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個人投資家の株勉強会 ネット配信で参加が容易に

コロナ禍がきっかけ 災い転じて参加者層を広げる

リピーターが多く集まる個人投資家主宰の株式投資勉強会。コロナ禍でネット配信を始める例が相次いでいる(撮影:菅野勝男)
個人投資家が主宰して人気を集めている株式投資の勉強会が、次々とネット配信を始めている。コロナ禍で参加希望者を全員、1つの会場に集めて開催するのが困難になったからだ。やむを得ない事情から始めたネット配信だが、従来は及び腰だった人も気軽に参加するようになるなど、思わぬ効用も。それが個人投資家の裾野拡大に一役買っている。実情を取材した。

「投資に役立つ情報が得られたり、株について語り合う仲間ができたりするなど、メリットが多い」。個人投資家が主宰する株式投資の勉強会には、こうした評判が口コミやSNS(交流サイト)で広がり、熱心なリピーターも出るほど人気を博しているものがある。

勉強会と一口に言っても、その内容は様々だ。スゴ腕の個人投資家が自身の投資手法や実践例を解説する講義形式のものもあれば、個人投資家の間で注目度が高い銘柄について参加者が分析し、意見を交わすセミナー形式のものもある。中には、個人投資家の関心が高い企業の投資家向け広報(IR)担当者を招いて会社説明会を開くなど、証券取引所や証券会社の勉強会に引けを取らないものもある。

形式や内容は様々だが、個人投資家の目線で彼らが入手したい情報や同好の士と知り合う交流の場を提供している点では共通している。ここが証券会社などの勉強会との大きな違いだろう。まさに個人投資家主宰ならではの特色だ。それが熱心な参加者を引き寄せる最大の魅力になっている。さらに参加費が無料から1000円程度と手ごろな値段であることも、人気を呼ぶ要因の一つになっている。

こうして人気を博してきた個人投資家主宰の勉強会が相次いでネット配信に踏み切っている。きっかけは新型コロナウイルスの感染拡大だ。「コロナ禍で外出の自粛や営業時間の短縮を求める緊急事態宣言が出て、当面は1つの場所に参加者を集める勉強会を開くのは困難だと判断した」。名古屋市在住の50代の専業投資家、アイルさん(ハンドルネーム)はこう振り返る。

オンラインだからこそ参加できる人も

アイルさんは、外食や小売りなど身近なサービス業の会社に注目し、成長力があると見定めた銘柄に集中投資して数億円に上る資産を築いたスゴ腕の個人投資家だ。地元の名古屋で「名古屋キャッシュフローゲーム会」というゲーム要素を取り入れた勉強会を2009年から開催し、個人投資家の啓発にも尽力してきた(18年に名称を「名古屋勉強会」に変更。緊急事態宣言を受けて次回の開催は未定)。

「名古屋キャッシュフローゲーム会」でも、ゲームを通じた参加者の交流だけでなく、企業のIR担当者による会社説明や著名個人投資家の講演も実施してきた(撮影:上野英和)

18年からは株式投資の情報を提供するメールマガジン「億の近道」を発行しているNPO法人イノベーターズ・フォーラムや投資スクールなどを運営するリンクスリサーチと組み、東京都内でも勉強会を開催している。上場企業の経営者やIR担当者を招いて、参加者が聞きたいことを質問する形式だ。

開催時間は3~4時間で、参加費用は1人1000~1200円。首都圏以外から参加する人もいて、参加者の年齢層は幅広く、女性の参加者もいるという。初心者から経験豊富なベテラン、1億円を超える資産を運用するスゴ腕まで、参加者のレベルも多様だ。

20年3月にこの東京での勉強会の開催を中止し、同年6月にオンライン形式での勉強会を初めて実施した。同年8月にリアル形式の勉強会を再開した後も、会場の模様をネットで配信している。

「勉強会には関心があっても、子育て中で外出しにくかったり、遠方に住んでいて参加しづらかったりする人もいる。そうした人たちもオンラインで参加できるので喜ばれている。中には海外に住んでいる個人投資家が参加したこともあった」(アイルさん)

アイルさんの勉強会でネット配信に利用しているのは、ビデオ会議システムの「Zoom(ズーム)」。質問したい時は同システムのチャット機能を利用して書き込む。それを会場で主宰者が読み上げ、企業の経営者やIR担当者が回答するという段取りだ。20年11月に開いた勉強会では、リアルでの参加者は約30人に対してオンラインでの参加者は70人ほどに上ったという。

