投資が怖いあなたへ 長期積み立てでじっくり育てる
Dr.マネーお悩み外来 Vol.21

お金の悩みは千差万別。でもご安心ください。解決策は必ずあります。「Dr.マネーお悩み外来」では、あなたがお金と上手に付き合い、より豊かな人生が送れるようファイナンシャルプランナー(FP)の白鳥京香がお手伝いいたします。本日もお金の悩みを抱えた人が「白鳥FP事務所」のzoom相談にやってきました。
Pさん 今の低金利の状況で預貯金ではお金が増えないし、お金を増やすために投資をした方がいいのかなと思います。でも、運用がうまくいかないとお金が減るかもしれないと思うと迷いもあります。上がるものを当てたりタイミングよく売ったりしなくてはもうからないというイメージもありますし、手間がかかりそうです。
白鳥 資産運用の必要性を感じている人は増えているようです。QUICK資産運用研究所リポート「個人の資産形成に関する意識調査」報告書(2020年12月)によりますと、2年連続で5割超の人が投資の必要性を感じています。また実際にリスク商品を保有した人の割合は16年と比べ、30〜40代が特に増加しています。

投資は必ずしなくてはいけないわけではありません。でも、将来モノやサービスの値段が上がるかもしれないことを考えると、預貯金では購買力が相対的に下がっていきます。これを減らさないためにもお金を増やしていきたいものです。Pさんがいうように、預貯金の金利はほぼゼロでお金が増えることは期待できません。十分にお金がある人以外は、少しずつ積み立て投資をしていくといい気がします。右のグラフをごらんください。
グラフは米英と日本の家計の金融資産の推移です(金融庁の16年事務年度金融リポートより)。米英と比べると、日本は株式や投資信託の保有比率が低い水準です。結果、米国は家計所得のおおむね3割ほどを財産所得から得られているのに対し、日本は1割程度で推移しています。
しかし、米国も1984年ごろまではリスク資産の保有が多かったわけではありません。個人退職勘定(IRA)、確定拠出年金(401k)などで、投資信託を中心として現役時代から資産形成を続けた結果、金融資産は20年間で8倍強に増加しました。制度面以外の効果として、低コストのインデックス投信が運用に積極的に用いられるようになったこと、顧客本位の営業強化、浸透、法整備、そして独立系ファイナンシャルアドバイザーの増加などの要因もあるようです。
今後、過去のように高い運用成果を必ず期待できるかはわかりませんが、今はNISAやイデコといったお金の置き場所が整っていますので、これらを使ってゆっくり資産運用をしていくとよいかと思います。
Pさんは投資は値上がりするものを「当てなくてはいけない」というイメージをお持ちのようですが、投資は会社の成長を買っていくものだと考えてください。株式の収益の源泉は、企業が生み出す付加価値の合計です。企業価値は時間をかけて形成されていくものですから、ゆったりと構えて長期で株式を保有すればいいのではないでしょうか。
私も積み立て投資をしていますが、ほぼほったらかしにしていて、運営管理機関から1年間の取引状況が送られてきて年金資産の評価額を知るという感じです。NISA口座などの状況のチェックも年に2~3度ですが、これまで特に問題を感じたことはありません。Pさんがもっている投資のイメージとは大分違うのではないでしょうか。投資は株価を追いかけるものではないのです。値動きにかけるのはむしろ投機でしょう。短期売買でもうけるのは手間も知識も運も必要そうです。
投資には色々な考え方がありますが、簡単な方法の一つは、コストの安い全世界株式に投資するインデックス投信を長期で保有することです。つまり、世界中の企業の間接的なオーナーになるということです。経済状況により企業の業績が下がることもあるでしょう。そのため1社の株主であることより、投信を活用してより広く分散投資します。将来必要になるお金をゆっくり少しずつ増やしていく長期分散積み立て投資をおすすめする理由です。
きょうの処方箋です。
・売ったり買ったりする必要はありません。ずっと持ち続けることが大切です。
ではまた2週間後に。

本日もお金の悩みを抱えた若者が「白鳥FP事務所」のドアをたたく……。ファイナンシャルプランナーの岩城みずほ氏がマネーリテラシーの向上のために様々なお金の問題を取り上げ、対話形式でわかりやすく解説します。隔週火曜日に掲載します。