1~2月に多い相場の急落 見習いたいスゴ腕個人の備え
底入れサインで買い出動 空売りや先物で攻めの投資も

株式投資で1億円を超える資産を築いたスゴ腕個人投資家の中には、急落を逆手に取って大きな利益を上げる猛者もいる。例えば専業投資家の夕凪さん(ハンドルネーム)。株主優待の権利確定やTOB(株式公開買い付け)といった特定のイベントに着目し、先回り売買で利益を上げる「イベント投資」のエキスパートだ。
夕凪さんは、デリバティブ(金融派生商品)を駆使して急落時に攻めの投資を展開する。具体的にはオプション取引で、日経平均を一定価格で売る権利のプットを買い建てる。プットの買い建ては、相場が下落すると利益が出る取引だ。
2日間で800万円超の利益
実践例を一つ紹介しよう。16年11月8日に投開票された前回の米大統領選での取引だ。トランプ現大統領の予想外の勝利が伝わった11月9日の日本株相場は大きく動揺し、日経平均は一時1000円超も急落した。夕凪さんは急落を事前に予想してプットを買い建てて、165万円の利益を上げた。

「9日に相場が引ける前にオプションの流動性がなくなり、そこで日経平均の先物を買い建てた。翌日に全ての取引を手じまった。先物も含めると、2日間で800万円を超える利益を手にした」
こうした攻めの投資は、先物の売り建てや個別株の空売りなど、相場の下落で利益が出る他の取引でも行える。

年初来高値や昨年来高値といった「新高値」を付けた銘柄など、株価の上昇にモメンタム(勢い)がある株を買って、短期間で大幅な売却益を上げることを目指す「モメンタム投資」という手法を得意とする専業投資家のペンタさん(同)。このスゴ腕は、コロナショックの暴落時に航空会社の株などを空売りして利益を出した。
コロナショックでも有効だった底入れのシグナルも
全体の相場急落では、18年の後半に起きた「クリスマスショック」も記憶に新しい。10~12月の3カ月間に急落が断続的に発生。その前に2万4000円を突破していた日経平均株価は、クリスマスの12月25日に2万円を割った。
このショックでは、急落が止まったクリスマス当日に買い出動して、有望株を割安な価格で仕込んだスゴ腕も少なからずいた。彼らが相場の底入れを判定する目安として活用しているのが、下に掲げた5つのシグナルだ。

5つの中で、「Bコミ」のハンドルネームを持つ個人投資家としても知られるこころトレード研究所所長の坂本慎太郎さんが「最も確実」と太鼓判を押すのが、東証1部上場銘柄のPBR(株価純資産倍率)の平均値だ。この数値が1倍を割ると下げ止まり、反発が始まることが多い。

株式評論家としてテレビやラジオなどのメディアでも活躍する坂本さんは、「コロナショックでは、他の目安では全体相場の急落は止まらなかったが、東証1部に上場する銘柄の平均PBRは0.89倍で下げ止まった。平均PBR1倍割れは鉄板の目安だ」と指摘している。
(中野目純一)
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2020/12/21)
価格 : 750円(税込み)
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