21年度の実質成長率は2.7%、22年度は3.2%成長 NEEDS予測
本格化する景気回復、消費と設備投資がけん引
日本経済新聞社の総合経済データバンク「NEEDS」の日本経済モデルに、内閣府が12月8日に公表した2021年7~9月期の国内総生産(GDP)の2次速報値を織り込んだ予測によると、21年度の実質成長率は2.7%、22年度は3.2%の見通しとなった。
21年7~9月期の実質GDPは前期比0.9%減(年率換算で3.6%減)だった。民間最終消費支出(個人消費)や公共投資などが1次速報から下振れし、実質成長率は0.1ポイント下方修正された。
10~12月期以降は、サービス消費が増加し個人消費が大幅に改善するほか、住宅投資や設備投資も回復する。海外経済は堅調なものの、サプライチェーン(供給網)の混乱は依然続いていることから、輸出・生産の持ち直しは22年以降になる見込み。
個人消費は持ち直し

10月の個人消費は好調だった。日銀が公表した10月の実質消費活動指数(旅行収支調整済み、季節調整値)は、前月比4.3%増加した。緊急事態宣言解除を受けて、サービスが同8.0%増と大きく伸びたほか、低調だった耐久財も増えた。
11月以降の消費も回復が期待できる。内閣府が発表した11月の景気ウオッチャー調査で、家計動向関連の現状判断指数(DI、季節調整値)は前月から0.2ポイント上昇し、02年1月の統計開始以来最高の56.5となった。10~12月期の個人消費は前期比2.5%増を見込む。
22年以降の個人消費は「Go To トラベル」事業や政府の経済対策による給付金などにより、前期比で増加が続く。21年度の個人消費は前年度比2.8%増となる。ただ、「Go To トラベル」事業による押し上げ効果が剝落していく22年度後半には、個人消費は一時的に落ち込む。22年度の個人消費は前年度比4.1%増と見込んでいる。
輸出の本格回復は22年以降

11月の貿易統計を基に日銀が算出した実質輸出(季節調整値)は前月比9.2%増だった。ただ、10~11月平均は7~9月平均と比べ1.8%低い水準だ。半導体や自動車部品などの供給網の混乱が輸出を下押ししている。10~12月期のGDPベースの輸出は前期比1.0%減と、2四半期連続のマイナスとなる見込みだ。
海外経済は堅調だ。米サプライマネジメント協会(ISM)が公表した11月の米製造業景況感指数は61.1と高水準を維持している。非製造業景況感指数は69.1と過去最高を更新した。米国は個人消費を中心に底堅い成長が続くとみられる。中国では電力不足問題が改善し、生産が回復している。海外では新型コロナウイルスの新たな変異型「オミクロン型」の感染者が増加しているものの、ワクチン接種の推進やマスク着用などの感染対策で大規模なロックダウン(都市封鎖)には至らず、景気回復が続くとみている。
22年1~3月期以降のGDPベースの輸出は前期比プラスが続く。21年度は前年度比11.1%増、22年度は同3.2%増となる見込みだ。
設備投資は10~12月期以降反発
7~9月期のGDPベースの設備投資は前期比で減少したが、企業の投資意欲は衰えていない。日銀が公表した全国企業短期経済観測調査(短観)の12月調査では、21年度の設備投資計画(全規模全産業、ソフトウエア・研究開発を含み土地を除く)は前年度比8.5%増だった。
内閣府が公表した10月の機械受注統計では、設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」が前月比3.8%増と3カ月ぶりに増加した。供給網の改善が遅れて生産の回復には時間がかかるものの、GDPベースの設備投資は10~12月期に前期比1.8%増となる見込み。
21年度のGDPベースの設備投資は前年度比2.5%増となる。22年度以降も設備投資の増加が続く見込みだ。
なお、今回のNEEDS予測は、日本経済研究センターが21年12月に公表した改訂短期予測をベースにしている。
(日本経済研究センター 田中顕、デジタル事業 情報サービスユニット 渡部肇)
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