利益確定や損切りが上達 「株の売り方」の正解とは
個人投資家のための「売りのお悩み」相談室
利益確定ができない、損切りが遅れて大きな損失に……。株式投資において、「売り」は損益に直結する重要な場面。売りがうまくできずに、利益をなかなか伸ばせないという人も多いはず。日経マネーが実施した「2021年個人投資家調査」(4~5月にインターネット上で実施)で多くの個人投資家から寄せられた売りに関する悩みについて、テクニカルアナリストの横山利香さんに改善策を聞いた。
お悩み1 相場が急落すると怖くなって損切りしてしまう
売買の判断基準となる数字を持とう

コロナショックのような相場急落時に買い向かえば最終的に勝てる、という考えは正しいと思います。ただ、下げの途中で怖くなって思わず損切りしてしまう人が多いのも事実でしょう。
怖くなってしまうのは、「下がっているから何となく割安」と雰囲気で売買していて、企業業績などの数字を見ていないからではないでしょうか。相場急落時に冷静に売買するには、自分の中に根拠となる数字を持つ必要があります。
私の場合、普段から日経平均株価のPER(株価収益率)や1株利益の推移をチェックしています。そして、1株利益が伸びていて、PERが割高でない時に相場急落が起きたら、買い出動を考えます。業績が悪化していて、1株利益が減っている時は、下値の根拠が分からないのでリスクが高いと考えます。
過去の日経平均の高値と安値などから節目となる株価を計算しておき、その水準に近づいたら買い、割り込んだらすぐに損切り、という形で売買します。節目の株価は、3分の1押しや半値押しの他、「フィボナッチ・リトレースメント」などの数値を見ることが多いです。
これが正解という方法はないのですが、自分が勝てる基準を作って「自分のやり方」を実践することが大事だと思います。
お悩み2 決算発表を受けた売買で失敗してしまう
好決算を既に織り込んでいないか警戒を
これは、投資初心者には難しいのですが、「材料出尽くし」と呼ばれるケースです。株価は半年~1年程度先の業績を織り込んで動きます。好業績が予想されている銘柄は、決算が発表される前に、それを織り込んで株価が上昇します。決算で発表された数字が事前の期待値を上回ることができなければ、そこが株価の天井になってしまうという仕組みです。
特に、前回や前々回の決算発表から上昇が続いている企業は、好業績が株価に織り込まれている可能性が高いので、材料出尽くしを警戒する必要があります。
今なら、来期の業績水準や中期経営計画の数字などを注視しましょう。成長が鈍化しているようなら、一旦損切りも検討します。
お悩み3 SNS上の情報に振り回されてしまう
自分なりの投資手法の確立を
私が投資を始めた頃は、ヤフーファイナンス掲示板が賑わっていました。私の経験上、そういう情報を見て売買しても、うまくいったためしがありません。
SNSなどの情報を見なくても投資で勝つことはできます。自分のやり方を確立して、自分の得意な銘柄だけを手掛ける方がいい結果になると思います。
そもそも「イナゴ投資」は早く買うほど勝ちやすいので、SNSで話題になってから買うのはリスクが高いです。投資をするにしても、単純にSNSに乗るのではなく、売買高などのランキングを毎日チェックして初動をつかむといった工夫が必要です。
お悩み4 売りタイミングがつかめない
小さな成功体験を積み重ねよう
売りがうまくできない、という自覚がある人は、とにかく、売る練習をしてみてください。5%でも10%でもいいので利益確定をしてみる。あまり痛くない損失額で損切りしてみる。こうした成功体験を積み重ねることで、次第に売る時の決断力が付いてくると思います。
そして、私が売りで注意しているのは「欲をかきすぎない」ことです。よくあるのは、高値を付けて下がってきた銘柄が一度反発するものの、前の高値を抜けずに急落するというパターンです。この場合、一度反発したところで売らなければいけないのですが、以前の高値を覚えていると損した気持ちになって売りそびれてしまいます。
こうした場合も、利益確定の成功体験を積み重ねていれば「含み益があるうちに売ろう」と考えられるようになります。もし上昇が続いて高値を抜けたら、その時に買い直せばいい。持ち続けた場合に比べると利益は減りますが、損したわけではないのです。
(市田憲司)
[日経マネー2021年12月号の記事を再構成]
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/10/21)
価格 : 750円(税込み)
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