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不動産賃貸事業は「不労所得」にあらず 戦術が重要に

20代からのマイホーム考(38)

最近、「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」という言葉がはやっています。資産を早めに築いて仕事を辞めるという生活スタイルを意味し、こうした目的を達成するために、比較的手軽で簡単な投資対象として賃貸用のワンルームマンションなどが推奨されているようです。

不動産賃貸事業の競争が激化

投資用ワンルームマンションなどでは、「不動産賃料収入が借り入れを返済してくれるので、少ない手元資金で投資できる」「返済が終わればキャッシュマシンとして自動的に働いてくれる」といった宣伝文句がよく聞かれますが、不動産賃貸事業はそんなに簡単なものなのでしょうか。

不動産賃貸事業というと、かつては「不労所得」を得るための代表的なもののひとつとして考えられてきた面があります。確かに、貸し手市場だった時代は、敷金は賃料の2カ月分、礼金も賃料の2カ月分といった賃貸条件が当たり前でした。

しかし貸家の供給が増えたことによって競争が激しくなり、今は借り手市場に変わっています。空室に入居してもらうために、大家さんが広告料として賃料の1~2カ月分を負担し、敷金は1カ月、礼金はなしというのが当たり前になっています。現在の不動産賃貸事業は「不労所得」を得られるものとは言えず、競争優位をいかに作り出すかが問われる事業になっているのです。

賃料の推移や変化率をチェック

貸し手が現在の市場で競争優位を作るためには、まずはその地域の人口が増えるのか減るのか、世帯の変化はどうなるのかを調査しましょう。これは物件所在地の地方公共団体が予測を公開していることもありますので利用しない手はありません。

また、その地域の賃料推移、建物の経年による賃料下落率、賃貸面積別の需給状況なども事前に調べておくと、賃貸事業を行う上での作戦を立てやすくなります。競争が激しい場合はどんな戦略で競争優位性を築けるかなどを検討するために、筆者は以下のようなグラフを作成することがあります。

左の「国分寺駅周辺の賃料指数」のグラフは、東日本不動産流通機構のシステムに登録された国分寺駅徒歩圏内における2006年から21年9月末の成約データ4182件の不動産の賃料について、品質調整のうえ06年を1とする賃料指数を作成してグラフ化したものです。右の「国分寺駅周辺の賃料変化率」のグラフは、これらのデータをもとに06年以降の各年において、築年数1年の相違による賃料変化率(築年数が1年相違すると何%賃料が変化するか)を調査したものです。こうした検討材料を不動産会社に提供してもらいながら、一緒に戦術を練っていくことが重要だと思います。

さらに、保有し続けることだけが選択肢ではないので、売却市場にも目を向けておく必要があります。今売ったら利益が出るのか出ないのかといったことは、年に1度は確認しておきたいものです。また区分所有物件のマンションであれば、保有期間中に思わぬ修繕積立金の上昇があるかもしれません。積立金が上昇する前に売りたいならば、管理組合での議論を注意深く確認しておく必要があるでしょう。また、設備の償却が止まりキャッシュフローが悪化する前に売りたいなど、税金との兼ね合いで売却のタイミングを計るということも必要かもしれません。

不動産賃貸事業は「経営」と心得よう

借り手市場となっている今、不動産賃貸事業を行うことは、何もしなくてもお金を生んでくれるものではありません。ある意味では「経営」と言えるのかもしれません。ですから、不動産全般に関することに加え、マーケティングやファイナンス、タックスプランニングなど、最低限で構わないので、本などで勉強していただいた上で不動産賃貸事業に着手したほうがよいと思います。

田中歩(たなか・あゆみ)
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。

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住宅資金は老後資金、教育資金と並ぶ人生三大資金です。20代、30代から考えたい「失敗しないマイホーム選び」について不動産コンサルタントの田中歩氏が解説します。隔週月曜日に掲載します。

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