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バブル相場下での長期投資の始め方(澤上篤人)

「ゴキゲン長期投資」のススメ さわかみ投信会長 

投資業界のカリスマの一人、澤上篤人氏が考える長期投資のあるべき姿を、同社最高投資責任者の草刈貴弘氏との対談形式で紹介する。

どんどん買おうよ ただし……

澤上篤人(以下、澤上) これだけ株高が続くと、投資をしてこなかった人たちまでもがそわそわしだす。ある程度の投資経験者でも高値を追うべきか、バブルが崩れるのを待つべきか、大いに悩むところ。

投資を始めようとしている人たちにとって、今の株高は確かに悩ましい状況だ。今、買うと損をするかもしれないと思うのも分かる。投資を始めてもよいのか、何らかのアドバイスが欲しいだろう。

しかし、現在進行中のバブル相場下でも、本格的な長期投資を前提にした買い方なら、バブル崩壊を恐れる必要はない。どんどん買っていい。

草刈貴弘(以下、草刈) バブルのような株高だと言っているのに、どんどん株を買おう!とは(笑)。

ただ、その理由や背景は分かります。ITバブル崩壊やリーマン・ショックを乗り越えてきた「さわかみ投信」の視点だと、大切なのは「いつ始めるか」ではなく「続けられるか」ですからね。

澤上 本格的な長期投資の銘柄選びはこうだ。まず、株式市場で人気となっている企業は全て投資対象から外す。そして、それ以外の騒がれていない企業群から、応援したい企業を幾つか探し出す。その応援企業は、今だけでなく10年先でもずっと応援していたいと思える企業だ。

草刈 ポイントになるのは応援したい企業という点ですね。人気があるから、注目されているからといった理由で株を買うのが一番よろしくないパターンでしょう。何をやっているのか知らない企業に投資をするなんて、白紙の小切手を渡すようなものです。株価が上がっている時は良いのですが、下がった時に初めて失敗に気付く。なぜその企業に投資したのかが明確でないと、後悔しか残りません。

澤上篤人氏(写真:竹井俊晴)

澤上 その通り。最初のスクリーニングが長期投資の肝となる。自分の心と対話しながら投資する企業を選ぶと、結果として自分がよく知っていて、かつ生活実感としても身近な企業群に落ち着くはずだ。あえて言っておくが、儲かりそうな銘柄ではないよ。探すのは、ずっと長く応援したい企業だよ。

草刈 儲かりそうという視点がどうしても捨てきれないから、旬の企業や、株価の上昇している企業を選びたくなりますけどね。

今だけでなく、10年後も変わらずその企業を応援したいと思えるか、自問することが大切です。

澤上 応援したい企業群が見つかったら、まずは予定していた投資額の4分の1ほどを投入して株を買ってみる。儲かりそうな銘柄でなければ、今のバブル相場でもさほど人気となっていないから、案外、安値で買えるかもしれない。買ったらそのままのんびりしよう。

我々の見立てでも、この相場はいずれ大崩れとなろう。いざ暴落したら、待ってましたと買い向かう。ただし、投入するのは1回目と同額だ。その後も大きな下げ局面で4分の1ずつ買っていく。3度も買いを入れれば、いい具合に長期投資のポートフォリオが仕上がるから、後は放っておくだけだ。

なぜ今、つまり暴落する前に株を買っておくのか? 今の段階で少しでも買っておかないと、暴落相場では絶対に買えないからだよ。

急落を目の当たりにしたら、何もできないままズルズルと時を過ごしてしまうのがオチ。ところが暴落前から僅かでも株を持っておれば、大暴落相場でも「よっしゃ、第2弾いくぞ」と、次の買いを入れることができる。この違いは決定的である。

草刈 大事なポイントは大きく下げた時に買うということですね。

一般論では暴落時は逃げろ、つまりは現金化して嵐が過ぎ去るのを待てということになります。でも、いつ嵐が過ぎ去るのかは誰にも分かりません。せっかく、それも初めての大きなチャンスを前に身動きができない。そしてついには投資から遠ざかってしまうのではもったいないですからね。

澤上 我々のような長期投資家は、リーマン・ショックや平成バブル崩壊時も、それほど大きな痛手は負っていない。バブル崩壊で大暴落するのは、実体以上に買われていたバブル銘柄群が中心で、そもそも長期投資家の投資対象からは外れている。逆に長期投資家が選ぶような銘柄は大きく下がらない。

一方、暴落相場からの立ち直りでは、我々長期投資家のポートフォリオが真っ先に飛び出す。バブル相場をしゃかりきに追い掛けていたわけではないので、売りもそう出てこない。暴落後のマーケットでは、そういった戻りの軽い銘柄群に買いが集まるからこれは当然のこと。

かくして、我々のような本格派の長期投資家は、バブル崩壊後のV字形の株価急回復局面を満喫することになる。

積み立てならすぐに始めよう

澤上 投資かいわいでは積み立て投資が大ブームとなっているが、「長期で保有できる投信を選ぶ」という視点がスポーンと抜け落ちている。投信販売の現場で悪弊となってきた、次から次へと新しい投信を設定しては投資家を乗り換えさせる回転売買のスタイルでは、積み立て投資など望むべくもない。

その点、さわかみファンドのような本格派なら、積み立て投資の威力を最大限享受できる。バブル相場下でも、そこからは一線を画したポートフォリオを構築しているし、なおかつ、ある程度のキャッシュも準備してあるので、バブルがはじけたら大バーゲンハンティングにも乗り出せる。

これらの作業は運用側が全部やってくれるので、投資家は安心して積み立て投資を続けていける。

草刈 積み立て投資ブームと言えば、最近はインデックス運用の存在感が増したおかげで、時価総額上位の企業にやたらとお金が集まっています。インデックス型投信で市場全体に投資するつもりの投資家も、実態としては流行に乗り、意図せずバブル相場を助長している形です。

この先、調整が起きれば、実体以上に評価されたバブルの部分は剥がれ落ちるでしょう。そう考えると、長期での積み立て投資でも投資対象をしっかり選別することが重要です。この点に対する理解がもっと進んでほしいです。

澤上 ちょっときつい表現となるが、いずれ到来する金融バブル崩壊でインデックス運用への期待は相当剥がれるよ。そして、本格派のアクティブ運用が大きく脚光を浴びることになるだろうね。

草刈貴弘氏(左、写真:竹井俊晴)
澤上篤人(さわかみ・あつと)
1973年ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン代表取締役を務めた後、96年あえてサラリーマン世帯を顧客対象とする、さわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立。
草刈貴弘(くさかり・たかひろ)
2008年入社。ファンドマネジャーを経て13年から最高投資責任者(CIO)。

[日経マネー2021年2月号の記事を再構成]

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