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「自分に合った稼ぎ方」を大切に生きる(山口真由)

マネーの履歴書 法学博士・山口真由さん

様々な分野の第一線で活躍する人のマネーヒストリーに迫る「マネーの履歴書」。今回は法学博士で信州大学特任准教授の山口真由さんに話を聞いた。2021年2月に『「ふつうの家族」にさようなら』を上梓。専門とする「家族法」に触れ、「ふつうの家族からは外れた存在にある」という自身の考え、さらには「家族とお金の関係性」にも内容を展開させている。

いわゆる「ふつう」と異なる生き方選ぶ

36歳になった頃、「その年でまだ結婚していないのか」という周囲の目が気になるようになりました。のんびりした父、てきぱきした母、要領のよい妹……と、北海道の実家ではそれこそ「ふつうの家族」で育った私。ですが、人生の選択を重ねるうちに、いつの間にか「ふつう」からはみ出していたのです。

「家族とお金の関係性」について強く意識するようになったきっかけは、32歳の時の米国留学だ。
やまぐち・まゆ 1983年生まれ。2006年に東京大学卒業後、財務省に入省。08年に退官。09年から15年まで弁護士として大手法律事務所に勤務。15年米ハーバード大学ロースクール入学、16年修了。現在は日米の家族法研究を専門とする。(撮影/工藤朋子)

米国では、「成人するまでは親が子供のお金の面倒を見るけれど、その後は子供が自分でお金を管理する」のが基本でした。お金持ちの家庭であっても、「大学までは学費を出すけれど、院からはローンを組むなり、自分で工面してね」という場合が多いのです。家計について、日本は「家」を大切にするのに対し、米国は「個」を大切にすると気付きました。

日本は「家産を引き継いでいく」という考えが根強いのが特徴です。「子供が親の介護にかかる費用を出すのは当たり前」という人も多いですが、「子供は親のお金を受け継ぐから、その"前払い"」という感覚が背景にあると思います。

日米どちらが正しい、ということはありません。ただ、日本の「家」の考え方は、「『ふつうの家族』をつくらなければいけない」というプレッシャーを生み出しているのでは、と思います。結婚せず子供を持たないということは、次世代をつくらないということで、「家」を途絶えさせることになるのです。

日本人が投資になじみが薄いのも、「家」の影響があると思っています。代々引き継いでいくべきお金を、一個人がリスクを取って投資で増やそうとするのは難しい。

自身も、投資との向き合い方を見つめ直しているところだという。

リーマン・ショックの時、保有する投資信託が3分の1まで一気に値下がりしたのを見て、ものすごく落ち込んだことを覚えています。米国の水道会社など、インフラ関連企業に投資するファンドでした。証券会社の方に薦められるがままに、買ったものです。

その経験から、自分が投資で苦手なことを3つ知りました。「全く思い入れがない企業に投資する」「短期でリターンを求める」「損切りをする」ということです。ちなみに、当時の投資信託はまだ持っています(笑)。

今はリスクを取っても本当に応援したいと思えるところに、長期でリターンを求める投資が理想だと思っています。まだ動き出せていないのですが。

家計管理についての考えも、変わりつつある。

収入・支出の規模の、ベストを探っている状態です。33歳で留学から帰国した時は、本の印税などしか収入源がなく、収入が8万円の月もありました。そこから現在にかけてどれくらい収入が増えたのかを振り返り、「私はどのラインから満ち足りるのか」ということを見つめ直しました。その水準を、コンスタントに稼いでいけるようになりたいです。

「自分のお金の所在は『家』か『個』か」というのは、人生の選択によって時折変わるものだと思います。「ふつうの家族」像も、本当は明確な形などないのです。最近つくづく実感したのは、「私は働きたい人間だ」ということ。不労所得よりも労働でお金を得たい。大切なのは、自分が満足できる方法でお金を稼ぐことかもしれません。

山口真由さんの「マネーのターニングポイント」


●小学生の時に初めてした被災地への寄付
小学生の時は月500円のお小遣い制だった。1993年に発生した北海道南西沖地震のニュースを見て、"1カ月分の給料"に当たる500円を寄付した。「当時の気持ちをよく覚えている。『お金を投じたい』と心から思えるところにお金を使うのは大切だと思う」
●「家族とお金」についての考え方が変わった米国留学
ハーバード大学のロースクールで「家族法」を学んだ。卵子凍結や精子提供といったビジネスについても学び、「家族とお金」について考える機会も多かった。

(聞き手は大松佳代)

[日経マネー2021年7月号の記事を再構成]

日経マネー 2021年7月号 大化け期待のNEXT成長株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/5/20)
価格 : 750円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

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