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葬儀、遺影、墓… 「終活」で後悔しないために

終活見聞録(20)

「終活」でもっとも多いのが「エンディングノート」の作成だ。最近ではIDやパスワードを書き込んでデジタル資産に対応するものもある

終活の定義は「自分らしく最後まで過ごすために、元気なうちにエンディングの準備をすること」。自分のことや親のこと、葬儀や墓のことを思い浮かべる人も多いと思うが、葬儀や墓はそのひとつにすぎない。終末期の医療や遺言、エンディングノート、老後の伴侶さがしや高齢者施設をはじめとする終(つい)の棲家(すみか)さがし、自宅や家財の処分、遺品整理や元気なうちに手掛ける生前整理、高齢化するペットや自分が高齢化した後のペットをどうするか、など多様な分野に広がっている。なぜいま終活が注目を集めるのか。

進む「死亡の高齢化」

背景には、年間130万人以上も亡くなる多死社会の到来がある。死亡数がボトムだったのは1966年で年間約67万人だったが、現在の死亡数は同138万人程度。これがピークの2040年には約167万人に増える見通しだ。

亡くなる人の年齢も上がる「死亡の高齢化」も進んだ。現在では80歳未満の死亡数は頭打ちで、最も多いのは80代だ。顕著なのは90歳以上の増加で、今でも亡くなる人の28%を占める。80代の死亡にも頭打ち感が出てきているので、そのうち90歳以上が最多になるかもしれない。

近年、簡素な葬儀を希望する人が増えているが、理由の一つはこの死亡の高齢化だ。兄弟や友人も多くがすでに亡くなり、親の死亡時に子が勤め先を定年退職していれば、仕事関係で参列する人もいなくなる。見えや世間体を重視していた傾向は薄れ、廉価で小規模な葬儀を考えるようになる――というわけだ。故人の死を広く知らせ、わざわざ葬儀に来てもらうのも申し訳ないと考え、火葬が終わるまであえて知らせないことも増えている。

「頼れる家族はいない」

家族の変容も見逃せない。世帯の構成で変わったのは、3世代同居の減少と単独世帯の増加だ。1980年代には4割以上あった3世代同居は、今や1割を切った。変わって単独世帯(おひとり様)が増えて、29%に達している。最も多いのは夫婦のみの世帯(32%)だが、これもどちらかが亡くなれば単独世帯になるので「おひとり様予備軍」といえる。

「生涯未婚の人」も増えている。50歳時に未婚だった人は将来的に結婚する予定がないと見なすことができるので「生涯未婚率」と呼ばれる。直近では男性が23.4%だから、ほぼ4人に1人の男性が生涯未婚というわけだ。

以前は、人生の終末期から死後までの手続きや作業は、家族が担うこととされてきた。ところが家族の形や生活の仕方が変わってしまい、今や家族や子孫だけでは担えない状況になっている。「子に迷惑をかけたくない」「頼れる家族がいない」という状況だから、年をとったら自分であらかじめ備えておく必要性が出てきた。

終活に意欲的な人は8割

日経新聞では以前「大終活時代」という連載を掲載した。それに合わせて30代から90代までの読者にアンケートを実施した。終活に意欲的な人(「終活をしたことがある、またはしている」「終活をする準備をしている」「いずれはしたい」の合計)が8割を占めたという結果だった。年齢で見ると60代が45%と最も多く、定年などでライフスタイルが変わるこの時期が終活の適齢期といえるのかもしれない。70代、80代の親の終活を子が考えることだと、もう少し若く、50代ぐらいが中心になりそうだ。

終活の内容は「エンディングノート執筆」がトップで、以下「自分のための墓や埋葬の準備」「セミナーや勉強会に参加」「自分のための葬儀の準備」と続いた。終活の理由は「子どもらに負担をかけたくない」「他人に迷惑をかけたくない」「自分の人生にふさわしいエンディングを迎えたい」となった。「子に迷惑をかけたくない」は終活のキーワードだ。そのためにいろいろやっているわけで、中でもエンディングノートは無料で配る自治体も増えている。だが、実際に書いた人は少数派だ。面倒になって途中で挫折してしまう。でも、貯蓄や保険、株式など財産についてのページだけは書いておきたい。

