/

利益30億円のスゴ腕個人 波乱相場に揺れず基本を守る

上がる銘柄は引っ張って下がる銘柄は損切り 「損小利大」を徹底

成長企業の株を価格が上昇している間はできるだけ持ち続ける「成長株モメンタム投資」で計30億円の利益を上げてきた伝説の個人投資家に、実践している投資のノウハウを詳しく聞いた。

「相場の先行きは読めないし、読む気もない」

東京都内で会った男性は繰り返しこう強調した。STFさん(ハンドルネーム)。2010年に100万円の元手で株式投資を始め、計30億円に上る利益を上げてきた知る人ぞ知るスゴ腕の個人投資家だ。

かつてはブログとツイッターで自身の投資法や投資成績などの情報を発信し、ツイッターのフォロワーは1万人を超えていた。だが、17年に更新をストップしてネットの表舞台から姿を消した。3年半越しの交渉の末に今回取材に応じてもらった。

震災による暴落で資産激減

株式投資を始めたきっかけは、資格の取得だ。08年に起きたリーマン・ショックの傷痕が10年にはまだ深く残り、経済は回復の途上。将来不安を背景に資格取得ブームが起きていた。ブームに関心を持って勉強し、日商簿記検定2級やファイナンシャル・プランニング技能検定2級を取得した。

「簿記やFPの勉強を通じて株の仕組みや企業の財務諸表の読み方を学び、理解した気になって100万円の元手で株式投資を始めた」

雑誌や書籍で仕込んだ知識を基に、PER(株価収益率)が5~6倍と低く、配当利回りが3%以上ある銘柄を複数買った。「購入した銘柄がすぐに値上がりして株は簡単だと思った」と振り返る。

だが、すぐに手痛い目に遭う。元手として300万円弱を追加して株式投資に取り組み、含み益を足した運用資産の合計が2倍近くの750万円に達した11年3月、東日本大震災が発生して日本株相場全体が暴落。運用資産は6分の1の125万円まで減少した。

大きな打撃だったが、株式投資からは撤退しなかった。投資を続けながら手法を確立。驚異的なペースで利益を拡大して資産を増やした。13年に累積利益が1億円を突破。17年には10億円を超え、現在の累積利益は30億円超に上る。18年末に勤務先を退職し、個人事業主として独立した。

STFさんが実践している投資の特色の一つは、株を現金ではなく、信用取引で証券会社から借りたお金で購入している点だ。

「借金で元手よりも大きな資金を投じてきたから、30億円もの利益を上げることができた。そんなハイリスクの投資からは一般の個人投資家が学べることはない」

こう考えると、STFさんの投資の本質を見誤る。信用取引をフルに活用する点を除けば、実行していることはいずれも株式投資の基本動作と呼べるものだ。基本動作を徹底してきたからこそ、信用取引で大きな借金を背負って株式投資が続けられなくなる事態に陥らずに済んできた。

業績動向の確認を怠らない

では、多くの個人投資家にも参考になる基本動作とは何か。まずは企業の業績動向を自分で確認することだ。

STFさんが購入するのは、業績を順調に拡大させている成長企業の株。銘柄発掘の端緒は、株式投資の関連情報サイト「株探」やツイッター上の情報が多い。だが、それをうのみにせず、必ず企業のウェブサイトに掲載されている決算の説明資料や月次の販売データに目を通し、セグメント別の売上高や利益の推移なども細かく確認する。それで業績の拡大が続くと確信できた銘柄を買う。

次に、価格の上昇にモメンタム(勢い)がある銘柄は、上昇が続く間できるだけ持ち続ける。一方で意に反して値下がりした銘柄は、買値から5%下がった時点で売り始めて損切りする。値上がり益をできる限り大きくすることと損失を最小限に食い止めることの両方を徹底しているわけだ。

「上昇する銘柄を持ち続けるために、企業のホームページで公表された月次の業績やIR(投資家向け広報)ニュースをフォローして業績拡大のペースが落ちていないかどうかを確認している」

値下がりして売った銘柄が再び上昇したら、ためらわずに再購入する点も特色だ。また銘柄を売って利益を確定したら、半分は証券口座から引き出して再投資に回さないというルールを守る。この資金管理も、株式市場からの退場を防ぐことにつながっている。

さらに注目すべきは、40~80銘柄に分散投資している点だ。それにもかかわらず、大きな利益を上げてこられたのも、上昇株を引っ張りつつ、損切りを徹底してきたからこそ。「損小利大」の厳守。STFさんの真骨頂はここにある。

大勝ちを収めた投資例① オリコン
18年11月に発表した19年3月期の第2四半期決算で、顧客満足度調査のセグメントの業績が急伸していることが分かり、利益が上振れするとみて購入した。
大勝ちを収めた投資例② ホープ
19年5月に発表した業績見通しの上方修正がエネルギー事業によるものと判明。新規事業でさらなる拡大を狙っていることを突き止めて購入。一旦売却した後、拡大路線が続いているのを見て、再購入した。
大勝ちを収めた投資例③ マネックスグループ
仮想通貨の値上がりを受けて、関連銘柄として仮想通貨の取引所を運営するグループ会社を持つマネックス、セレスCAICAの3銘柄をまとめ買いした。

(中野目純一)

[日経マネー2021年5月号の記事を再構成]

日経マネー 2021年5月号 日経平均3万円からの株の勝ち方入門
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/3/19)
価格 : 750円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン