確定申告、今どき事情 コロナ禍・スマホ申告…
知っ得・お金のトリセツ(38)

このたび対話アプリLINE上で国税庁と「友だち」になった。
毎年、全国2000万人以上が参加する一大イベントである確定申告シーズンになると提出先の税務署や相談会場では「密」そのものの光景が繰り広げられる。コロナ禍での混雑緩和のため、例年2月16日~3月15日の期間が4月15日 まで1カ月延長されたのは去年と同じだが、新たにLINEを使って相談の予約ができるようになった。
指示に従い最寄りの税務署などを選んでいくとLINEのおなじみのクマのキャラ「ブラウン」が予約完了を知らせてくれホッコリする。あとは税務署でソーシャルディスタンスに注意しつつ、いつも通り相談して申告書を作成、提出すればいい。
LINE予約にチャットボット 進化する接点
税務署に足を運ばずに相談できる相手もいる。今年の確定申告から本格デビューした「税務職員のふたば」ちゃんだ。人工知能(AI)を用い、自動で回答するチャットボット。24時間寝ずに答えてくれるので、副業などの関係で自分が確定申告が必要か不安なときや必要書類を確認したいときなどに便利だ。勝手な偏見でチャットボットの性能を侮っていたが、結構的確な応答に驚いた。

「スマホが税務署に」――。国税庁の今年の一押しが「スマホ確定申告」だ。2018年分からの導入後、申告できる対象の範囲が年々拡大。自営業者など事業所得がある人はまだ使えないが、サラリーマンの場合、2カ所以上から給与をもらう人も含め幅広く活用できる。会社で年末調整後 、医療費控除やふるさと納税など還付目的で申告をするほぼすべてのケースに対応。今年からブラウザーのGoogle Chromeにも対応するなど利便性も高まっている。昨年のスマホ申告者は約47万人と前の年の4倍に増えたが今年は一段と増えそうだ。税理士の望月茂氏は「e-Taxを利用すると全体像を理解していなくても、聞かれた質問に答える中で自然と申告書が作成できる仕組みになっている」という。
あると便利なマイナンバーカード
スマホ申告時にあると便利なのがICチップを搭載したプラスチック製のマイナンバーカードだ。国税電子申告・納税システム「e-Tax」とひも付けることで、ICチップ内の電子証明書上の本人情報を読み取り、ネット上で申告書を作成・送信することができる。普及遅れが問題だったマイナンバーカードだが、普及率は25%と国民の4人に1人が保有するまでに上昇してきている。目下、未保有者を対象にQRコード付きの申請書が配られている。ワクチン接種も含め、今後様々なものがマイナンバーで管理される環境になる。利便性を考えると保有しておいた方がいい。
来年には通院記録の自動転記も
3月からは健康保険証としての利用が可能になる。サラリーマンによる還付申告の定番メニューといえば、約760万人が行う医療費控除。昨年1年間に負担した医療費が家族分の合算で10万円を超えると、超過額×所得税率分が返ってくるあれだ。かつては1年分の領収書を基に申告書を作成していたものだが、最近は健保組合などから送られる「医療費のお知らせ」が使えるようになり記入時間がだいぶ短縮された。マイナンバーカードの健康保険証利用が始まることで、来年の確定申告ではクリックひとつでズラッとデータが取得できる未来が予想される。
さらなる改善に期待
とはいえ、実際にスマホ申告をしてみるとさらなる改善が求められる部分もある。初めて使うとき、自分の情報を直接入力せずマイナンバーカードから読み取ってもらおうとすると、読み取り作業が4回も必要になる。途中、「読み取り失敗」マークがつくことも多く心臓に悪い。しかもその揚げ句に12ケタのマイナンバーについては読み取りでなく、わざわざ入力するという謎のプロセスもある。電子化で先行していたe-Taxのシステムにマイナンバーを使うサイト、マイナポータルを接続するゆえのゆがみかもしれないが、一段の改善に期待したい。

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