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返さなくていい奨学金、受けられる人数と金額が増加

「奨学金 上手な借り方 新常識」から(下)

写真はイメージ=PIXTA

今回のコロナ禍で世帯の収入が減少し、大学進学をあきらめることを考えている人もいるかもしれない。だが国もこの問題には奨学金制度の見直しで対策を用意しており、奨学金の新制度をうまく利用すればお金のことで進学をあきらめる必要は少なくなってきている。では、新制度はどうなっていて高校生や大学生のいる世帯は奨学金をどう利用すればいいのか。その答えをまとめたのが、ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんが4月に出版した新書「緊急対応版 奨学金 上手な借り方 新常識」だ。前回に引き続き同書の序章の一部を転載しながら、奨学金の上手な借り方を考える。

大学をあきらめなくていい理由4

「返さなくていい」給付型奨学金を受けられる人数が大幅に増加

「緊急対応版 奨学金 上手な借り方 新常識」竹下さくら著・青春出版社(税込み1210円)

2020年から、「授業料・入学金の減免+給付型奨学金」で学生を支援する「高等教育の修学支援新制度」がスタートしたことは前回(上)で説明しました。

この新しい制度のもとで、「返さなくていい」給付型奨学金を受け取れる学生の人数が大幅に増加しています。一定の条件を満たせば、申し込んだ「全員」が給付型を受け取れるようになったのです。

一定の条件とは、「家計の収入」と「学力」の2つです。

「家計の収入」については、細かな条件はあるものの、「住民税非課税世帯、もしくは、それに準ずる世帯であること」が条件です。両親・本人・中学生の家族4人世帯の場合の目安でいえば、年収約380万円までが対象になるイメージです。

学力については「高等学校等における全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること」、もしくは「将来、社会で自立し、及び活躍する目標をもって、進学しようとする大学等における学修意欲を有すること」の、「どちらかに該当すること」とされています。「5段階評価で3.5以上」でなくとも、「学ぶ意欲」があれば基準をクリアできるため、高校までの学力をもとにした基準は事実上「ない」と考えられるかもしれません。

つまり、「住民税非課税世帯か、それに準ずる世帯」であれば、申し込めば「全員」が給付型を受け取ることができるようになったのです。

文部科学省「高等教育の修学支援新制度」資料より作成

大学をあきらめなくていい理由5

「返さなくていい」給付型奨学金で受け取れる金額が大幅アップ

それでは、給付型を受けられる場合、毎月いくらまで受け取れるのでしょうか。新しい制度のもとでは、給付型の支給額も大幅にアップしています。

給付型では、「世帯の収入」によって受け取れる金額が決まってきます。概要を示すと、4人世帯(両親、本人、弟あるいは妹)で生計維持者が給与所得者の場合、世帯の収入が約270万円までの「第Ⅰ区分」、約300万円までの「第Ⅱ区分」、約380万円までの「第Ⅲ区分」の3つに分類され、それぞれの区分で受け取れる金額が細かく決められています。

例えば、世帯の年収が約250万円の第Ⅰ区分の学生が、実家から離れて国公立大学に通うケースでは、条件が「第Ⅰ区分・国公立大学・自宅外」となり、毎月6万6700円、年間80万400円を受け取れます。以前の給付型が「国公立大学・自宅外」では毎月3万円、年間36万円だったのと比べると2~3倍と大幅に増額されているのがわかります。

給付型で受け取れる支給額は、「第Ⅰ区分」の金額を上限に、第Ⅱ区分でその「3分の2」、第Ⅲ区分で「3分の1」を受け取れるように決められています。

例えば、世帯の年収が290万円の第Ⅱ区分で、「国公立大学・自宅外」の学生であれば、第Ⅰ区分の6万6700円の3分の2=毎月4万4500円、年間53万4000円を受け取れます。

JASSO 給付型奨学金支給額より作成

大学をあきらめなくていい理由6

入学金や授業料を「免除」「減額」してくれる制度も新たにスタート

給付型を受け取れる学生の人数を増やし、支給額をアップしたのと合わせて、大学などに支払う入学金や授業料を「免除(払わなくていい)」してくれたり、「減額」してくれたりする新制度もスタートしました。

(上)の「大学をあきらめなくていい理由1」でも簡単に説明した「高等教育の修学支援新制度」の「授業料・入学金の減免+給付型奨学金」です。ここでは詳しく説明します。

この新制度は、「給付型の対象者となった学生」が、「入学が決まった大学などに自ら申請(自己申告)する」ことで、入学金や授業料の免除や減額を受けられるものです。

免除や減額される金額は、給付型の支給額と同じように、世帯の収入が「第Ⅰ区分」、「第Ⅱ区分」、「第Ⅲ区分」のどれに該当するか、また、進学先の大学が国公立か私立か、自宅から通うのか自宅外から通うのかといった条件によって決められています。

この制度を利用すれば、例えば、住民税非課税世帯の第Ⅰ区分で、国公立大学に進学した学生なら、給付される奨学金と合わせて、初年度で最大約162万円、私立大学に進学した学生なら最大で約187万円もの支援を受けられます。

この金額は、これまでの奨学金制度での「私立大学に自宅外から通う学生」が「4年間で受け取る最大額=192万円」に匹敵するほどの金額です。

つまり、従来の4年分の給付型の支給額と同程度の支援を「1年間で」受けられるようになったのです。

これから大学への進学を考える高校生もぜひ、この新制度を利用できるか検討しましょう。

文部科学省「高等教育の修学支援新制度」資料より作成
文部科学省「高等教育の修学支援新制度」資料より作成

奨学金は「早く動いた人」ほど有利に活用できる


新制度はいつまで続く? 早め早めの準備が功を奏する

ここまで、奨学金制度が大きく変わり、「お金のことで大学進学をあきらめる」必要がなくなったことを説明してきました。あわせて、いま、高校3年でこれから進学を考えている人が、大学4年間で必要となるお金を準備するなら、やはり従来の奨学金制度をきちんと理解し、有効活用することが大切です。

従来の奨学金を上手に活用するには、何よりも「きちんと準備する」ことが重要。多くの高校生やその親は、「まだ志望校も決まっていない」といったことから、奨学金について真剣に考えるのをつい「後回し」にしてしまうことがあるようです。

ところが、「志望校が決まっていなくても」、「進学するかどうかも決まっていなくても」、申し込めるのが奨学金です。しかも、申し込んだ内容は、大学に進学後に手続きをする段階で、辞退したり、金額や返還方式を変更したりすることが可能です。

例えば、経済的に安心して大学に進学するために、ぜひとも活用したい給付型や貸与型の第一種は、高校生で申し込めるチャンスは毎年4月〜6月、自分(お子さん)が通っている高校を通じて申し込む第1回「予約採用」だけです。

つまり、ほとんどの高校生が志望校も固まっていないときに、給付型や貸与型の第一種など「有利な奨学金」の申し込みが始まり、そして締め切られてしまうのです。進学前にお金の心配を少しでも軽くしておくには、高校生のときから早めに準備して、自分にとって有利な奨学金を受けられるように動くことがとても重要なのです。

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