/

さえない景気なのに高い株価 落差のわけは?

積立王子への道(21)

投資の世界で「積立王子」のニックネームを持つ筆者が、これから長期投資に乗り出す後輩の若者にむけて成功の秘訣を伝授するコラムです。

昨年はウィズコロナなのに世界的株高だった

たしかに年末年始のメディアでは両論が目についた。コロナ感染拡大が一旦底入れした実体経済を再び失速させる懸念がある一方、今年1年を通じた株高傾向を予想する類の記事も目立った。昨年も結局、終わってみれば世界的な株高の1年だったからね。

コロナ禍第1波の折に急落したあとは「ウィズコロナ」が始まった。今までの生活様式や働き方の前提が覆ったことで米国のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)に代表される、新たなスタイルに適合したビジネスをリードするIT・デジタル系企業が業績を伸ばし、その成長期待が顕著に株価を押し上げた。ごく一握りのハイテク成長株が先導する形で世界の株価は年末に至るまで右肩上がりで上昇したんだ。

コロナ禍に苦しむ実体経済の現状とは乖離(かいり)して、米国株式市場は史上最高値を更新。欧州各国の株価も追随して日本でも日経平均株価が年末として31年ぶりの高値をつけた。そして今の期待はコロナワクチンの開発進展だ。これが普及すれば経済活動全体が活気を取り戻すからと、あらゆる産業の株価が軒並み上昇する過熱ぶりだ。

結局のところは金融緩和

しかし根本的に市場が楽観している要因は主要国の金融緩和政策にある。米欧日の先進国の中央銀行がそろってゼロ金利に誘導し、同時に大量の資金を金融市場に供給している。経済の中にお金をジャブジャブさせて、資金を円滑に回し続けることによって景気悪化を何としても食い止めようという意思表示なんだ。

マーケットはそれを政府のコミットメントとして受け止めている。「コロナ終息後も景気が失速しそうになれば金融緩和で経済活動を支え続けるはずだ。ならばアフターコロナの経済急回復を見越して先に動こう」という具合に、株式市場には将来を先取りして動く習性があるんだ。だから今の株価は必ずしも今の実体経済を反映しているわけではないのさ。

思惑と実態のはざまで株価は動く

特に短期的には株価とは市場参加者の思惑の集積だ。短期的な値動きを追う投機筋は周りの動向を先読みし、さらに先回りして勝ちにいこうとするからまずは近い将来を織り込んで株価が動く。

今のマーケットの思惑といえば、コロナ終息後に我慢の反動で湧き出す需要とコロナ後も続くであろうIT・デジタルビジネスの進化への期待だ。それにコロナワクチンが加われば経済は一気に正常化する。しかしその場合でも金融緩和はすぐに終わらないから、余剰マネーがさらに株式市場に流れ込み株価を押し上げる――。そんな期待感に染まっている状態だ。要するにアフターコロナの経済成長加速とイノベーションの進展を両方先取りした動きなんだ。

不確実な未来に振り回されずに

だが、所与の事実として未来のことは不確実だ。誰にも定かではないがゆえに、往々にして間違えやすい。日々の株価が右往左往するのも近い将来への想定が不確実であるがゆえ。想定外に前提条件が変わると暴落したり暴騰したりと、動きも急になるものなんだ。

今回の君たちの疑問に対する答えは、実体経済とマーケットではそもそも時間軸が違うということだ。マーケットは「思惑の先取り」で動いているから、安直な楽観と悲観を繰り返す。だから短期筋は近視眼的な判断で相場の上下にいつも翻弄されるのさ。

ハジメくんが感じたように、現状はコロナの感染拡大真っ最中で実体経済は極めて脆弱な状態だ。対してマーケットは既にコロナ後の急激な経済回復をシナリオとして織り込んだ価格水準なので、いつにも増して乖離は大きい。この先マーケットが正しく予測していたか、あるいは甘い見通しだったかは神のみぞ知るということだね。

さて、君たち長期投資家は足元の楽観・悲観の波にとらわれてはいけない。次回は改めて長期投資家の見据える視線を共有していこう。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。2006年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会理事。全国各地で年間150回講演やセミナーを行っている。『預金バカ』など著書多数。

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

積み立て投資には、複利効果やつみたてNISAの仕組みなど押さえておくべきポイントが多くあります。 このコラムでは「積立王子」のニックネームを持つセゾン投信会長兼CEOの中野晴啓さんが、これから資産形成を考える若い世代にむけて「長期・積立・分散」という3つの原則に沿って解説します。

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン