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教育費の準備は長期プランで お金の置き場所に留意

Dr.マネーお悩み外来 Vol.23

お金の悩みは千差万別。でもご安心ください。解決策は必ずあります。「Dr.マネーお悩み外来」では、あなたがお金と上手に付き合い、より豊かな人生が送れるようファイナンシャルプランナー(FP)の白鳥京香がお手伝いいたします。本日もお金の悩みを抱えた人が「白鳥FP事務所」のzoom相談にやってきました。

Case17: 会社員で共働きのRさん夫婦(夫43歳、妻44歳)は3年後に長男が、その2年後に長女が大学進学予定です。これまで計画的に貯蓄を続けてきましたが、想定より教育費がかかりそうで心配しています。

Rさん 子供が生まれてすぐに学資保険に入ったのでなんとなく安心していましたが、最近、長男が私立大学の理系で大学院まで進みたいと希望しています。なるべく奨学金を借りることなく進学させたいと思っていますが、自分たちの老後のお金も心配です。

白鳥 子供の進路希望が変わったり、浪人、留学したりして想定より教育費がかかることもあるでしょう。どこまで親が負担をするかは考え方によりますが、家計相談を受けていると、奨学金返済によって20代、30代のうちに十分に貯蓄できないケースも見受けられます。必要になる時期が決まっている教育費は、計画的にためていきたいものです。一方で教育費の負担が大きすぎて老後のための貯蓄ができないというのも問題です。

まず、長期的なマネープランを立てます。2人が将来受け取れる年金額や、老後は現役時代よりどのくらい生活費を下げられるかなど考え、必要貯蓄率を求めます。

人生設計の基本公式」で計算した結果、Rさんの必要貯蓄率は約21%でした。今後手取りの21%を65歳まで貯蓄していくと、リタイアしてから95歳まで、現在の生活費の7割ほどの生活費を確保できる予定です。

現在の年間貯蓄額は学資保険と終身の死亡保険の保険料、つみたてNISA(少額投資非課税制度)を含めて約190万円です。手取り年収の23%にあたりますので、必要貯蓄率を上回っています。ただ心配なのは貯蓄の内訳です。普通預金が120万円、つみたてNISAが時価で約80万円、残りは保険の解約返戻金相当額の約420万円です。

次に大学にかかる費用を見てみましょう。

(注)「令和元年度私立大学等入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果について」(文部科学省)

私立理系は4年間で約540万円、文系は約400万円かかります。

Rさんの長男が私立理系大学院まで進み、長女は私立文系に進んだ場合の教育費の支払いによる貯蓄残高の推移を見てみましょう(授業料は年々上がっているが2019年度の額で試算)。

入学年は入学金のほか受験費用、入学準備費用(自宅通学とする)がかかるとし、授業料と施設設備費を合わせ長男は約190万円、長女は152万円。それ以降は長男130万円、長女94万円で計算しました。学費総額は1274万円です。

現在のまま年間でつみたてNISAに約79万円、学資保険料20万円、終身保険料20万円、預貯金70万円の貯蓄を続けた場合(青のこれまで通りの貯蓄をした場合)、長男が大学に入学する2024年の預貯金は約330万円、満期になる学資保険の200万円と合わせて530万円です。ここから学費の支払いが始まり、26年からは長女の学費もかかり始めます。結果28年の長男の大学院初年度の学費は40万円不足です。

(注)授業料等は単純に4倍・6倍とした。大学、学部によっては学年が上がるにつれて授業料・施設設備費などが上がる場合も

つみたてNISAを売却したり終身保険を解約したりして工面することもできますが、もし含み損があれば売却したくないでしょうし、終身保険は中途解約すると元本割れする場合があります。

実はRさんのようにリスク商品への拠出率が高く、5年以内に子供の教育費など必要な支出があるにもかかわらず、現金が少ない家計が時折見られます。

近く必要になる学費は元本の減らないお金の置き場所で確保しておきたいものです。お金の置き場所について、3つの特徴を踏まえて考えます。

①流動性資金=いつでも出し入れ可能な預貯金口座です。何かあったときのために生活費の3カ月から1年分が目安です。

②安全性資金=元本が減らない定期預金や個人向け国債を利用します。5年以内に必要になるお金はここに準備しておきます。

③収益性を追求する資金=iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)やつみたてNISAの利用です。長い時間をかけて増やしていくことを目的としています。金融庁の「つみたてNISA早わかりガイドブック」にも長期投資の効果として、資産や地域を分散して積み立て投資をした場合、保有期間20年の運用成果は年率2〜6%という実績が示されています。将来かならずそうなるとはいえませんが、途中で売却しないで保有し続けることが大切でしょう。60歳まで引き出せないイデコと違い、つみたてNISAはいつでも売却自由ですので、子供の年齢によって十分な運用期間が確保できる場合は、教育費をつくっていく口座としても利用できるでしょう。

ライフプランに合わせてお金の置き場所を考えることが大切です。

Rさんの場合、夫婦で月6万6000円をつみたてNISAに拠出していますが、当面月6000円に下げて6万円を貯金すること、終身保険を払い済みにすることを提案しました。払い済み保険とは保険料の支払いを中止し、その時点での解約返戻金をもとに保険期間はそのままで保障額の少ない保険に変更する方法です。

Rさんは死亡保障を別途、定期保険でもっています。終身保険は収益性を目的に加入したそうですが、利回りを計算すると1%未満に過ぎませんでした。ならばコストの高い保険で運用するよりも、iDeCoやつみたてNISAの方が合理的なお金の置き場所です。

すると年間92万円が貯蓄できます。現在の貯金額70万円と合わせると年間162万円です。27年には最終学年までの学費も確保できます。その後は減額していたつみたてNISAをもとの6万6000円に戻して、本格的に老後資金の準備をしていくとよいでしょう。

Rさんの場合、必要貯蓄率を変えず、お金の置き場所を一時的に変更することで対処することができましたが、難しい場合は更なる見直しが必要です。なるべく早い時期に教育費の計画を立てましょう。

きょうの処方箋です。

・学費がピークに達するときに貯蓄がマイナスにならないようにお金の計画を見直しましょう。

・教育費が大きすぎて老後資金不足にならないように、長期的なマネープランを立てましょう。

ではまた2週間後に。

岩城みずほ(いわき・みずほ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)。オフィスベネフィット代表。「金融商品を販売することによるコミッションを得ず、中立的な立場でコンサルティングする」をモットーに、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長も務める。著書に『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版)など。https://www.officebenefit.com/

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本日もお金の悩みを抱えた若者が「白鳥FP事務所」のドアをたたく……。ファイナンシャルプランナーの岩城みずほ氏がマネーリテラシーの向上のために様々なお金の問題を取り上げ、対話形式でわかりやすく解説します。隔週火曜日に掲載します。

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