為替介入に伏兵 英国発「とばっちり」円安要因
14日金曜日の欧米市場で円相場が1ドル=148円を突破した。キッカケは英国債利回り急騰が米国債券市場に波及したこと。そして、米ミシガン大学消費者態度指数(10月)のインフレ予想が上昇したことだった。
そもそもは、英トラス政権が引き上げ凍結を掲げていた法人税を増税するなどの政策転換に、市場は不信感を強め、英国債が売られた。しかも、財務相が次々に代わるドタバタ劇を見せつけられた。クワーテング氏に至っては、在任38日で解任された。市場のトラス首相への不安感は容易に払拭できない。
さらに、英イングランド銀行は、インフレ対応の利上げと同時に、市場安定のため、投げ売り同然の英国債の買い入れを強いられた。イングランド銀行のベイリー総裁からは、11日に、年金基金などのファンドに「あと3日でリバランスせよ」と最後通告とも取れる発言があった。国債の買い入れは時限措置であり14日がその期限であったからだ。
市場では、17日月曜にイングランド銀行が英国債の買い入れを継続するとの見方もある。まだ予定枠の3割程度しか購入していないからだ。しかし、「あと3日」という発言は余計であった。あたかも17日からの週には打ち切るとも解釈できるからだ。それゆえ、イングランド銀行にも不信感を募らせる。イングランド銀行としては、財政政策の失態を金融政策で尻ぬぐいすることになり、不本意極まりないことは理解できる。このようなボタンの掛け違いが、ハイパーインフレを誘発する可能性を秘めることは歴史が語っている。
この英国市場の大混乱は、ドルの金利上昇を通じ、円安要因ともなる。「あと3日」発言のときには円相場が1ドル=146円台となり、クワーテング財務相解任の後に1ドル=148円となった。いずれも、英国発のドル高が円安に飛び火したという、いわば「とばっちり円安」だ。
さて、17日にイングランド銀行が、市場の予想あるいは希望の通りに英国債買い入れを継続するか、欧米市場は固唾をのんで見守っている。アジア時間から欧州時間に移行する日本時間の午後から夕方にかけて、取引の薄い時間帯は要注意だ。前回の為替介入もこの時間帯で、極めて神経質な値動きになった。
イングランド銀行が英国債買い入れ停止となれば、英国債は再び投げ売られ、利回り急騰が米国債市場にも連鎖して、ドル高・円安がさらに進行するのは必至だ。買い入れ継続の場合は、ドルが売り戻され一時的に円高に転じる場面も想定される。あるいは、「あと3日」発言が尾を引き、市場がイングランド銀行に不信感を募らせるシナリオも考えられる。
この一連の「英国リスク」は為替介入の実施を決める日本の当局も無視できまい。日米金融政策の違いだけでなく、イングランド銀行の方針にまで目配りが必要になった。二元連立方程式が三元連立方程式になったような状況で、市場の不透明感は増すばかりだ。

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