22年度の実質成長率は1.8%、23年度は1.2%成長 NEEDS予測
民需主導で緩やかな景気回復保つ日本経済
日本経済新聞社の総合経済データバンク「NEEDS」の日本経済モデルに、2022年10月24日までに公表された各種経済指標の情報を織り込んだ予測によると、22年度の実質成長率は1.8%、23年度は1.2%の見通しになった。
22年7~9月期の実質国内総生産(GDP)は前期比0.1%増となる見込み。設備投資や輸出は堅調だったものの、新型コロナウイルスの感染「第7波」の影響で、民間最終消費支出(個人消費)が同0.2%増にとどまった。輸入の増加も成長率を下押ししたもようだ。
10~12月期以降も、景気は緩やかな回復基調を保つ見通しだ。個人消費はコロナ禍からの回復が着実に進み、外食や旅行などサービス関連を中心に増加が続く。一方、世界的な物価高とそれに伴う欧米での金融引き締めなどで、海外経済の減速基調がはっきりしてくるため、輸出は低い伸びが続きそうだ。
個人消費はサービスの回復顕著に

日銀が公表した8月の実質消費活動指数(季節調整値、旅行収支調整済み)は前月比1.1%減と2カ月連続のマイナスだった。新型コロナ「第7波」の影響で外食や旅行などサービスが3カ月連続で減少した。
ただ、9月の消費は持ち直したとみられる。内閣府が公表した9月の景気ウオッチャー調査では、家計動向関連の現状判断指数(DI、季節調整値)は前月比5.0ポイント改善した。内訳をみると、飲食関連は同19.6ポイント上昇、サービス関連は同5.7ポイント上昇した。10月から政府の観光促進策「全国旅行支援」が開始され、サービス消費の回復は今後も続く見通しだ。
9月の消費者物価指数(生鮮除く総合)は前年同月比3.0%上昇となった。物価上昇は消費回復には逆風だが、今後、消費者物価上昇率は原油価格による押し上げ効果が弱まるにつれて低下していくとみている。GDPベースの個人消費は前期比で緩やかな増加が続き、22年度は前年度比3.0%増、23年度は同1.5%増と予測している。
企業の設備投資計画は高水準に

設備投資は増加基調だ。経済産業省公表の鉱工業出荷内訳表によると、国内向け資本財出荷(除く輸送機械、季節調整値)の7~8月平均は、4~6月平均と比べ13.0%上昇した。7~9月期のGDPベースの設備投資は、前期比1.7%増と2四半期連続で増加すると予測している。
10~12月期以降も設備投資は堅調に推移する可能性が高い。日銀が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、22年度の設備投資計画(全規模全産業、ソフトウエア・研究開発含み土地を除く)は前年度比14.9%増と、前回の6月調査より1.8ポイントの上方修正となった。
コロナ禍や世界的な供給網の混乱で21年度から先送りされた投資が22年度に表れるほか、企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)や再生エネルギー関連の投資を増やすとみられる。GDPベースの設備投資は22年度に前年度比3.6%増、23年度は同3.2%増と予測している。
輸出は10~12月期以降、伸びが低下
日銀が算出した実質輸出(季節調整値)は、7~9月期に前期比3.0%増となった。サービス輸出を含めた7~9月期のGDPベースの実質輸出は、同2.4%増と予測している。
海外経済は不透明感が高まっている。米国では、労働省が発表した9月の消費者物価指数が前年同月比8.2%上昇した。米連邦準備理事会(FRB)はインフレ抑制のため金融引き締めを続けるとみられ、米国の成長率は低下が続くと予測している。中国では、新型コロナの感染抑制のための「ゼロコロナ」政策や、不動産投資の落ち込みが続き、成長ペースの鈍化が続きそうだ。
海外経済の減速により、10~12月期以降の日本のGDPベースの輸出は伸び率が低下する。予測期間中、前期比では0%台の弱い伸びが続く見通しだ。22年度の実質輸出は前年度比4.1%増、23年度は同1.7%増の見込みだ。
なお、今回のNEEDS予測は、日本経済研究センターが22年9月に公表した改訂短期予測をベースにしている。
(日本経済研究センター 山崎理絵子、情報サービスユニット 渡部肇)
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