葬儀、コロナ禍で簡素化進む

アンケートで4位になった葬儀や墓の最近の傾向をみておこう。

葬儀は一般葬、家族葬、一日葬、直葬などに分かれ、この順番で簡素化、費用も安くなっていく。一日葬は「ワンデーセレモニー」ともいわれ、通常2日かける葬儀を1日で行う。直葬は「火葬式」という呼び方をすることもあり、火葬場で火葬と収骨だけを行うスタイルだ。2020年春ごろの調査では、一般葬が約5割、家族葬が4割、一日葬と直葬で1割という比率だった。その後、コロナが拡大して簡素化がさらに進み、現在では家族葬が一般葬を超えて過半数、一日葬も増えているようだ。

身内だけで葬儀をすると、後から友人らが「線香をあげたい」と実家にやってくる場合があるという。その煩雑さを避けるには、生前の交友関係を踏まえ、どこまで声をかけるか、どんな葬儀にするのかをよく考えたい。菩提寺があればきちんと連絡したい。怠ると後日、納骨できないなどのトラブルになることもあると聞くので注意が必要だ。最近では実家に菩提寺があるのかどうかだけでなく、実家の宗教・宗派も知らない人が増えているという。宗派ぐらいは、知っておいた方がよい。

遺影の写真で困ることも多い。写真は大きく引き伸ばして加工するので早めに必要になる。その人の生前の姿形を象徴する大切な1枚というが、よい写真はなかなか見つからない。機会があったら早めに写真を撮っておくことをお勧めする。そして「遺影にはこの写真を使ってほしい」とあらかじめ家族に伝えておきたい。

新規建立は「樹木葬」が4割

次は墓だ。

墓石の代わりに木や花を植えた樹木葬の墓が増えている

実は墓にはいろいろな種類がある。キーワードは「永代使用」から「永代供養」へだ。永代使用というのは、墓を契約した人の子孫が続く限り使用できるというもの。通常の寺院や霊園の一般墓などが該当する。もう一つの永代供養は、寺院など遺骨を受け入れる側が続く限り供養してくれるというもの。近年人気の樹木葬の墓や納骨堂などが代表例だ。後継ぎがなくてもよく、個人や夫婦で入る墓が多い。家族の変容に対応しているといえる。値段も安く、手間がかからないところも魅力になっている。最近の調査では、新規建立の墓は樹木葬が41%と最も多く、今や一般墓を上回る。

樹木葬の墓というと、自然豊かな里山に埋葬され、樹木や草花が墓標代わり、やがて遺骨も自然にかえっていく、というイメージを思い浮かべるかもしれない。最近増えているのは都会の寺院や霊園の一角に造られた人工的な墓地で「都市型樹木葬」と呼ぶ。

多いのは墓石の周りに木や花をたくさん植えるタイプ。交通至便な場所にあり、値段も安いので人気があるが、注意したいのはスペースが小さいことだ。1人用だと墓標がスマホぐらいの大きさの場合もある。通常は骨つぼのまま納める。あらかじめ決めた期間そこに埋蔵して、その後で別の墓に合葬される。自然にかえらないこともあるので注意が必要だ。

お墓を選ぶ際はきちんと下見をするのが重要だ。一般墓なら後を引き継ぐ可能性がある家族も、一緒に見に行った方がよい。

自分の思いを託す人を見つける

これらを踏まえ「後悔しない終活」とは改めて何か。

個人で葬儀相談・支援事業を手掛ける市川愛さんは「家族はどんなに頑張っても、必ずといっていいほどなんらかの後悔をする」という。なぜなら「これでよかったよ。ありがとう」といってくれる人はもうこの世にいないからだ。

亡くなる本人も、もっときちんと準備しておけばよかったと後悔していたかもしれない。その後悔の度合いを減らすにはどうしたらよいか。それは「自分の思いを託す人を見つけ、その人に準備をしたことや希望したいことを伝えておくこと」だ。託す人は多くが家族だろう。おひとり様なら、誰か託す友人を見つけておく必要がある。

エンディングノートや遺言をいくら書いても、それがタンスや戸棚の奥にしまわれ、誰も気づかなかったら意味はない。コロナの影響が続いているが、今後、久しぶりに実家の親と会ったり、離れている家族と会ったりする人もいるだろう。終活について相談するチャンスだ。まずは話すことが、後悔の少ない終活につながることだと思う。

(マネー報道部 土井誠司)

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自分らしいエンディングを迎えるために元気なうちから考え準備をする終活。 このコラムでは、葬儀や墓、遺品整理や終の棲家、シニアの婚活やペットの対応など終活の多彩なテーマに関し、開始時期や家族の関わり方を交え、皆さんが疑問に思う問題を実例も交えて詳しくお伝えします。

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