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なぜ投資? 「株が上がってるから」の間違い

積立王子への道(24)

投資の世界で「積立王子」のニックネームを持つ筆者が、これから長期投資に乗り出す後輩の若者にむけて成功の秘訣を伝授するコラムです。

20年前にはITバブルがあった

投資を始めたい人は確かに増えている。コロナ禍の下、大手ネット証券の口座開設数は劇的に増加していると聞く。多くの人が今見ている右肩上がりの上昇相場に触発されているようだ。株価が上がっているから今が投資の始め時といった風潮が強まっているね。

そこで思い出すのが20年前のITバブル相場だ。当時はインターネットが普及してネット系ビジネスが雨後のたけのこのごとく出現した。米欧日でこれら新興企業が新規上場する度に、IT銘柄というだけでどんどん買い上げられ、株式市場全体がいわゆるドットコムブームに沸いて急騰したんだ。ところが中には張りぼて的なビジネスモデルの企業もあって、相場が過熱して上昇を続けた後、見事に大暴落した。ブームに便乗してIT系銘柄を買い揃えたテーマ型ファンドは当初、巨額のお金を集めたが、ITバブル崩壊によって急落。ブームに乗っかった個人投資家は大損したのだ。

モメンタムが「にわか投資家」をひきつけている

現在のマーケットはその頃とそっくりとまでは言わない。でも、以前説明した通りコロナ危機に対する主要国の大胆な金融緩和と巨額の財政投入に裏打ちされ、大量の余剰マネーが株式市場に流入して株価上昇トレンドを支えているのは間違いない。そうした市場の勢いを業界用語で「モメンタム」と呼ぶけど、強烈なモメンタムが最近顕著に「にわか投資家」を吸い寄せていると感じている。

遅れてはならじ、とばかりに目先の欲でギラギラの資金が入ってくれば、株価はさらに押し上げられる。こうした「にわか投資家」は「株は上がるもの」「投資すればもうかるはず」と思い込んでしまっているが、プロの投機筋は彼らの参入を待っている。買わなきゃ損のムードがまん延する頃に、そうした素人筋の買いにぶつけて売り抜ける。そこがブーム相場のピークだ。

にわか資金は「下がれば売り」に転じやすい

一転して相場が下落方向に変わると、「にわか投資家」はこんなはずじゃなかったとろうばいしてパニック売りに走る。そして、さらに相場は下がる――というのが相場の潮目の転換期になるんだ。こうしてすぐにもうかると思って始めた「にわか投資家」は、相場に負けて損することで「投資はもうこりごり」となる。積立王子と呼ばれる僕がこれまで幾度となく見てきた光景さ。

ふたりは友達にぜひ伝えてほしい。何より大切なのは、投資目的をしっかり据えること。今すぐもうけたいと投資を始めるなら、それは投機的行為、つまりギャンブルだ。何のために投資を始める必要があるのか。それは長期資産形成。すなわち将来に向けた経済的自立を目指すためだ。ならばゴールはずっと先のこと。

一番大事な問いは「何のために投資をするか」

この先もマーケットは上昇と下落を繰り返していく。しかし世界経済は長い目でみれば成長を続けるものだとすれば、マーケットの価格水準は成長軌道に沿って相応に切り上がっていく。そして長期的にお金が育っていくわけだ。目先の欲で相場に勝負を挑んではダメだ。たまたまうまくいったら、必ずやまた挑みたくなる。やがては負けて、結局は損失を抱え撤退するのが関の山だ。そうした行動目的では決して資産形成はかなわない。

今の上昇相場はコロナ禍の間、まだ続くとしてもやがて「にわか投資家」たちがブームに沸き立つことで、下落に転じるだろう。後になって「コロナバブル」とでも呼ばれるかな。資産形成を目的とした「長期投資家」は、相場が下がることも想定してどっしり構えられるから、積み立て投資が適しているのだ。2人も下げ相場でもニコニコしていられるようになっただろう。大きく下落した局面で、余裕資金があれば安値で買う側に回ることだってできる。見据える視線が違うからだ。次回は「長期投資家」の心構えを再確認するとしよう。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。2006年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会理事。全国各地で年間150回講演やセミナーを行っている。『預金バカ』など著書多数。

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積み立て投資には、複利効果やつみたてNISAの仕組みなど押さえておくべきポイントが多くあります。 このコラムでは「積立王子」のニックネームを持つセゾン投信会長兼CEOの中野晴啓さんが、これから資産形成を考える若い世代にむけて「長期・積立・分散」という3つの原則に沿って解説します。

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