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脱炭素で注目の省エネ住宅、高性能とは限らず

20代からのマイホーム考(20)

昨年12月に開かれた2050年カーボンニュートラル・全国フォーラムの初会合であいさつする菅首相(首相官邸)

昨年、菅義偉首相が2050年のカーボンニュートラルを宣言し、行政や自治体、企業などで脱炭素に向けた動きが活発化しています。こうした中、省エネルギーに直結する高断熱高気密住宅に興味を示すユーザーが増えています。しかし、専門家によると、日本で売られている高断熱高気密住宅は必ずしも高い性能とは限らないというのです。

高断熱高気密住宅はわずか1割

国土交通省によると、国内には住宅の断熱性能の強化が必要な住宅が多数存在します。現行の省エネ基準に適合する住宅ストックは全体の約10%となっています。現在、「高断熱高気密住宅」とうたわれる住宅は「現行基準」に合致したものです。

なぜ現行基準を満たす住宅の割合がこれほどまでに少ないのでしょうか。現行基準は20年以降に義務化するという動きがあったものの見送られ、努力基準として残っている基準なのです。業界関係者によれば、19年は消費増税で景気が悪くなるのではないかと危惧されていたこと、当時は国内の工務店が断熱化された住宅を建築できる技術がまだないという意見が多かったことなどが、義務化見送りの背景といわれているようです。

必ずしも高性能といえない現行基準

ここで問題となるのは現行基準の実力です。現行基準に満たない住宅があまりに寒かったため、現行基準の住宅は暖かいと感じるという声も聞かれますが、この基準は1999年の基準で20年以上も前のものなのです。 海外などでより高い基準の住宅を体験した方からは、高気密高断熱というわりにはあまり暖かくない、涼しくないといった感想があるそうです。

鳥取県では県民の健康の維持・増進、省エネ化の推進及びCO2削減を図ることを目的として、戸建住宅を新築する際の県独自の省エネ住宅基準を策定しています。同県がホームページに掲載している表を見ると、国の現行基準と海外の基準のレベル感の違いが分かります。世界の省エネ基準と比較すると、現行基準は国際的にかなり低レベルです。

鳥取県ではT-G1という水準(冷暖房費を抑えるために必要な最低限レベル)以上であれば助成することとしています。欧米の水準に少々劣るものの、これが本来あるべき最低限の水準ということなのです。

現行基準のレベルは最低限のレベルをクリアしていないという状態です。しかし、現行基準をクリアしている住宅は1割しか存在しないこともあり、結果的に現行水準の住宅であっても「高気密高断熱住宅」として売られていることを知っておくべきでしょう。

性能を数値で説明できる工務店や設計士に依頼

カーボンニュートラルを目指す流れが強くなる中、国交省は25年度にも、新築住宅について省エネルギー基準の適合を義務付ける方針だといいます。交通事故で亡くなる方の3倍以上の方が住まいの断熱不足が主因と言われるヒートショックで亡くなっているとの報告もあり、高齢化がさらに進展する中、本来あるべき水準での高断熱高気密住宅の需要が従来以上に高まるでしょう。

こうした中、「高断熱高気密」という言葉だけに踊らされず、必要な性能を担保できる住宅を獲得するためにはどうしたらよいのでしょうか。東北芸術工科大学デザイン工学部建築・環境デザイン学科教授でエネルギーまちづくり社の代表でもある竹内昌義さんは、「工務店や設計事務所に燃費性能を確認することが重要」と指摘しています。車を買う時に燃費を確認するのと同様に、住まいの燃費性能を数値で説明してもらうことが重要で、この説明ができる、この基準を理解し計算できるという工務店やハウスメーカー、建築士などに相談したほうがよいでしょう。

田中歩(たなか・あゆみ)
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。

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