含み損銘柄は即損切り 「利大損小」ルールを徹底  - 日本経済新聞
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含み損銘柄は即損切り 「利大損小」ルールを徹底 

スゴ腕投資家に学ぶ「売り」の技術(下)

スゴ腕個人投資家は、株式投資で利益確定や損切りをどのように行っているのか。「売り」の考え方やテクニックを紹介する「スゴ腕投資家に学ぶ『売り』の技術」。後半は、成長株投資で3億円の資産を築いたはっしゃんさん(ハンドルネーム)に話を聞いた。

――損切りについてどのように考えていますか。

損切りした後に株価が上がってしまい、「損切りで失敗した」と後悔する声を聞くことがあります。しかし、損切りの判断が間違っていることはありません。含み損が出たら速やかに損切りする方がいい。「損切りは常に正しい」のです。失敗したなら、それは損切りではなく、買う時の判断が間違っているのだと思います。

買う銘柄が悪いのか、タイミングが悪いのか。しっかり分析して自分のスキル向上につなげ、次の失敗を防ぐことが肝心です。

――どのようなルールで銘柄を売っていますか。

大きな運用方針は、「利大損小」です。「損小」については、1円でも含み損がある銘柄は損切りすることにしています。売った後も変わらず魅力的な銘柄であれば、買い直せばいいだけですから。そして、含み益の銘柄はできるだけ利益確定せずに長期保有することで、「利大」を狙います。

こうした方針を採っているのは、私が成長株投資に特化しているからです。バリュー株投資と成長株投資では、損切りの重要性が異なってくると考えています(下図)。

バリュー投資の場合、ミスプライスを狙って割安な価格で買い、フェアバリュー(適正価値)に戻るのをじっと待つ戦略が基本です。資産価値の前提が変わらなければ、含み損が出ても損切りする必要はありません。

一方、成長株投資では、成長期待で割高の株価を買っていく投資になります。企業の成長によって、理論株価等の指標が後から上昇してくるイメージです。このため、業績のチェックと損切りは必須になります。

成長期待が崩れた含み損銘柄を、株価が安くなったからと言って持ち続けると、大けがをする恐れがあります。成長株投資をやっていたはずの人が、含み損が出た途端にバリュー投資の考えに揺れてしまうのが、典型的な失敗パターンだと思います。

3年で株価2倍が目安

――具体的な運用方法を教えてください。

成長が続く限り3年間は持ち続ける「3年ルール」や、含み損が出たら即損切りする「含み損ゼロ」などの考えを組み合わせて、自然と「利大損小」が実践できる運用を行っています(下図)。

投資する銘柄は、独自に算出した理論株価などを基準に選びます。そして、決算発表前や月次指標の発表前など、ファンダメンタルズが変わるタイミングを狙って買いを入れます。買った後に、決算発表などを受けて株価が上昇すれば、そのまま長期ホールド。業績が好調で理論株価のさらなる上昇が期待できるなら、どんどん買い増しします。

長期保有の目安は、「3年で株価2倍」。これがクリアできた銘柄は、最終的に「10年で株価10倍以上」を目標に保有を継続します。3年で株価2倍に届かなかった銘柄や、途中で成長が鈍化した銘柄は売却。もちろん、含み損になってしまった銘柄は損切りです。

このサイクルを繰り返すと、自然と利大損小が実践できます。ポートフォリオには、良い銘柄だけがどんどん残っていくので、効果の高さを実感できます。

――銘柄の選び方は。

過去5年間増収増益で、今後もそれが継続し得るビジネスモデルを持つ銘柄が候補です。さらに、過去の理論株価の推移をチェックし、理論株価が右上がりで伸びていれば有望です。

例えば、「業務スーパー」を手掛ける神戸物産は、2019年ごろから業績の伸びに連動して理論株価が上昇。すると、次の成長を期待して株価も一段と上昇、といった形で、株価と理論株価が共に上がっていきました。こうした銘柄をできるだけ長期保有するのがいいと考えています。

(市田憲司)

[日経マネー2021年12月号の記事を再構成]

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