22年度の実質成長率は1.3%、23年度は0.9%成長 NEEDS予測
23年後半から輸出が持ち直し、景気は堅調
日本経済新聞社の総合経済データバンク「NEEDS」の日本経済モデルに、内閣府が2月14日に公表した2022年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報値を織り込んだ予測によると、22年度の実質成長率は1.3%、23年度は0.9%の見通しとなった。
23年1〜3月期以降の景気は、民間最終消費支出(個人消費)と設備投資などの民需がけん引する。海外経済の減速により23年前半の輸出は低迷するが、インバウンド(訪日外国人)需要が下支えとなる。輸出は年後半には持ち直す見込みだ。
実質GDPは前期比0.2%増――22年10〜12月期

22年10〜12月期の実質GDPは前期比0.2%増(年率換算で0.6%増)と、2四半期ぶりのプラス成長となった。個人消費は同0.5%増と3四半期連続で増加した。政府の「全国旅行支援」を追い風に宿泊や交通などのサービスが個人消費を押し上げた。設備投資は同0.5%減と3四半期ぶりに落ち込んだ。
公的固定資本形成(公共投資)は前期比0.5%減少したものの、政府消費は同0.3%増だった。
輸出はインバウンド消費の回復もあり、前期比1.4%増えた。輸入は7〜9月期に大きく伸びた反動で同0.4%減少し、外需が成長率を押し上げた。
緩やかな伸びが続く個人消費

23年1〜3月期の個人消費も前期比プラスが見込まれる。自動車の業界団体が公表した1月の国内新車販売台数(乗用車、軽自動車含む)は、NEEDS算出の季節調整値で前月比4.8%増と2カ月連続で増えた。
ただ、物価高が個人消費に下押し圧力をかけている。総務省が公表した1月の消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合で前年同月比4.2%上昇した。政府の電気・ガスやガソリン代の負担軽減策もあり、4〜6月期以降のCPI上昇率はおおむね前年同期比2%台で推移するものの、所得の伸びはそれを下回る状況が続く。もっとも、新型コロナウイルス禍で積み上がった貯蓄が支えとなり、個人消費の大きな落ち込みは避けられそうだ。1〜3月期の実質個人消費は前期比0.4%増、22年度では前年度比2.5%増を見込む。23年度もサービスを中心に消費は緩やかに伸びて、前年度比1.0%増になると予測している。
輸出はインバウンドが支えに
海外経済の減速で、足元の財輸出は落ち込んでいる。財務省が発表した1月の貿易統計を基に日銀が算出した実質輸出(季節調整値)は、前月比2.9%減と2カ月連続で減少した。
日本の輸出にとっては、今後はインバウンド需要が下支えとなる。日本政府観光局(JNTO)が発表した1月の訪日客数は149.7万人で、22年12月から12.7万人増えた。厳しい水際対策が義務付けられてきた中国人観光客も対策の緩和により次第に戻ってくると見込まれ、今後のインバウンドを押し上げる。
日本のGDPベースの実質輸出は23年1〜3月期に前期比1.8%減少し、22年度は前年度比4.7%増となる。4〜6月期も前期比マイナスが続くが、23年後半には前期比プラスに転じ、23年度は前年度比0.1%増となる見通しだ。
23年以降の設備投資は底堅い
22年10〜12月期のGDPベースの設備投資は前期比で減少したが、企業の設備投資意欲は依然として底堅く、23年1〜3月期には再び増加に転じるとみる。内閣府が発表した機械受注統計では、設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」の1〜3月期の見込みは前期比4.3%増だった。1〜3月期のGDPベースの設備投資は前期比0.4%増となり、22年度では前年度比2.8%増を見込む。
金利が上昇傾向に転じ交易条件が悪化するなかでも企業の経常利益は底堅く、設備投資を下支えする。GDPベースの設備投資は23年度に前年度比1.0%増となる見込みだ。
なお、今回のNEEDS予測は、日本経済研究センターが23年2月に公表した短期予測をベースにしている。
(日本経済研究センター 田中顕、情報サービスユニット 渡部肇)
関連企業・業界