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生と死を考えればお金の使い方が見えてくる(出口治明)

賢人に聞く「お金と人生」の本(上)

「読んでわくわくするかどうかを基準に本を選ぶ」という出口治明・立命館アジア太平洋大学学長

新型コロナウイルスのまん延に翻弄された2020年。将来の家計や仕事にモヤモヤした不安を抱える人も増えただろう。コロナ下で静かな年末年始、本を開いてそこにつまった「知」を頼りにしてはどうだろう。自分では気づかなかった考え方や新しい知識を得れば、目先の霧が晴れるかもしれない。お金に関わる仕事の経験が豊富な「賢人」にお金や経済、人生に関するお薦めの書籍を聞いた。

日本生命保険を退職後、ライフネット生命保険を創業、現在は立命館アジア太平洋大学の学長を務める出口治明氏は読書家としても知られる。お薦めの本を聞くと、以下の3冊を挙げてくれた。

人生を豊かにしてくれる「お金」と「仕事」の育て方(松浦弥太郎著)
あかるい死にかた(木内みどり著)
新版 知らないと損する 池上彰のお金の学校(池上彰著)

――普段どのくらい本を読んでいるのですか。

今は週に3冊くらいですが、30代から50代にかけては毎週10冊ほど読んでいました。寝る前に本を読むのが習慣です。以前、出版社の方が今まで何冊くらい読んでいるのか計算してくれましたが、1万冊は読んでいるでしょうといわれました。

――どのような基準で本を選ぶのでしょうか。

「読んでわくわくするかどうか」、それだけです。最初の10ページを読めば、面白いかどうかわかります。本の書き手も講演と同じでつかみをよくしようと最初を一生懸命書くわけですから、最初の10ページを読んで、読みたいと思うか、ひきこまれるかどうかが大事だと思っています。新聞の書評欄も、プロが本名で書いていますから非常に参考になります。

――まず『人生を豊かにしてくれる「お金」と「仕事」の育て方』を挙げてくださいましたね。

松浦弥太郎著(祥伝社)

常々、お金はあくまで人生を豊かにする手段だと考えています。お金の奴隷になってはいけません。どうやったらお金がたまるかということよりも、まずは自分がどう生きたいかが大切です。この本は、お金は使うことに価値があって、人間は時間の中で生きているので、お金は人生を楽しむために使った方がいいと説いています。この考え方は大賛成です。また、何のために働くのか、人生とは何か、仕事とは何かを丁寧に説明していますし、お金の増やし方などの基本的なテクニックも説明しています。中学生や高校生といった若い方から中高年まで、幅広い年齢層の方が人生とお金の基本的な関係を考えるのにとてもいい本だと思います。

――出口さんご自身も、『働く君に伝えたい「お金」の教養 人生を変える5つの特別講義』(ポプラ社)という本を2016年に出版されていますね。

僕も「お金は人生の手段だ」という視点で書いています。自分の価値観を知り、どのように使えば幸せになれるのかを知ること、わくわくどきどき感動することに投資すべきだということなど、この本と同様の意見も書いています。

――2冊目のお薦めは『あかるい死にかた』です。題名が「死にかた」なのに表紙が赤いんですね。

木内みどり著(集英社インターナショナル)

明るい本です。本の冒頭に出てくる遺言が最高です。「死にそうになったら延命治療なし」「死んだら読経、戒名なし」「お墓には入れないで散骨」などと書かれています。僕も同じ考え方で、死んだら海に散骨してほしいと家族に伝えています。

――なぜ「死にかた」の本をお薦めするのですか。

どういう風に死にたいかを考えておくと、どういう風に生きたいかが見えてくるからです。ですから、1冊目と、この『あかるい死にかた』を2冊セットで読むことをお薦めします。お金のことを考えることは人生を考えることです。どうやってお金を使うか、いくら必要なのかという問いは、どういう人生を生きたいかという問いと同じです。

――3冊目のお薦めは『新版 知らないと損する 池上彰のお金の学校』です。

これは、お金の辞書として手元に置いておくのにお薦めです。まず2019年10月に発行された新しい本です。最近の金融の進歩は早いので、(こうしたジャンルの本は)新しい方が良いです。また新書で読みやすく、お金だけでなく経済全体の流れがわかるようになっています。

――出口さんもこの本を辞書代わりに手元に置いているのですか。

池上彰著(朝日新書)

そうです。学生に説明するときの参考にすることがあります。友達と会話していてお金や経済の話題になり、わからないことがあったらこの本で調べるといいと思います。辞書代わりにして何度も読めば知識も増えますよ。

――出口さんはお金について悩んだことはありますか。

一度もありません。物欲がないからです。腕時計は30歳の時に外してしまいましたし、20年前と同じスーツを着ています。ボールペンも万年筆も、30年くらい同じものを使っています。だんだん手になじんで使いやすくなりました。自分が心地よいと感じる感覚を大事にしています。

――物欲がないとなると、どこにお金を使うのでしょうか。

(コロナ下の)今は難しいですが、趣味の旅行にお金を使ってきました。家族だけでなく、友人家族と海外旅行に行くこともあります。女性陣が買い物中に、おみやげを買おうかどうしようか迷っているようなとき、僕は決まって「それは買った方がいい」と背中を押すので人気者でした。自分のやりたいことをする人生が一番だと思うからです。迷ったら行く、迷ったら買う、という選択が良いと思うのです。人生は一度きりです。今は大変なときですが、立ち止まって自分は人生で何をしたいのか考えるチャンスにすべきだと思います。

(川本和佳英)

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