22年度の実質成長率は1.5%、23年度は1.3% NEEDS予測
民需底堅く、22年度は1%台半ばの成長に
日本経済新聞社の総合経済データバンク「NEEDS」の日本経済モデルに、内閣府が8月15日に公表した2022年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値を織り込んだ予測によると、22年度の実質成長率は1.5%、23年度は1.3%の見通しとなった。
民間最終消費支出(個人消費)や設備投資など民需は底堅く、緩やかな景気拡大が続く。海外経済の先行き不透明感は強まっているものの、22年度の実質成長率は1%台半ばとなる。
実質GDPは前期比0.5%増――22年4~6月期

4~6月期の実質GDPは前期比0.5%増(年率換算で2.2%増)と、3四半期連続のプラス成長だった。個人消費がサービスを中心に増加し、設備投資は2四半期ぶりにプラスとなった。公的固定資本形成(公共投資)は6四半期ぶりに前期比プラスだった。
輸出は前期比0.9%増加した一方、輸入は原油や天然ガスなどの増加で同0.7%増となった。
消費は足元で足踏みも、貯蓄積み上がりが支えに

内閣府が発表した7月の景気ウオッチャー調査では、新型コロナウイルスの感染急拡大を反映し、家計動向関連の現状判断指数(DI、季節調整値)が前月比10.8ポイント低下と、2カ月連続で悪化した。2~3カ月先の景況感を表す先行き判断DIも前月比6.4ポイント低下した。夏場の旅行などのサービス消費は盛り上がりに欠けるとみており、7~9月期のGDPベースの個人消費は前期比0.2%増と前期より伸びが鈍化すると見込む。
物価の上昇が続いていることも消費にはマイナスだ。総務省が発表した7月の消費者物価指数(生鮮除く総合)は、前年同月比2.4%上昇と、消費増税の影響があった14年12月以来、7年7カ月ぶりの上昇率となった。
ただ、家計部門にはコロナ禍による消費先送りで貯蓄が積み上がっている。日銀の資金循環統計によると、22年3月末の現金・預金残高は21年3月末時点に比べて約31兆円多い。高水準の資産残高が消費の下支え要因になるとみている。22年度の個人消費は前年度比3.0%増、23年度は同1.5%増と予測している。
海外経済減速で輸出の伸びも低下へ
米国ではインフレ抑制のため、米連邦準備理事会(FRB)が3月以降、合計で2.25%の利上げを実施した。金融引き締めの影響は既に住宅投資などに表れているが、今後本格化してくると見込む。中国では新型コロナの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策の影響や、不動産市場の調整などで景気回復の勢いは鈍い。
海外景気の減速を受け、日本の輸出も緩やかな伸びにとどまる見通し。一方で、半導体など部品不足は緩やかに改善に向かっており、生産の回復を通じて輸出にプラス材料となるとみている。GDPベースの実質輸出は、22年度に前年度比2.6%増、23年度は同1.2%増と予測している。
経常利益減も、設備投資は増加基調を維持
21年度の法人企業統計ベースの経常利益(金融、保険除く)は前年度比36.8%増の大幅増益となったが、今後、原材料コストの上昇や海外経済の減速の影響が表れてくる。経常利益は22年度から2年連続の減益を予測している。
ただ、企業の内部留保や手元資金は足元では潤沢だ。22年1~3月期の法人企業統計の利益剰余金(内部留保)や現金・預金は、新型コロナの感染が拡大し始めた20年1~3月期を大きく上回っている。そのため、設備投資は予測期間中、増加基調を維持すると見込む。コロナ禍や供給網の混乱で先送りした投資が実行されるほか、デジタル化や脱炭素関連を中心とした投資が増え、22年度のGDPベースの実質設備投資は前年度比2.1%増、23年度は同2.9%増と予測している。
なお、今回のNEEDS予測は、日本経済研究センターが22年8月に公表した短期予測をベースにしている。
(日本経済研究センター 山崎理絵子、情報サービスユニット 渡部肇)
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