10年間のリターン800%超 スゴ腕プロの成長株投資術
トップファンドマネジャーに学ぶ銘柄発掘法(上)
「将来の日本経済は、経済社会構造の変化によって労働生産性が高まることでしか、活性化しない。これが運用の根底にある信念だ」

こう話すのは、シオズミアセットマネジメント代表取締役社長の塩住秀夫さんだ。塩住さんは海外で最も有名な日本人ファンドマネジャーかもしれない。
1980年代に著名投資家のジョージ・ソロス氏が率いた伝説のヘッジファンド「クォンタム・ファンド」で日本株のファンドマネジャーを務めた。90年に香港に自らの会社を設立して、その後2001年に全業務を日本へ移管した。今は海外籍の日本株ファンドを運用する。運用資産総額は、20年12月末時点で14.8億ポンド(約2080億円)。10年間で34.4倍に拡大した。
20年の運用益は4割超え

運用する最大のファンドは、米運用大手のフランクリン・テンプルトンが英国で販売する「レッグ・メイソン・IF・ジャパン・エクイティ・ファンド」。1996年10月に設定された日本株専門の公募型ユニットトラスト(英国の投資信託)で、運用リターン(ポンドベース)は、世界的な新型コロナウィルスの感染拡大を発端に波乱の展開となった20年が年間40.15%。過去10年の平均リターンは年率24.65%だ。設定来の累計リターンは972.53%に上る。
英金融情報会社のシティワイヤによると、20年の運用成績は114人の日本株ファンドマネジャー中2位。15~20年の5年間の運用成績も71人中2位だった。
塩住さんの投資手法は成長株への長期集中投資。保有銘柄数は21年1月末時点で42と少ない。「業績が拡大し続けている限りは持ち続ける」と塩住さんは説明する。前述の驚異的な運用成績に大きく貢献したのは大化け株だ。「組み入れ上位には5倍以上に値上がりした銘柄が幾つもある」と語る。

銘柄の選定では、日本の経済社会構造を変化させる投資テーマに着目する。①医療・介護②インターネット関連③人口減少・老齢化によりメリットを受けるアウトソーシング関連──の3つだ。
「3つのテーマで購入した保有銘柄の多くは、コロナ禍で成長が加速した。アウトソーシング関連は打撃を受けて利益が大きく減少したが、それは一時的なもの。コロナ禍が収束して経済がある程度ノーマルな状態に戻れば、業績は好転する。だから売却しない」
PERの数値は気にしない
20年には、コロナ禍で業務のデジタル化や遠隔医療の普及が加速するとみて、自治体向けシステム開発を手掛けるチェンジ、医師専用サイトを運営するメドピア、企業向けITコンサルティングが主力のベイカレント・コンサルティング、法人向けクラウド型名刺管理サービスのSansanの4銘柄を購入した。メドピアとSansanの予想PER(株価収益率)は100倍を超えているが、その点は気にしていない。「2~3年後も現在と同じ利益成長率が続くとみているので持ち続ける」と語る。

(中野目純一)
[日経マネー2021年4月号の記事を再構成]
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/2/20)
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