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社会人の学び直し オンライン活用で費用抑える

デジタル人材の不足などを背景に、社会人の「リスキリング(学び直し)」への関心が高まっている。総務省がまとめた2021年の情報通信白書によると、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める際の課題として「人材不足」を挙げた日本企業は53.1%にのぼり、米国の27.2%を大きく上回る。働き手にとっても、企業の人材ニーズに対応しうるスキルの取得は重要性を増すが、働きながらの学び直しは時間やコストなどぶつかる壁も多い。オンラインサービスや公的支援制度を上手に利用して、効率的かつコストパフォーマンスの良い学び直しを実現したい。

プログラミング言語を学び再就職を果たす

「仕事につながる技術を身に付けなくては」。埼玉県に住む中園剛征さん(35)が学び直しを決意したのは20年8月。コロナ禍による業績悪化を理由に、派遣切りにあったことがきっかけだ。同年12月ごろから本腰を入れてプログラミング言語の独学を開始。「全く知識がない状態からのスタート」(中園さん)だったが、約半年学び続け、21年7月にウェブ制作会社のエンジニアとしての就職を果たした。

関連書籍を読み、就職活動で必要となるウェブページのポートフォリオ(作品集)を作っていく過程で、「どうしても分からない疑問にぶつかった」と中園さん。そこで見つけたのが、クラウドソーシング大手ランサーズが手掛けるオンラインサービス「MENTA」だ。特定のスキルを学びたい人と、それを教えたい人を結びつけるサービスで、中園さんはプログラミングに詳しいメンター(助言者)を利用。週1時間のビデオ相談で、本では理解できなかった細かい不明点について教えてもらい、疑問を解決していった。指導経験が浅い分、格安な料金を提示しているメンターを選んだため、費用は月3000円で済んだ。

こうしたサービスをうまく活用することで、中園さんの学び直しにかかった総費用は書籍代なども合わせて4万円程度だという。「派遣でウェブ制作会社に勤めていたが、今思えば、知識がなかったからこそ仕事がつらいと感じていた面もあったと思う。勉強すればやりがいも高まると分かった」と中園さん。今後の学びにも意欲的だ。

「コロナ禍により在宅時間が増えたことも相まって、学び直し需要は高まっている」とランサーズの担当者。MENTAのユーザー数(教わる側)は3万人と、「20年10月から約2倍の水準に達した」という。

企業も社員のリスキリングをサポート

学び直しの費用を企業が負担して、社員のスキル向上を支援するサービスも生まれている。人材大手パーソルは今年7月、法人向けのリスキリング支援サービス「学びのコーチ」を開始した。主に企業に勤めるエンジニアが対象で、米ユーデミーなどのプログラミング講座を使った学習計画を立てたり、その進捗具合を見たりする"コーチ"を提供するものだ。費用は1人あたり12万円程度(契約期間3カ月、教材代・導入費除く)で、完全オンライン。主にIT(情報技術)・通信関連企業が利用している。

同サービスの構想が生まれたのは20年3月ごろ。外出自粛により、オンラインサービスの普及が見込めるようになったことがきっかけだ。対面であれば費用がかさみがちなコーチングも、ビデオ通話などを利用することで価格を抑えることが可能になる。「働きながらの学び直しでは、休日に一気に勉強するより、毎日一定量の学習をいかにぶれずに習慣化させるかがポイント。学習計画の助言をしてくれるコーチを付けることは、目標達成の確度を上げる助けとなる」(サービス責任者の柿内秀賢さん)。現在は法人向けのみで、会社が購入して複数の社員に提供するという形だが、「個人用にも提供してほしい」との要望がありベータ版も試用中だという。

大学での学び直しも

社会人が大学などで学び直す「リカレント」の注目度も高まっている。コロナ禍による就職難もあり、学びにかかる費用や学習後のキャリア相談を国が支援する動きもある。文部科学省による「就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業」では、全国の40大学が2~6カ月程度の学習プログラムを実施。テキスト代を除く受講料は無料だ。千葉大学や青山学院大学などが参加し、21年7月ごろから随時募集を開始している(一部は募集を終了)。学習終了時にはインターンシップなどの就職支援も手掛ける。

文科省が19年に立ち上げた社会人向け学び直し情報サイト「マナパス」は、目的にかなう学校や短期講座、費用などが調べられるプラットフォームを提供する。先述のような国の支援制度についての情報も調べられるほか、費用や取得したいスキル、奨学金制度の有無といった条件付きの検索も可能だ。同サイトの21年4月のアクセス数は、前年同月比で3.4倍に増加。「コロナ禍による雇用不安で、職につながる学習への意欲が増しているのではないか」とマナパスの担当者は話す。

公的な支援制度も活用

学び直しをする際、活用を検討したいのが公的な支援制度だ。「教育訓練給付」は、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講した際、費用の一部が支給される制度。「一般教育訓練給付」「特定一般教育訓練給付」「専門実践教育訓練給付」の3種類ある。

例えば「一般教育訓練給付」では、TOEICの得点向上やMOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)といった幅広い職業に役立つ資格の習得を目指す講座などが対象。講座修了後、費用の20%が支給される(上限は10万円)。初めて受給する場合は、受講開始日の時点で雇用保険の加入期間が1年以上の人が対象だ(2回目以降は3年以上、かつ、前回の受給時より3年以上経過していることが条件)。受講修了日の翌日から1カ月以内に申請手続きを行う必要がある。

「特定一般教育訓練給付」は早期のキャリア形成のためのスキル取得を支援。「専門実践教育訓練給付」は時間をかけて専門的なスキルを身に付けたい人が対象だ。それぞれの対象講座や支給の条件などは、厚生労働省のサイトで確認できる。

(大松佳代)

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