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不動産投資、市況より物件の価値で判断を

20代からのマイホーム考(52)

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20~30代の若い方に不動産投資を勧める書籍やウェブサイトをよく見かけます。「資産を早めに築いて仕事を辞める」という生活スタイルを示す「FIRE」(Financial Independence, Retire Early)という言葉が流行したこともあり、賃貸用のワンルームマンションなどへの投資を検討している方も多くいらっしゃるようです。マンション価格の上昇トレンドが続いていることも影響しているのかもしれません。

不動産価格の上昇トレンドはいつまで続くのか

投資で得る利益の源泉の一つは「安く買って、高く売る」ことだとされます。不動産サイクルを考えたときに最もシンプルなのは市況が低迷しているときに買って、高騰しているときに売るという方法です。不動産販売価格と賃料の推移をみれば、過去のピークや谷はわかります。例として、東京23区の中古マンションの成約価格とマンション賃料の推移を見てみることにしましょう。

成約価格も賃料も2008年のリーマン・ショック前後にいったんピークを迎えて12~13年ごろまで低迷し、その後はいずれも上昇が続いていることがわかります。サラリーマン大家さんの成功体験本をよく見かけるのは、上昇トレンドが長く続いたことも一因なのではないかと筆者は考えています。さて、この上昇トレンドはいつまで続くのでしょうか。

物件の価値を見分ける「目利き力」

グラフを見て「今は買い時ではないのかもしれない」と考える方も、「まだまだ上がるはずだ」と考える方もいらっしゃるでしょう。今がピークかどうかは、実は不動産投資のプロでもわかりません。では、継続的に不動産投資を行っているプロは何をもって判断しているのでしょうか。

不動産投資のプロは市場のトレンドだけでなく、個別の不動産の価値が割安かどうかに注目しています。割安かどうかというのは、「相場より割安かどうか」というシンプルな判断基準もあれば、「比較的少ない投資で一定の収支改善が見込めるかどうか」といった判断基準もあります。後者は、リノベーションなどの投資で賃料を上げる余地がある、さまざまな工夫で運営費用を削減する余地がある、というものです。

いずれも「目利き力」が必要になりますが、一般の方でも特定の地域に注目して多くの不動産をチェックし続けることで目利き力は身に付きます。もちろん、情報源となる地域の不動産会社や、適正な修繕と設備投資のアドバイスをしてくれる工務店などとの関係構築も重要になってきますので、日々の努力が必須となります。

資産ポートフォリオも考慮を

自身の資産ポートフォリオの観点から不動産投資を判断する方法もあります。例えば老朽化した賃貸物件しか保有していない場合。新しい賃貸物件への買い替えは市場での競争力を手に入れられますし、減価償却費を費用として計上することによる節税メリットも期待できるという点で合理的です。

保有資産に占める現金や金融資産の割合が高い方にとっては、運用の選択肢の拡大や分散投資という観点から不動産投資を検討することは合理的です。特に高齢者の場合、不動産投資は結果的に相続税の節税対策にもなるというメリットがあります。相続財産を計算する際、賃貸不動産の評価額が市場で取引される一般的な価格よりも低くなりやすい仕組みがあるからです。

こうした節税メリットもあり、不動産投資を検討される方が多いのも事実です。とはいえ、物件の収支が中長期で安定するか、市場価格が適正か、などの見極めも必要ですし、節税対策として適正か、といった点について十分に留意する必要はあります。

市況だけで投資判断は無理

不動産価格のトレンドだけで不動産投資をすべきかどうかを判断するのは無理があります。やはりどんな市場環境であっても個別物件をしっかり分析する目利き力を身に付けておくことが不動産投資には必要でしょう。資産ポートフォリオの観点から不動産投資を検討する場合でも目利き力は必要になります。不動産投資には、目利き力を身に付けるための努力とよいパートナーとの関係構築が必須なのです。

田中歩(たなか・あゆみ)
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。
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