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中古マンション、地震の危険性と価格の関係は

20代からのマイホーム考(24)

東京都が発表している「地震に関する地域危険度測定調査」をご存じでしょうか。東京都は都内の市街化区域の5177町丁目について、各地域の地震に関する危険性を測定・発表しています。具体的には建物倒壊危険度や火災危険度に加えて、災害時活動困難度を加味した総合危険度を測定し、町丁目ごとの危険性の度合いを5つのランクに分けて相対的評価として東京都都市整備局のホームページ上で公表しています。今回は総合危険度のランクが中古マンション価格に影響を与えているのかどうかを調べてみました。

都区部に多い危険度ランク5

最も危険性が低いのが1で、2、3、4と数字が増えるにつれて危険性が高くなり、最も高いのが5となります。東京都下は地盤がよい地域(地震で揺れが増幅しにくい場所)が多く、建物が密集していない場所が多いことから、ランク1と2のエリアが多くなっています。しかし、23区内には地盤のよくない場所(地震で揺れが増幅しやすい場所)が多く、建物も密集している地域が多いことから、ランク3~5が目立ちます。

東京都下より23区内のほうが平均的にマンション価格は高いのが一般的ですから、今回の調査では、中古マンション成約単価について、東京駅からの距離、最寄り駅からの距離、東京駅を中心とした方位、築年数、所在階、成約年といった物件属性によって品質を調整したうえで、総合危険度が価格に与える影響を調査しました。こうすることで、総合危険度のみが純粋に価格に与える影響を明らかにします。

危険度が低ければ価格は高い

公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された2020年度(20年4月~21年3月:1万6517件)と東日本大震災直後の11年度(11年4月~12年3月:1万698件)の東京都内の中古マンション成約データを利用して分析した結果、危険度が低ければ価格は高く、危険度が高ければ価格は低くなるという合理的な結果となりました。

グラフは総合危険度ランク3を基準にしたとき、それ以外のランクに該当する場合、中古マンション価格に何%影響するかを示しています。例えば、2020年度においてランク1の場合、ランク3よりも平均して価格が5%強高くなる傾向がみられるということを意味します。11年度と20年を比較すると、ランク4にはあまり変化が見られませんでしたが、ランク1と2、ランク5の格差が拡大していることが分かります。

良好な住宅エリアは危険度も低い

危険度に応じた合理的な価格となっていることは、中古マンション購入者の防災意識が高いことを意味しているのでしょうか。筆者は必ずしもそれが理由ではないと考えています。というのも、良好な住宅街は、台地などの安全な高台にあることが多いということもありますし、火災で延焼しやすい木造住宅の密集地域ではないケースが多いことや、比較的敷地に対してゆとりをもって建築されている場所だったり、道路幅員も比較的広い住宅街区となっていたりすることが多いのです。こうした住宅街は、台地であれば地震で揺れが増幅しにくいでしょうし、旧耐震基準の建物が少なくかつ密集していなければ、倒壊や延焼のリスクは少ないですし、仮に火災が発生しても消防活動は比較的スムーズな地域であるはずです。

結果として、総合危険度に応じた合理的な価格となったのではないかと思います。なお、ランク1とランク5の間の格差が拡大したのは、中古マンション価格の上昇に伴い、平均的に価格が上昇するのではなく立地に対する市場の選別が厳しくなってきたということだと思います。

総合危険度が高い場所で購入する場合、すでにお住まいである場合は、価格が低い分、地震保険などで万が一の場合の準備をしておくなど、工夫をする必要があるということだと思います。通常の火災保険では、地震による建物の倒壊や破損だけでなく、地震による火災についても補償されません。

今年になってから、東日本大震災の余震と思われる震度5強以上の地震が3回も発生しています。日ごろからの準備はとても大切だと思います。

田中歩(たなか・あゆみ)
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。

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