還元姿勢強い米国株に投資 安定的な配当収入得る
スゴ腕投資家の配当生活(下)
配当金を再投資に回し資産を増やす

ブログ「配当金を雪だるま式に増やす投資日記」を運営するgonchan0810さんは、米国の高配当株中心の投資で着実に資産を増やしてきた。総資産は約7000万円に上り、2020年の年間配当受取額は約200万円(税引き前、家族名義で管理する分も含む)。配当金は再投資に回すことで、まさに"雪だるま式"に資産が増える仕組みを作り出している。
主力銘柄は09年~15年に購入したものだ。「配当利回り・還元姿勢・事業の安定成長性で選んだ結果、米国株が多くなった」と話す。
リーマン・ショックの暴落局面に本格参入
本腰を入れて投資を始めたのはリーマン・ショック後の08年12月頃。最初は500万円の資金を投じた。金融業界に勤めていて株式投資に関心のあったgonchan0810さんは、ウォーレン・バフェット氏やジェレミー・シーゲル氏、ピーター・リンチ氏などの書籍を読みあさる中で、「暴落局面こそ投資のチャンス」と著名投資家が共通して指摘していることに気が付いた。「実際にその暴落が来たので買い向かったが、09年になっても株価は下がり続けたので怖かった」と振り返る。
その時に購入したのは、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)、フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)といった米国株。特に影響を受けたのが、シーゲル氏の高配当やバリューを重視した投資法だという。09年3月には株価も回復し、ポートフォリオの含み益が出るようになった。

運用額の2割程度だが、日本の高配当株も保有する。12年頃には通信大手のNTTを新規購入した。当時のPBR(株価純資産倍率)は1倍割れ、配当利回りは4%超えの水準だった。「割安感があったが、当時は"バブル象徴銘柄"のような印象が強く、嫌気されていた」と振り返る。
購入した理由は単に「割安で高利回りだったから」だけではない。①当時、スマートフォンの普及などで事業拡大の余地があったこと②データ通信事業は定期的な収入が得られること③決算資料を見て「株価を上げるために配当を重視する強い意志を感じた」こと――から購入を決めた。その後、NTTは連続増配株として知られるようになった。
株主還元姿勢と事業の安定性を重視
米国株でも日本株でも、銘柄選びで最も重視するのは「株主還元姿勢」。特に注目するのは「連続増配株」だ。各社の経営陣の株主還元に対するコメントを聞き比べると、はっきり差が出るのだという。例えば主力銘柄の一つである米ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)は、「株主還元について『まず増配、次にM&A(合併・買収)、その次に自社株買い』と明確に示している」。こうした、増配に積極的な企業を選ぶ。
還元姿勢の次に見るのが、「事業の安定性」。例えば医薬品企業であれば、主力製品の効用から対象となる市場の規模、安定的な製品需要が見込めるかなども確認する。
10年頃に米製薬アッヴィ(ABBV)(当時はアボット・ラボラトリーズとして購入、アッヴィはその一事業部門だったがその後分社)に投資した際は、「還元姿勢が強い」点に加え、「主力の関節リウマチ治療薬『ヒュミラ』は定期的かつ長期で使用されることが多い」点、「M&Aや分社など、経営状態に応じてダイナミックで柔軟な選択を取っている」点などを評価し、長期で有望だと踏んだ。
PER(株価収益率)15倍以下、配当性向50%以下といった定量的な目安はあるが、投資判断では定性的要素に重きを置く。そのための情報収集も欠かさない。米株の決算情報などは英語で読み、保有株の状況を絶えずチェックしている。
(大松佳代)
[日経マネー2021年10月号の記事を再構成]
著者 : 日経マネー
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