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不動産賃貸事業で失敗するワケ 賃料下落や空室に備えを

20代からのマイホーム考(27)

最近、50代以降の人から不動産賃貸経営に関する相談が増えています。多くは、相談者の両親が15年から20年前に相続対策を目的として取得または建築した賃貸物件に関するものです。賃貸物件が築20年前後を経過すると、経営が難しくなってしまうケースがあるようです。

経営難に陥る理由は、いずれも似ています。(1)賃料の低下に対する備え(2)中長期的な修繕計画を反映した収支計画(3)賃貸事業におけるキャッシュフローの特徴を踏まえた経営――が、ないがしろになっていることが主な要因です。

不動産賃貸事業の問題点は、事業開始後15年から20年後に顕在化することが多い傾向があります。30~40代の人の両親が相続対策で投資用不動産を取得したり、賃貸住宅を建築したりしている場合、今回説明する要因について知っておく価値はあると思います。

現実離れのシミュレーションに注意

不動産投資や賃貸事業に関する提案書には、中長期の事業収支シミュレーションが付いているのが一般的です。問題なのは、事業収支に書かれている賃料収入が変わらず一定となっているものがあり、これをうのみにした結果、賃料下落に対する備えが不十分になってしまうというものです。

賃料水準は需給や経済状況によって増減しますが、一般に新規に供給された物件と既存の物件の賃料とを比べると、既存物件の賃料のほうが相対的に低くなります。筆者の調査では、東京都区部でも築年数が1年異なれば、成約賃料単価は0.5~1%程度異なってきます。同じ立地で新築なら月額10万円でも、築20年ならば月額8万円強になることがあります。新築の供給がある限り、入居者の入れ替えのたびに、賃料は下がる可能性があることを意識しておくべきなのです。

空室率を想定しておくことも重要です。例えば、とある立地のワンルームタイプの入退去サイクルを退去後の期間も含めて平均3年とします。退去後に部屋の原状回復工事や入居者募集活動に3カ月かかると仮定すると、3年間のうち3カ月間が空室期間となりますから、1年換算では1カ月の空室(空室率8.3%)となります。

安心ではないサブリース

「うちはサブリースで賃料保証だから大丈夫」という人もいるかもしれません。しかし、サブリースでも賃料の引き下げを求められることはあります。賃下げ交渉をされたら、サブリース契約を解約して、自ら貸主として経営すればよいのですが、それができない場合には賃料引き下げを受け入れるしかありません。

借地借家法32条にあるように、賃料が経済事情の変動などで不相当となった場合には、当事者は将来に向かって賃料の増減を請求できます。ただし、普通借家契約で「一定の期間建物の借り賃を増額しない」といった特約がある場合には、その定めに従うとされています。この条文のただし書きを見て、「一定期間は減額しない」という特約をつけられないかと考えたくなるかもしれませんが、借地借家法32条は強制的に適用される強行規定と解釈されていますので、これに反する特約は、たとえ賃借人がサブリース会社であったとしても無効と解釈されます。

賃料下落への対策は

不動産賃貸事業に着手する前であれば、賃料下落や空室率の想定をきちんとしておくことが大切です。これによって、無理な借り入れや無駄な支出をしないような計画を策定できます。

すでに問題が顕在化していれば、賃料を下げざるを得ない場合もあると思います。ただ、不動産会社などから賃料引き下げを提案され、短絡的に応諾してしまうというのはおすすめできません。経年によって競争力が低下しているならば、費用対効果の最も高い競争力向上の方法は何なのかを考えることです。また、競争する市場を一般的な物件サイト上に集まる一般的な借り主に絞ると、なかなか良い手立てが見つからないかもしれません。その場合には、競争する市場を今までと違った市場(例えば自分で室内をカスタマイズしたいと考えている借り主)に変えてみるというのも手です。

大事なことは、管理会社や不動産会社に安直な値下げ提案をさせず、新たな戦略と戦術をともに考えることだと思います。まずは管理を委託している不動産管理会社や入居者募集を委託している不動産会社に複数の案を提示してもらい、吟味した上で判断するとよいと思います。

田中歩(たなか・あゆみ)
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。
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住宅資金は老後資金、教育資金と並ぶ人生三大資金です。20代、30代から考えたい「失敗しないマイホーム選び」について不動産コンサルタントの田中歩氏が解説します。隔週月曜日に掲載します。

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