Zoomで配信された「東京勉強会」の一場面

アイルさんが主宰するキャッシュフローゲーム会と名古屋で人気を二分してきた「Kabu Berry」。06年から続くこの老舗勉強会も、コロナ禍を受けてリアルとオンラインの併用に切り替えた。

こちらも、企業の経営者やIR担当者を招いて質疑応答を行うスタイル。開催時間は毎回4時間程度。ネット配信にはZoomと動画投稿サイトの「YouTube(ユーチューブ)」を利用している。参加費は原則無料だが、「貸会議室の利用料として1人当たり1000~1500円いただくこともある」。主宰する40代の会社員投資家、yamaさん(ハンドルネーム)はこう語る。

yamaさんは、業績予想の上方修正がありそうな銘柄を先回りして買い、実際に修正されて値上がりした時に売るという投資法を実践。15~19年の5年間には前年末比40~50%増という好成績を続けて上げた実績を持つ。「リアルとオンラインでの参加者の比率は半々だ」と話す。

リアル開催にこだわる例も

18年から神奈川県藤沢市で開催されている「湘南投資勉強会」も、20年6月にネット配信だけの勉強会を初めて実施した。21年3月7日に開催する次の回は、リアルとネット配信を併用して開催する。こちらは上場企業のIR担当者との質疑応答と個別銘柄についてのディカッションの2本立てだ。回によってはどちらかだけの場合もある。

ネット配信で使うのはZoom。参加費は無料が基本だが、1000円ほどかかる場合もある。開催時間は4時間程度。個別銘柄のディスカッションは、まず5~6人のグループで行う。それぞれが興味のある銘柄についての分析結果を持ち寄り、有望かどうか意見を交わす。その後には参加者の関心が集まった銘柄に絞り込んで、参加者全員で議論する。

この勉強会の主宰者は、30代の会社員投資家、kenmoさん(ハンドルネーム)。成長株投資を実践し、投資を始めて6年で運用資産1億円超えを果たした。「参加者は30~40代が中心だ」とkenmoさんは語る。

一方、リアルでの開催にこだわって運営している勉強会もある。Kenmoさんに触発された20代の兼業投資家エースさん(同)が18年に名古屋市で始めた「KabuLink」だ。「20代の個人投資家を増やしたいと考えて開催している」とエースさんは説明する。

エースさんのブログに掲載されたコロナ対策の内容と参加者への注意喚起

銘柄についてのディスカッションを少人数で行うのが特色で、開催時間は4時間程度。参加費は銘柄についてのプレゼンテーションをする人は1000円、受講するだけの人は1500円だ。

「コロナ禍でオンライン開催を一度試したが、参加者が話を聞くだけの受け身になってしまっている印象で、反応が伝わりづらかった」とエースさん。20年8月にリアル形式での勉強会を再開し、これまで毎月1回の頻度で実施してきた。マスクの着用、手指の消毒、会場の換気、座席の間隔配置などコロナ対策を徹底しているという。

エースさんのようにリアル開催に回帰した例もある一方で、他の主宰者は「コロナが収束しても、リアルとオンラインの併用を続ける」という考えを示す。先述したようなネット配信の効用を実感したからだ。もっとも、エースさんが指摘した「ネット配信では参加者が受け身になりやすい」という点は、他の主宰者たちも同様に課題と感じている。「ネット配信でも参加者同士がコミュニケーションを交わせるようにするなど、臨場感を高める工夫を試していきたい」と口をそろえる。

まずはオンラインで参加するのも手

「やさしい株のはじめ方」など株式投資の情報を提供する複数のサイトを運営している兼業投資家の竹内弘樹さん。割安成長株投資で億単位の資産をつくったこのスゴ腕投資家も、個人投資家が主宰する勉強会に積極的に参加してきた。「個人投資家の勉強会やオフ会を通じて、株について話せる仲間ができた」(竹内さん)ことから、運営するサイトに勉強会やオフ会の開催情報を掲載している。

「リアルとオンラインにはそれぞれのメリットがある。リアルには、他の投資家と知り合える良さがある。オンラインは『お試し参加』が気軽にできる点が魅力だ」。竹内さんはこう指摘して次のようにアドバイスする。

「まずはオンラインで参加してみて、この勉強会は自分に合っていると判断できれば、リアルの勉強会に参加する。そういう使い分けをしてみるといいだろう」

(佐藤由紀子)

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