21年度の実質成長率3.8%、22年度は3.4% NEEDS予測
感染再拡大で、21年度内の消費回復は緩慢に
日本経済新聞社の総合経済データバンク「NEEDS」の日本経済モデルに、内閣府が8月16日に公表した2021年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値を織り込んだ予測によると、21年度の実質成長率は3.8%、22年度は3.4%の見通しとなった。
4~6月期は2四半期ぶりのプラス成長だったが、新型コロナウイルスの感染再拡大による消費への影響が当面は続き、21年度の景気回復はゆっくり進む見通し。ただ、設備投資や輸出は堅調に推移する。消費は22年度前半に盛り返すとみている。
21年4~6月の実質GDPは前期比0.3%増に

21年4~6月期の実質GDPは、前期比0.3%増(年率換算で1.3%増)と、2四半期ぶりのプラス成長だった。
民間最終消費支出(個人消費)は前期の落ち込みから持ち直し、前期比0.8%増だった。設備投資は同1.7%増、住宅投資は同2.1%増と比較的、好調に推移した。政府最終消費支出が新型コロナのワクチン購入などで増加した一方、公的固定資本形成(公共投資)は2四半期連続の減少となった。
輸出は前期比2.9%増と4四半期連続の増加となった。ただ、輸入は同5.1%増で、輸出から輸入を差し引いた財貨・サービスの純輸出(外需)の成長率への寄与度はマイナス0.3ポイントだった。
個人消費は雇用・所得環境の改善が支えに

内閣府が発表した7月の景気ウオッチャー調査では、2~3カ月先の景気を表す先行き判断DI(季節調整値)が家計動向関連で前月比4.4ポイント低下した。特にサービス関連は同8.7ポイントの悪化と低下幅が大きかった。
一方、企業部門の回復を受けて雇用・所得環境は足元で改善しており、消費を下支えする要因となりそうだ。厚生労働省が発表した6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.13倍で、前月から0.04ポイント上昇した。
21年7~9月期の個人消費は前期比0.2%増となる見通し。ワクチン接種の進展などで新型コロナの感染拡大は徐々に落ち着いてくると想定しており、個人消費は21年度後半から22年度前半にかけて回復が進んでいく。「Go To トラベル」事業は22年4月から年度末まで実施されると仮定している。ただ、ペントアップ(先送り)需要が22年度前半に発生した後、消費は再び弱含むとみている。21年度の個人消費は前年度比3.0%増、22年度は同2.3%増と予測する。
海外経済の復調で、輸出は好調が続く
経済産業省が発表した4~6月期の鉱工業生産は、4四半期連続で拡大した。半導体の供給不足を受けて、自動車では2四半期連続の減産となったものの、生産用機械や電子部品・デバイスでは増産が続いた。
生産指数の上昇は輸出の好調さに支えられている。海外経済は米国や欧州でインド型(デルタ型)の感染拡大により、足元で景況感の悪化がみられるが、ワクチン接種の進展や積極的な財政支援策を受けて、景気回復が続くと予測している。
日本の実質輸出は今後も増加が続く。21年度は前年度比13.6%増、22年度も同4.1%の増加を見込んでいる。
設備投資はデジタル化・ESG関連が増加
設備投資は7~9月期以降も堅調な推移となりそうだ。内閣府公表の機械受注統計では、設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」は4~6月期に前期比4.6%増だった。7~9月期の見通しは同11.0%増で、2四半期連続の増加が見込まれている。
GDPベースの設備投資は7~9月期に前期比1.3%増となり、その後も持続的な拡大が続く。設備投資には、コロナ後を見据えたデジタル化やESG(環境・社会・企業統治)関連の需要の高まりもプラス材料だ。21年度のGDPベースの設備投資は前年度比4.4%増、22年度は同4.0%増と見込んでいる。
なお、今回のNEEDS予測は、日本経済研究センターが21年8月に公表した短期予測をベースにしている。
(日本経済研究センター 山崎理絵子、デジタル事業 情報サービスユニット 渡部肇)