/

わきまえず声を上げよう 「私の休業に補償を」

知っ得・お金のトリセツ(42)・国際女性デー特別編

国際女性デーのシンボルは春を告げるミモザ。日本の非正規雇用女性に春の到来が待たれる

新型コロナウイルス禍の中で迎えた今年の「国際女性デー」。コロナは経済、社会の弱い部分を直撃する。例えば飲食や小売り、介護など対面が必要な業種であり、中でもそれら業種で多くが雇用されている女性の労働者だ。この時期に飛び出した元首相の「女性蔑視発言」が炎上したことも決して偶然ではない。日本の職場や企業における女性の立場はまだまだ弱い。まずは現状と対策を知ること、そして諦めずわきまえず、知識を味方に声をあげることが重要だ。

女性の非正規雇用者が多くを占めるコロナ失業

日本の就業者約6600万人の半分近くは今や女性だ。15~64歳の女性の就業率は過去40年で20ポイント近く上昇し、約70%と欧米に比肩する水準にある。だがその増加分の多くをパートやアルバイトなどの非正規雇用が占める。ここをコロナ禍が直撃した。女性の非正規雇用者数は1月まで11カ月連続で減少し、前年同月比の減少幅は68万人と男性の3倍超に達する。

彼女たちの多くが労働者の権利として当然もらえる休業の補償を受けていない可能性がある。まずは休業手当。労働基準法では「使用者の責に帰すべき事由」で労働者を休ませる時には直近の平均賃金の6割以上の支払いを義務付ける。支払った会社は国の雇用調整助成金で補填されるが、それでも会社負担分が残る場合があることや、コロナという「不可抗力」と会社理由の線引きが微妙で手続きの手間もかかることなどから、申請に後ろ向きな会社も少なくない。労働政策研究・研修機構が昨年11月に行った調査によると、コロナ禍で休業したり労働時間が急減したりした女性の非正規雇用者の3人に1人が休業手当は「全く支払われていない」と答えている。

休業手当は非正規でもシフト減でも、もらえる

その理由が悲しい。上位2つの理由が「支払い対象ではないと言われた」「もらえることを知らなかった」で、いずれも男性に比べて女性が理由としてあげる比率が有意に高かった。実際は休業手当の対象としてパートやアルバイトはダメなど雇用形態による縛りはないし、会社理由となれば完全な休業でなくシフト制の職場でシフトに入る時間が減った場合でも適用される。

会社側がアクションを起こす必要のある休業手当以外にも、個人が申請できる「休業支援金」の枠組みもある。休業手当を受けていない従業員を対象に、当初は中小企業に導入され、最近になってシフト制や登録型派遣などの形で従業員を雇用する大企業にも適用が拡大された。

中小企業の場合は雇用形態を問わず休業前賃金の80%(日額上限1万1000円)が休業日数分でる。対象期間は昨年4月から全国で緊急事態宣言が解除される月の翌月末までだが、この昨年12月分までの申請期限が3月末に迫っている。中小企業で働いていてコロナの影響で1日でも休みやシフト減があったことを思い出した人は、今月中にとりあえず申請だけでもしてみよう。基本的には休業期間について労使双方が記入する書類などが必要だが、企業側の協力が得られなくてもその旨を書いて申請を出すことは可能だ。新たに対象になった大企業の従業員の場合、昨年春の休業分も遡って申請できる。厚労省の特設サイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html)で確認、申請しよう。

2人に1人が「知らない」

会社次第の休業手当と違って自分でアクションを起こし補償を受けられる可能性の高い休業支援金だが認知度は低い。5500億円近い予算枠のうちこれまでに執行されたのはわずか1割強にとどまる。

野村総合研究所は「シフト5割以上減」かつ「休業手当なし」の人を「実質的失業者」と定義、女性の実質的失業者は103万人に上ると推計する。休業支援金はこの層にこそ届くべきだが「実質的失業者の2人に1人は休業支援金の存在を全く知らない」(武田佳奈・上級コンサルタント)。「どうせ非正規だし……」とはなから諦めてはいないだろうか。コロナ禍で足元、停滞はしているが同一労働同一賃金を核とする非正規雇用の待遇改善は大きな世の流れ。諦めずに、まずは使える制度、もらえる給付金に対するリテラシーを高めよう。

先は長く、先立つものは心細い

なんと言っても「女の一生」は長い。にもかかわらず先立つものは心細いのが日本の女性を取り巻く現状だ。最近は当然のように語られる「人生100年」だが、より自分ごとで考えるべきなのは男性よりも6年も平均寿命が長い女性の方だ。40歳女性の4人に1人は105歳まで生きる可能性がある。

頼りが公的年金だが、厚生年金の月平均受給額は男性の16万円強に対して女性はおよそ10万円と1.6倍の格差がある。しかも女性の半分近くの分布が5万~10万円に偏っており、基礎年金部分以外の厚生年金の上乗せがごく少額であることが分かる。現役時代の年収格差が持ち越されている。民間給与実態統計調査の平均年収でみれば、男性540万円に対し女性は296万円と依然大差がある。

2月に世界銀行が発表した経済的な権利を巡る男女格差に関する調査で、日本は世界80位に沈む。政治の後進性が足を引っ張り、ジェンダーギャップ指数が121位という不面目な順位であることはよく引き合いに出されるが、得意なはずの経済でも決して成績は良くない。コロナ禍でこれ以上悪化しないよう、女性の非正規雇用者に対する手厚い安全網整備が急務だ。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー編集センターのマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

食べたものが体をつくり、使ったお金が人生をつくる――。人生100年時代にますます重要になる真剣なお金との対話。お金のことを考え続けてきたマネー・エディターが気づきの手掛かりをお届けします。

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン