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焦点は21年度の業績予想 失望売りなら有望株を買い増す

プロとスゴ腕に学ぶ企業決算の読解術(中)

本格化している3月期企業の決算発表。コロナショックの影響を大きく受けている企業も多い中、どんな点に注意して決算の数字を読み解くべきか。今回は、株式投資で数億円に上る資産を築いた会社員投資家の姿勢とノウハウを紹介する。

「3月期企業の決算発表で注目しなければならないのは、次の決算期の業績予想だ」

こう指摘するのは、著名投資ブロガーの会社員投資家、奥山月仁さん(ハンドルネーム、50代)だ。上場企業の管理職として多忙を極める合間を縫って、株式投資を実施。中小型の成長株を割安な価格で購入して長期保有する手法を主に手掛け、数億円に上る資産を築いたスゴ腕投資家だ。

相場が示す意外な反応

業績予想にフォーカスすべきだと主張する理由はいくつかある。まずは、2021年3月期決算の結果が想定外の内容となる企業が少ないと見込まれること。2番目の理由は、21年3月期決算と一緒に発表される22年3月期の業績予想が総じて弱気な数字になる可能性が高いことだ。

「コロナ禍で自社の商品やサービスのニーズが急拡大して業績が急伸した企業は、"特需"が続かずに業績の拡大ペースが鈍化することを織り込む。逆にコロナ禍で業績が悪化して、22年3月期には回復が見込まれる企業も、新型コロナウイルスの感染再拡大を意識して、強気の予想は出しにくい。弱気予想のオンパレードになりそうだ」(奥山さん)

弱気な業績予想が相次げば、相場はどんな反応を示すだろうか。「失望や警戒から保有株を売却する動きが広まると想像しがちだが、そうはならない確率の方が高いとみている」。奥山さんはこう打ち明ける。

なぜか。「総じて弱気という想定が現実のものとなり、悪材料が出尽くしたと受け止めて買いに動く投資家が多いからだ。その結果、相場全体が上昇しやすい。過去にそうした展開を何度も経験してきた。今回もそうなる可能性が高いと考えている」(奥山さん)

相場が下落する可能性も考慮

反転して上昇することが期待できるので、奥山さんは有望株を売らずに持ち続ける構えだ。ただし、弱気予想のオンパレードで必ず上昇相場になると確信しているわけではない。逆に下落相場になる可能性も考慮している。「その可能性を警戒して保有株をいったん売却し、決算発表が終わったら買い戻すのも一つの手だ」と語る。

売却を決断する目安として、「同業他社で先に決算を発表する会社があれば、発表後の株価の動きをチェックするといい」と言う。弱気な業績予想を受けて売りがかさみ、それで株価が大きく下落すれば、自分の持ち株でも同じことが起きる可能性が高い。それで不安が増せば、いったん売却するという判断もできる。逆に株価がさほど下がらなければ、自分の持ち株をキープする安心感も増すはずだ。

だが、奥山さん自身は保有株をいったん売却することはないと言い切る。「もし相場全体が急落して持ち株も連れ安すれば、割安な価格で買い増すチャンスだ」(奥山さん)

一時的に下落する局面を狙って買う

株を持ち続けるためには、株を発行している企業の成長力や株価の上昇余地について強い自信を持つことが必要になると続ける。「売上高や営業利益、営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)の推移をチェックして、業績の拡大ペースが衰えていないことを確認することが欠かせない」

コロナ禍でもぶれずに業績を拡大し続けている企業の例として、奥山さんはMCJプロトコーポレーションを挙げる。MCJは、パソコンの受注生産を手掛けている会社だ。コロナ禍で在宅勤務が拡大したことが追い風となり、パソコンの販売が拡大。売上高と本業のもうけを示す営業利益は共に増加基調が続いている。

プロトコーポレーションは中古車情報誌を発行する会社としてスタートし、インターネットの台頭を受けてネットでの情報提供に事業の幅を広げてきた。現在は、自動車ディーラーや中古車販売店、パーツ販売店などの商品在庫データを広告出稿という形で集めてデータベース化し、自社の情報誌や中古車検索サイトを通じて提供する事業を主軸としている。

プロトコーポレーションの売上高や営業利益は、毎年第3四半期(10~12月)に最も大きくなるといった季節特性がある。そのため、四半期の業績は直前の四半期ではなく、前年同期と比べて比較するのがポイントだ。そうしないと、業績の伸縮度を正確に把握することができない。

「プロトコーポレーションのように、特定の時期に集中的に稼ぐ企業は多い。例えば、筆記具最大手のパイロットコーポレーションは、営業利益の半分近くを新学期が始まる4~6月期に稼ぐ。ビールや清涼飲料のメーカーは、製品の販売が夏場に膨らむので、7~9月期の利益が最も大きくなる。こうした企業の四半期決算は、前年同期と比較することが欠かせない」

プロトコーポレーションは19年に本社ビルなどを売却し、その売却益を特別利益として20年3月期決算に計上した。21年3月期にはこの特別利益がなくなるため、当期純利益は20年3月期から減少することが見込まれている。これが投資家の失望売りを招けば、株価が下落して割安な価格で買い増しするチャンスが到来すると期待する。

さらに、昨年にコロナ禍の影響で一時中断した国内中古車の海外輸出が再開しており、それが同社の22年3月期の業績を押し上げる大きな要因になるとみる。

「相場全体の上昇もあって、成長企業の株価は全般的に割高になっている。割安な価格で買うには、特別利益や特別損失の影響で一時的に業績に大きなブレが生じ、それが失望売りにつながって株価が急落する局面を狙って仕込む工夫が求められる」。奥山さんはこう強調する。

(中野目純一)

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