業績悪化株にも目配り 順張りと逆張りの両方を実践
スゴ腕個人投資家の決算活用術(中)

名古屋市で2006年から開催されている個人投資家の交流会「Kabu Berry」。この人気イベントを主宰している会社員投資家のyamaさん(ハンドルネーム)は、成長株投資で資産を増やしてきた。コロナショックが起きる前には、5年連続で前年末比40~50%増のリターンを上げた。

「ブログに上場企業の決算の分析記事を書くうちに、業績予想を上方修正しそうな銘柄に気づくようになった。それを利用した投資を手掛けて成績が改善した」
まず上方修正のありそうな銘柄を先回りして買う。実際に修正が出て、それを好感した投資家の買いで値上がりしたら売る。「勝率は3割ほど。株価が2倍以上になる銘柄が1年に2つほど出て、トータルで利益を上げてきた」
コロナショックに直面した20年は好成績を上げられなかった。21 年の運用成績も9月上旬時点で前年末比約12%増にとどまり、試行錯誤しているという。

直近四半期決算の分析では、3つの傾向に注目した。1つ目の傾向は、コロナ禍の影響で不振が続くとみられている業界の中に、意外な好業績を残す企業があったことだ。
例えばデコルテ・ホールディングス。結婚式関連のビジネスに強い逆風が吹く中、結婚式の代替としてフォトウエディング(写真婚)が活況を呈した。ホテルや会議室の時間貸しサービスを手掛けるスペースマーケットも、宿泊施設や貸会議室の需要が低迷する中で大幅な増益を計上した。
予想通りが失望招く例も
2つ目は、決算に対する過剰反応で売られて大きく値下がりした銘柄が目立ったことだ。例えばKaizen Platform。8月13日に発表した第2四半期(1~6月期)決算の営業利益は3000万円。第1四半期(1~3月期)から半減した。これが嫌気され、株価は翌営業日の8月16日に急落した。

これは過剰反応だとyamaさんはみる。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する同社の業績は4~6月に落ち込み、9月から翌年の3月にかけて回復する季節特性がある。「今期もこれから改善していき、見直し買いで値上がりする可能性が高い」と指摘する。
一方、予想通りの結果にもかかわらず、失望売りが起きた例もある。ネット通販の物流を代行するイー・ロジットだ。8月16日に発表した第1四半期(4~6月期)決算は、最終損益が2700万円の赤字。実はこれを会社は予言していた。5月に発表した前期決算の説明資料などに、今期上半期は先行投資で赤字になるという予想を明記していたのだ。それでも、決算発表の翌日に株価は急落した。

「第1四半期決算では同期に取引先が33社増え、3カ月で前年度実績(31社増)を上回ったという朗報もあった。通期は会社の予想通り増益になる公算が大きい」
3つ目の傾向は、20年度はコロナ禍の影響を受けていなかったのに、21年度に一転してコロナ禍の影響で業績が悪化したとする企業が散見されたことだ。
「大半がコロナ禍は方便で、実際には成長が陰り始めたのだろう。もしコロナ禍が真因の会社があれば、収束に伴う反発をこれから狙える」とyamaさんは話す。
(中野目純一)
[日経マネー2021年11月号の記事を再構成]
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