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家計も投資も実践で学ばせる お金に強い子供の育て方

ファイナンシャルプランナー 八木陽子さん

ファイナンシャルプランナー(FP)の八木陽子さんは2005年にマネー教育を手掛ける団体「キッズ・マネー・ステーション」を設立、お金について学ぶ親子向け講座を開催するなど精力的に活動する。経済のデジタル化が急速に進み社会が変化する中、親子でどのようにお金に向き合うべきか。自身の2人の子へのマネー教育についても聞いた。

出版社勤務を経て、2001年にFP資格を取得。05年、親子でお金と仕事を学ぶ団体「キッズ・マネー・ステーション」を設立。子供向けマネー本『10歳から知っておきたいお金の心得』(えほんの杜)を監修。

やりくりは実践させて学ばせる

――最近はキャッシュレス決済の普及などで、子供が現金を目にする機会が減りました。

モノの値段を知らない子は増えています。小学4年生ぐらいの子に「家族の1カ月の食費はいくらだと思う?」と問いかけると、「100万円!」という回答が返ってきたことも。一方で、同世代の子から感心してしまうような回答を得ることもあります。「スーパーで食材を買う時、いつも5000円ぐらい使っているから……。買い物が週2回で、月4万円ぐらい?」と言う子もいました。

――金銭感覚に差がありますね。

義務教育でお金について学ぶ機会がまだまだ不足しているために、親がどれだけ子供にお金のことを教えているかによるところが大きいと感じます。ですが、「我が子にマネー教育をするぞ」と肩肘を張る必要もないと思っています。

親がスーパーでお金を使っている姿を見せる、生活にかかるお金を教えてあげる、といったささいなことが重要です。「スマートフォンはただで使えるもの」だと思っている子も少なくないんですよ。

お小遣いは小学1年から自分で管理

――ご自身の家庭では、どのような工夫をされてきましたか。

大切にしてきたのは、お小遣いの管理の失敗をより早いうちに経験させるということ。なのでお小遣いは幼いうちから与えようと考え、小学1年生から月500円程度でスタートしました。

長男も長女も、お小遣いを与え始めた当初はうまく管理できないことが多かったです。「ガチャガチャ」を引いて、欲しいものが出なくて、またお金を払って引いて。気付いたら貯金がなくなっている。

――親としては、つい叱りたくなりそうです。

お金のやりくりは、大人でも難しいもの。小学生のその程度の失敗であれば普通だと思います。次にお小遣いがもらえるまでの数週間は辛抱したり、「苦労の割には欲しいものが手に入らなかった」という悲しさと向き合ったり(笑)。そういったちょっと苦い経験が教えてくれることは、親のアドバイスよりずっと響くと思います。

――経験を積み、やりくりには慣れましたか?

そうですね。なので高学年になってからは、家族旅行でもお金を使う練習をしてもらいました。子供に1日の予算を伝えて、「どこへ行くか」「どの交通手段を使うか」「お昼ご飯は何を食べるか」といったことを自分で調べて自由にプランを組んでもらう。それだけで、交通費や食費、レジャー施設の料金などの相場観がつかめます。

長男が小学6年生の時には、シンガポール旅行のプランを立ててもらいました。さすがに全日程の計画を考えるのは荷が重いので、頼んだのは2~3日分です。

――海外では、お金の使い道も相場も日本と違います。

それも含めて、勉強になったと思います。面白かったのが、為替について学ぶ機会にもなったこと。旅行計画は、各料金が日本円でいくらになるかを計算しながら立てなければいけません。さらに、旅行中に為替レートが変わったりもする。

お金を「増やす」経験も重要

――為替に難しいイメージを持つ人も多いですが、そうした体験があれば理解が深まりそうです。

お金を「使う」経験以外に、「増やす」経験についても教えたいと思っています。子供と相談して証券会社の未成年口座を開設し、お年玉の一部は投資信託の積み立てに回してきました。

それぞれ子供が小学4年生になったあたりで始めたのですが、長男が積み立てを開始した時期は2011年ごろ。東日本大震災の後で日経平均株価が低迷しており、なかなか資産が増えませんでした。

私はFPとして「積み立て投資は長い目で見るものだ」と分かっているのですが、息子はそうではない。運用報告書を見て、「僕のお金が減ってしまった……」とショックを受けることもありました。

そこで、どうして含み損が出たか、私も一緒に確認するようにしていました。組み入れ上位銘柄の企業を調べて、「この事業がうまくいっていないみたいだね」と。

――経済の勉強にもなりますね。その後の上げ相場も経験したのでは。

今では本人も、長期の積み立て投資がどのようなものかを理解できています。異常とも言えるほど低金利の時代に、資産運用も選択肢に入れる、というのは当然のことと感じているようです。頭ではなく、実体験を通して理解できたのがよかったと思います。

一方で、銀行の預金金利でお金が増える仕組みについても知ってほしいのですが、普通預金金利0.001%の時代ではあまりにも増える実感がないので……、下の娘が小学1年生の時に「ママ銀行」を設立しました。単に、私に預けたら金利が付くという仕組みです。

――確かに、1万円預けて1年の利息が1円未満では、増えた実感がありません。ママ銀行の金利は。

夢の年12%です(笑)。月1%で計算しやすいように設定しました。自分のお金のうち、どれだけを預けるかは子供たち次第です。

マネー教育は試行錯誤の繰り返し

――八木家のマネー教育には工夫が詰まっていますね。

色々失敗もしてきました。小学1年生でお小遣いを月500円で始めたと言いましたが、実は長男の場合、最初は月1000円の設定だったのです。ところが半年後、「お小遣いを下げてほしい」と息子から申し出が。「お金の額が大き過ぎてやりくりの計算ができない」とのことでした。そうか、小学1年生だとそういう壁があるのかと。その後相談して、月500円で落ち着いた形です。

他にも、運用資産額の減少を子供に知らせるのが心苦しく、投信の運用報告書を隠そうかと思ったことも。お小遣い帳のつけ方を教えても子供たちがなかなか続けられない、ということもありました。

そうやって失敗を重ねながら、試行錯誤することがマネー教育では大切だと思うのです。お小遣い帳を続けられないのならば、叱って無理やり続けさせるのではなく、他にお金を管理する方法はあるのか探ってみる。親も子も人間ですから完璧は目指さず、できるだけ柔軟な姿勢で取り組むようにしてきました。

――マネー教育の参考にしてきたものはありますか。

ベースにあるのは、昔ご縁があって見学させてもらった、オーストラリアの金融教育です。訪れたメルボルンの小学校では、教室でオリジナル紙幣を造り、子供たちがそれぞれ店やサービスを展開。いわゆる「お店屋さんごっこ」のようなものですが、6カ月という長い期間かけて実体験でお金について学ぶ機会があることがポイントだと思いました。

先生によると、教室で紙幣のインフレが起きたこともあったそう(笑)。子供たちにとって貴重な機会だったのではないでしょうか。「インフレリスクに備えて投資しましょう」と言ってもピンと来ない大人もいますが、実際に体験したら理解できる。私も頭に詰め込むのではなく、実践を通して学んでもらうことを重要視しています。

(聞き手は大松佳代)

[日経マネー2021年4月号の記事を再構成]

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