資産2億円超のエキスパート、上場後購入でも利益狙う
スゴ腕投資家のIPO投資戦略パート2(上)

投資ブロガーの会社員投資家JACKさん(ハンドルネーム)は、バーテンダーや予備校講師など、様々な職を経験した異色の経歴の持ち主だ。株式投資だけでなく、不動産投資やFX(外国為替証拠金)取引なども手掛け、2億円以上の資産を築いた。
1.6倍高の初値で売却益
JACKさんが最も得意とするのが、企業のIPO(新規株式公開)関連の投資だ。有望企業がIPOで上場すると、買いが集まって、公開価格(売り出し価格)の何倍もの初値が付くケースが少なくない。そこで初値で売って利益を上げることを狙って、IPOの前の公募段階で株を仕込む。

そのために、JACKさんは70もの証券口座を開設している。発行株数よりも注文株数が多い場合には抽選が行われ、それに当たらないとIPOの前に株を手に入れることができないからだ。そこで70もの口座を開いて、抽選に当たる確率を高めている。
さらにJACKさんは、IPO銘柄を巡る次の2つの取引も手掛ける。一つは、上場後に株価が公開価格を割った後に購入し、反発して上昇した時に売却益を上げる取引。もう一つは、新規上場企業の関連会社や取引先の株の連れ高で売却益を手にする取引だ。
今年は4月末までに31社がIPOで上場し、全てで初値が公開価格を上回った。JACKさんは、3月に上場したSharing Innovationsの株の抽選に当たって上場前に購入した。
同社は、米CRM(顧客情報管理)ソフト大手セールスフォース・ドットコムのクラウドサービスを活用したシステム開発を手掛けている。公開価格の約1.6倍の初値が付き、JACKさんは初値で売って大きな利益を上げることに成功した。
株価指数の組み入れに着目
一方、かまぼこなどの水産練り製品や中華総菜などの製造を手掛ける紀文食品とエネルギー関連のエンジニアリングを手掛けるテスホールディングスは初値で購入した。これは、東証1部に新規上場した銘柄の価格が直後に上昇する傾向に着目した取引だ。
値上がりするのは、上場の1カ月後にTOPIX(東証株価指数)に組み込まれるため。TOPIXに連動する投資信託などを売買する機関投資家の買いが入り、株価が上昇する。JACKさんは紀文食品とテスホールディングスの売買で狙い通りに売却益を上げた。

上場済み銘柄の売買も注力
「IPO銘柄の売買が活発で初値が公開価格を上回るケースが続いているので、今後も公募段階での購入に積極的に応募していく」とJACKさんは話す。
その一方で注力するのが、上場後の上昇が一服して株価が下がった銘柄の売買だ。今年に新規上場した銘柄では、医薬品の原薬の製造・販売などを手掛ける室町ケミカルや基礎化粧品を製造・販売するプレミアアンチエイジングを既に購入した。
室町ケミカルは、21年5月期の第3四半期決算が好調だったにもかかわらず、株価が上向いていない点に着目した。プレミアアンチエイジングは最低投資価格が100万円を超えている。株式分割で最低投資価格が下がって買いやすくなったり、株主優待が新設されたりすれば、人気が出て値上がりすると期待する。
この他、価格が手ごろになれば購入を検討したい銘柄として、家電製品を開発・販売するバルミューダや会員制転職サービスを展開するビジョナルを挙げる。
(中野目純一)
[日経マネー2021年7月号の記事を再構]
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