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「働きたいから働く」 引退年齢を決めるのは自分

70歳リタイア時代の働き方(2)

「いつ仕事を辞めるか」は自分で主体的に判断する時代に

70歳リタイア時代のLife is MONEYを考えてみようというのが今月のテーマです。2021年春から「70歳現役社会」への第一歩を踏み出すわけですが、そこで必要となるのは会社より、私たちの意識改革のほうかもしれません。

「どうせ死ぬまで働かされる」と思っていないか

リタイア年齢の引き上げというニュースを耳にしたとき、「私たちは死ぬまで働かされるのか!」という印象を持った人も多いでしょう。

確かに65歳までの継続雇用制度の導入は、公的年金の受給開始年齢の引き上げに伴う措置でした。

しかし、今回は年金制度改正にそのような支給開始年齢の引き上げはセットされていません。昨年は公的年金制度の改正がありましたが、厚生年金の適用拡大(パートなどでも厚生年金を将来もらえるようにする改革)や私的年金改革(個人型確定拠出年金=iDeCoの加入規制緩和など)はあっても、「公的年金の支給開始を70歳にする」という改革はありませんでした。

ただし、「公的年金を遅くもらい始めるほど増額できる」という選択肢(繰り下げ受給)の上限を70歳から75歳まで拡充する改正はありました。

実は政府の方針の中には65歳の標準的な受給開始年齢を引き上げることはしないという文言があったりします。閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2019」(19年6月)には「70歳までの就業機会の確保に伴い、現在65歳からとなっている年金支給開始年齢の引き上げは行わない」と明記されています。

実は年金がもらえないから70歳まで働くわけではないのです。

年金と無関係に進む高齢者雇用

「70歳まで働ける社会づくり」に公的年金の受給開始年齢引き上げがセットでないのは、歴史的に見て初めてのことだと思います。

戦前より前、あるいは江戸期以前は基本的に「体が動く限り働く」時代でした。「ご隠居」が許されたのは経済的に余裕があって家督を譲ることができた場合などに限られていました。

昭和以降の歴史は公的年金を充実する取り組みの歴史でもあります。年金制度を用意し、年金がもらえる年齢まで働けるよう雇用環境の整備を繰り返してきました。

今回の改正が年金受給開始年齢の引き上げとセットでないからといって、公的年金制度が破綻するわけではありません。制度の持続可能性をにらみながら、年金額の伸びを調整するマクロ経済スライドなどを活用して保険料負担と給付のバランスを調整する仕組みに移行しているからです。

これからはむしろ、年金額を増やすためにもらい始める年齢を自分でポジティブに選択できるようになるのです。

いつだって辞めたいときに辞められる

そう考えると「自分の引退年齢は自分で決める」という発想の転換に今回の70歳現役社会への取り組みは位置づけられることになります。

そもそも、あなたはいつだって会社を辞めることができます。会社が65歳以降も働いてほしいといってきたとしても、あなたはそこで辞める自由があります。会社は逆で、定年である60歳で辞めさせる自由はありません。希望する社員については65歳まで雇う義務を負っています。

しかし私たちは経済的安定のために、多くの人が65歳まで働く道を選んできました。公的年金の受給開始年齢がその大きな理由のひとつです。

しかし、70歳まで働ける世の中になったとき、引退の決定権は会社にあるのではなく、あなたにあります。70歳現役社会においては、「あなたの辞めどき」のキャスチングボートを握っているのは、あなた自身なのです。

辞めどきを自分で決断できるのが70歳現役社会の姿

私たちはこれまで「定年だから」とか「65歳が年金受給開始年齢だから」という考え方で引退年齢を決めてきましたが、これは受け身の発想です。これからの時代はあなたが主体的に引退年齢を決められます。老後の経済的安定を確保できているという自信があるなら、あなたは70歳現役社会であっても「65歳引退」の道を選ぶことができます。

経済的余裕がないなら70歳まで働いて引退すればいいでしょう。それはそれで、100歳人生時代におかしな話ではありません。70歳まで働くことが普通の社会に変わっていきます。

65歳になったとき、「仕事にやりがいを感じるから」、年収は度外視して働き続けることもできます。公的年金をもらいながら、年収100万円くらいで働いてもいいわけです。社会貢献の仕事を無報酬でやることもできるでしょう。

70歳現役社会は、視点を変えれば楽しい時代です。「死ぬまで働かされる時代」ではなく「自分が働きたいなら働く時代」になるからです。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「大人になったら知っておきたいマネーハック大全」(フォレスト出版)など。http://financialwisdom.jp

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