/

若者の投資デビュー、老後不安とYouTubeが後押し?

コロナ禍を機に株式投資を始める人が増えている。ネット証券大手5社の2020年1~9月の新規口座開設件数は、前年同期比で約2倍となった。コロナ禍に伴う給付金や、在宅機会が多くなったことが背景にある。

「新人投資家」の急増は、スマートフォンアプリ「ロビンフッド」による投資が普及する米国とも共通する現象だ。ただ、日本の新人投資家たちの投資先を分析すると、投機的な取引を好む傾向がある米国の個人投資家とは異なる投資傾向が見て取れる。

米国株投信人気の背景に「老後不安」

「若い人の投資は思っていたより手堅い」。ベテラン個人投資家のたぱぞうさん(ハンドルネーム)はこう指摘する。主に米国株投資を手掛けるたぱぞうさんは「FIRE(Financial Independence, Retire Early、経済的に自立し早期退職すること)」に到達した個人投資家として知られる。このため、新人投資家からSNSなどを通じ、「どうすればFIREに到達できるか」といった質問を受けることが多いという。

やり取りをする中で気付いたのは、若者を中心とする新人投資家たちの多くが将来に対する不安を抱えていることだ。「投資についても、大きな損失が出るリスクがあるボラティリティー(変動率)の高い成長株投資ではなく、米国株のインデックス投信などにじっくり積み立てて資産をつくりたいとする人が目立つ印象だ」とたぱぞうさんは話す。

日経マネーが20年に実施した「個人投資家調査」でも、新人投資家の老後不安は鮮明だ。20年に投資を始めた人(3777人)にその動機を聞いたところ、50.7%(複数回答、以下同)が「自分で老後の資金を確保したいと考えたから」と答えた。「投資で儲けたい」(50.6%)も少なくないが、米国の「ロビンフッダー」のようにリスクを取って成長株を買いに向かう動きは乏しい。

ネット証券が開示している個人投資家の投資動向にも、堅実な投資傾向が表れている。楽天証券で個人投資家がつみたてNISA(少額投資非課税制度)を使って購入した商品の売買ランキングを見ると、上位には米国や全世界の株式に投資するインデックス投信が並んだ(下表)。楽天証券の長谷川卓弥アセットビジネス事業部長は、「20~30代の若年層や女性を中心に、コツコツ資産形成をしていこうとする傾向が見える」と指摘する。SBI証券の売買ランキングを見ても、米S&P500種株価指数や米ナスダック総合株価指数など米株価指数に連動する上場投資信託(ETF)が上位に入った。

投資系ユーチューバーの影響も?

米国株投信人気の背景には、若年層に人気の投資系ユーチューバーの影響もあるようだ。日経マネーの個人投資家調査で、新人投資家が影響を受けたメディアを聞いたところユーチューバーと答えた人が15%と、本(16.4%)に次いで2番目に多かった。

投資系ユーチューバーの人気動画は、資産形成の基礎を教えるものが多い。特に米国株投信への積み立て投資を勧める動画が注目を集めている。長期的に米国株の上昇傾向が続いているためで、「長期間かけて資産形成をしようとする上では、合理的な投資対象とは言える」(たぱぞうさん)。

新人投資家が投資する個別株にも、ユーチューバーの影響が透けて見える。株主優待銘柄を中心に株価動向を分析する動画を配信するわっけさん(ハンドルネーム)は、「高配当銘柄や優待銘柄を取り上げる動画は、再生回数が伸びやすい傾向がある」と話す。実際、SBI証券で20年に新規口座開設した投資家が売買した日本株の売買高ランキングを見ると、高配当株や優待株が目立った(下表)。

SBI証券の鈴木英之投資情報部長は、「株価が割安かどうかという意識は、新人投資家にはさほどないようだ」と指摘する。業績動向や需給、株価指標などを分析して買うのではなく、「ユーチューバーが紹介するものやSNSで話題のものを買ってみる」という傾向が浮かび上がる。

「一本足打法」には危うさも

早いうちから資産形成を始める層が増えていることは歓迎しつつも、「米国株への積み立て投資だけやっておけばいいという風潮は危険だ」と警鐘を鳴らすのは楽天証券の長谷川さん。新人投資家には、米国株投信にだけ投資をして債券や他国の株式に資金を振り向けていない人が少なくないという。

実際、新人投資家がつみたてNISAで投資している投信は、米国を中心とした先進国株のインデックス投信に偏っており、債券や金といった他のアセットクラスの投信はランキング上位には登場しない。投資対象の分散を利かせていないため、ポートフォリオは下落相場に弱くなっている可能性がある。

20年3月のコロナショック以降、株式市場の好調が続いている。その流れに乗った新人投資家の中には、既に大きなリターンを手にしている人も少なくないようだ。ただ、リスク分散が利いていないポートフォリオのままでは、相場急落局面で大きな損失を被る可能性もある。「積み立て投資による時間分散のみならず、資産分散の重要性といった投資の基本セオリーを学ぶ姿勢が重要だ」(長谷川さん)

(川路洋助)

日経マネー 2021年3月号 優待&高配当株 2021年の稼ぎ方

著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/1/21)
価格 : 750円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ: Amazon.co.jp 楽天ブックス

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン