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株乱高下の直前に警戒 億万投資家は荒れ相場対策に動く

変調相場への対応を聞く(下)

3月2日の東京株式市場は続伸で始まり、日経平均株価が3万円の大台の回復にあと4円まで迫った。しかし後場には一時300円超下げる荒れた展開となり、反落で終わった
前週末から乱高下が続き、方向感の定まらない日本株相場。変調をどう受け止め、どう投資していくべきか。前編では気鋭の行動経済学者、小幡績慶応義塾大学准教授の見解を紹介したが、続く後編では株式投資で1億円を超える資産を築いたスゴ腕個人投資家たちの対応を詳しく見ていく。

「投資家が強気に傾きすぎている。いつ相場が崩れてもおかしくないので、準備運動を進めている」

米長期金利の上昇で世界同時株安が起き、日経平均株価が1200円超下落した2月26日。その前日に取材した相手はこう明かした。40代の専業投資家、DUKE。さん(ハンドルネーム)。成長企業の株を年初来高値や昨年来高値といった新高値を更新した時点で買う「新高値ブレイク投資」と呼ぶ手法を得意とするスゴ腕投資家だ。

大手企業に勤めていたが、「45歳までに3億円」という目標を実現し、アーリーリタイアを果たした。現在は投資塾も主宰している。

保有スタンスや銘柄を変更

DUKE。さんは、信用取引で証券会社から資金を借りて株を買った投資家の含み損益の状況を示す「信用評価損益率」が高い水準にあることや、コロナショック後の米国株の上昇をリードしてきたハイテク企業株が多く組み入れられている米ナスダック総合株価指数が軟調に転じたことなどに注目。日米ともに相場が過熱していると警戒を強めた。

「2~3年のタームでは上昇が続くという見方は変わらないが、短期では大きな調整がいつ起きても不思議ではないと考えた。株のポジション(持ち高)を小さくして、保有スタンスも引っ張ることにこだわらず、買値から20%くらい上昇したら売却して利益を確定するという形に変更した」

さらに、保有する銘柄もコロナ禍の収束による景気拡大の恩恵を受けて大きく上昇しそうなイベント運営会社や旅行会社、外食企業などの株にシフトさせた。

「コロナショックで株価が半分以下になったので、下落するリスクが少ない。ショック前の株価に戻るだけで2倍高を取れる」

DUKE。さんはこう説明し、そうした銘柄の具体例として、イベントディスプレー最大手の乃村工芸社、飲食業向けの人材紹介サービスを展開するクックビズ、結婚式の企画・運営を手掛けるテイクアンドギヴ・ニーズを挙げる。「ただし私はこの3銘柄は保有しておらず、同じジャンルの別の銘柄を持っている」

取引の規模を縮小

同様に2月26日の急落前に警戒を強めて手を打ったのが、50代の会社員投資家、奥山月仁さん(ハンドルネーム)だ。中小型の成長株を割安な価格で購入して長期保有する手法を主に手掛け、数億円に上る資産を築いたスゴ腕投資家である。2月26日の急落の主因となった米長期金利の上昇には20年11月の段階で既に注視し始めており、次のように語っていた。

「コロナ禍が収束したら、大規模な金融緩和によってもたらされた相場の上昇に弾みがつくと考えるのは危険。収束で景気が回復し、緩和から引き締めに転じる可能性があるからだ。そうなると相場全体が下落する。株を持ち続けていると下落相場に巻き込まれて痛い目に遭うだろう。21年は金利の動向を注視して、上昇したら株を売却して現金を増やしていくことが必要だ。そうすれば、下落相場で売られた有望株を仕込むこともできる」

折しも、コロナショック後に人気化した中小型の成長株の価格がおしなべて割高になる一方で、景気の動向に業績が左右されやすい大型の景気敏感株に割安な銘柄が多く見られた。そこで奥山さんは、中小型株偏重から素材メーカーの三井金属や業績不振に陥っている日産自動車パナソニックといった大型株へのシフトを進めた。

景気の回復に伴って大きく値上がりすることが期待できる点に加えて、相場全体が下落したとしても下落幅が小さく、売買高が大きくて売りやすい点にも注目した。いわば値上がり益狙いと下落対策の両構えの態勢をとったわけだ。

ところが、米長期金利の指標である米10年物国債の利回りは1月上旬まで1%を下回って推移する。奥山さんは強気に傾き、信用取引も使って投資の規模を拡大した。だが、1月末に米国でゲームストップ株を巡る騒動が起きたのを見て、手綱を再び引き締めた。

「あの騒動でそれまで総楽観状態だった投資家が相場のリスクを意識せざるを得なくなると思った。リスクが高まれば株価のボラティリティー(変動幅)が大きくなって、相場全体の急落も起きやすくなる。そこで信用取引分を手じまって、取引の規模を縮小した」

上下両方の相場に備える

「上昇相場と下落相場の兆しを捉える自信が私にはない。だから、保有株のポートフォリオ(持ち高)をどちらの相場になってもいいような形にする」

こうした考えで19年から独特のポートフォリオを組んできたのが、40代の会社員投資家、御発注さん(ハンドルネーム)だ。日本の個別株の売買で利益を重ねて、30代後半で運用資産を約3億円に増やした。10年に起こした誤発注の失敗を忘れないために、ハンドルネームを今のものに改めたエピソードでも知られる。

独特のポートフォリオとは、利益の伸びに比べて株価が割安な収益バリュー(割安)株、高配当株・優待株、現金を3分の1ずつ持つというもの。上げ相場と下げ相場のどちらに転んでもいい形を考え抜いた末、この構成にした。

高配当株と優待株を3分の1まで組み入れることにした理由は主に2つ。一つは、配当と株主優待というインカムゲイン(定期収入)が得られること。もう一つは、配当や株主優待のない銘柄に比べて価格が下がりにくいことだ。

コロナショックによる暴落で割安になった銘柄を買い進んだことから、20年には一時、運用資産の全てを株で持つ状態になった。その後は持ち株の一部を売却し、現金の割合を15%程度まで戻したという。

2月26日の急落は「ただの押し目」と見て静観した。持ち株の売却を進めて現金を増やし、本格的な暴落が起きたらPBR(株価純資産倍率)の低い銘柄を仕込むという方針を維持する考えだ。

(中野目純一)

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