必要経費」と位置づけられる給与所得控除でも、認められる額が減少している。課税する所得をはじくときに年収から差し引ける額は多いほど税金を圧縮する効果があるが、全員が一律に引ける基礎控除額が今年38万円から48万円に増えた一方で、高給取りの給与所得控除枠は削減された。年収に応じて決まるが「これ以上は増えない」という頭打ちの人の年収額が1000万円超から850万円超に引き下げられ、差し引ける額も220万円から195万円に下がった。基礎控除との差し引きで15万円の負担増となり、所得税率33%の人なら5万円弱の増税となる(扶養の状況などにより負担増緩和の措置もある)。

負担増③ 厚生年金保険料アップで年約3万円

会社員や公務員が加入する厚生年金でも今年「値上げ」があった。保険料を計算する時に使う月収(標準報酬月額)の上限額が引き上げられたため、対象となる月収の人が給与から天引きされる保険料は9月以降、月額3000円弱増えている。1年分では計3万円強の負担増となる。ただ、こちらは将来もらう年金額が増える効果もある上、税金圧縮につながる部分もあるので丸々負担増というわけではないが、足元のキャッシュフローは悪化する。

負担増④ 介護保険料アップで年約3万円

40歳以上が支払っている介護保険料でも今年、大企業の会社員を中心に負担が増えた。介護財政悪化に対応して所得水準に比例して保険料が決まる「総報酬割」が導入されたが、その緩和措置が期限切れとなった。大企業の従業員とその家族が加入する健保組合ごとに料率は異なるが、ある大手企業の場合、1.5%台から2%にアップ。年収に料率を掛けた額を労使折半で負担するので、年収1200万円なら個人の負担増は年3万円弱になる計算だ。

パーキンソンの法則に要注意

英国の政治学者パーキンソンが唱えた「パーキンソンの法則」はパーソナルファイナンスまわりで有名だ。いわく「支出の額は収入の額に達するまで膨張する」――。高所得層は支出増にも鈍感になりがち。気がついたときには「なんかたまっていない」状況に陥る。「家計の規模は変わっても必要なことは同じ。収入が変われば支出を見直してメリハリをつけるしかない」(家計コンサルタントの八ツ井慶子さん)。まずは1年の区切りの年末に去年の残高と比較し、いくら増え、いくら減ったかを可視化する。そこを出発点に貯蓄残高を毎月決まった日に記入する「貯蓄簿」を作成すれば、一番大事な項目に意識を向けることができる。高所得者とはいえ自己防衛が必要な時代だ。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー編集センターのマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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