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オーナー企業に注目 経営力ある成長株を主軸に据える

運用のプロに学ぶ銘柄発掘法(下)

中小型株を主な投資対象とする投資信託の運用で好成績をあげているファンドマネジャーの銘柄選びの視点を紹介する「運用のプロに学ぶ銘柄発掘法」。今回は日興アセットマネジメントの北原淳平さんに、投資戦略と銘柄選びのポイントを聞いた。

難相場でもプラスリターンを実現

北原淳平さん 2005年、国内の大手信託銀行入行。本店営業や為替トレーダー業務に従事。07年から東京海上アセットマネジメントで運用業務に携わる。19年7月に日興アセットマネジメント入社。「ミュータント」の運用を担当。

成長企業株を軸に異なるタイプの銘柄にも投資することで、どんな相場でも利益を出すことを狙う。そんな運用を目指す投資信託が人気を集め、純資産総額を急増させている。日興アセットマネジメントの「ミュータント」だ。

同投信の運用責任者を務めているのが、シニアファンドマネジャーの北原淳平さん。北原さんは東京海上アセットマネジメントで、創業者が経営の手綱を握っているオーナー企業の株にフォーカスした「東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン」の運用を担当。相場全体の急落が起きて多くの投信のリターンがマイナスに沈んだ2018年にもプラスリターンを達成するなど、抜群の運用成績を上げてきたことで知られる。

新たな運用法を採用した理由

2019年7月に日興アセットに移籍し、同年8月からミュータントの運用に携わっている。異なる2つのタイプの銘柄に投資する運用は北原さんが始めたものだ。新たな運用スタイルを採用した理由を次のように説明する。「成長企業の株には、時価総額の小さい中小型株が多い。それらの銘柄は、時価総額の大きい銘柄に資金が集まって相場全体が大きく上昇する局面では資金が回らず、取り残される傾向がある。それで投信の運用成績が一時的に悪化するのは問題だと感じてきた」

成長企業株への投資を核にしながら、大型株主導で相場全体が大きく上昇する局面でもその恩恵を受けて、投信のリターンを安定させる手立てはないか――。考え抜いた末に採用したのが、新たな運用スタイルだった。

具体的には、独自の要因によって利益成長が期待できる企業の株の他に、為替変動や金利の動向といった外部のマクロ要因によって利益が改善する企業の株を、全体の1~4割の範囲で組み入れる。そして、その組み入れ比率を随時調節する。

そうすることで、大型株に資金が集まって相場全体が上昇する局面ではマクロ要因で利益改善が期待できる銘柄の比率が高くなるようにして、相場上昇の恩恵を受けられるようにする。実際、上に掲載したグラフを見ると、東証1部に上場している全銘柄の予想PERの平均が高くなっている時にマクロ要因による利益改善が期待できる銘柄の比率も高くなっているのが分かるだろう。

3月末時点の組み入れ上位を見ても、日本航空をはじめ、コロナ禍の収束に伴う景気回復で業績が大幅に回復することが見込まれる運輸株や石油株、金融株が並ぶ。今年に入ってそれらの銘柄に資金が流入し、相場全体が大きく上昇してきたことを受けた形だ。

2タイプの銘柄の比率調整で考慮しているのが、PERと株価上昇のモメンタム(勢い)だ。予想PERが高い銘柄を売却することで、投信全体の予想PERが高くなり過ぎないようにする。同時に大きく上昇した銘柄も売って、上昇余地の少ない銘柄ばかりになることも防いでいるという。

オーナー企業の強みに注目

一方、成長企業株への投資ではオーナー企業を選好している。北原さんはオーナー企業には4つの強みがあると説明する。

まずはオーナー経営者自身が大株主である点だ。株価の影響を大きく受けるので、株価を上昇させようとする強い動機が働く。2つ目は、サラリーマン経営者と違って短い任期で交代する必要がない点だ。経営に長く携わるので、長期に及ぶ投資や景気悪化時に人材採用に力を入れるといった逆張り投資にも取り組める。

3つ目は、オーナー経営者が最終的な決定を下すので、経営の意思決定と実行が早い点。そして最後の4つ目は、オーナー経営者ならば、大胆な経営戦略を打ち出しやすい点だ。

もちろん、オーナー企業もいいことずくめではない。会社の私物化や後継者難、親族争いといった問題を抱えていることもある。調査でそうした問題の有無を確認している。「オーナー経営者が明確な経営ビジョンを持ち、それを実現する経営戦略をステークホルダー(利害関係者)にきちんと説明しているかがポイントだ」と北原さん。「ビジョンや戦略があって、その内容を私自身が納得できる会社の株を持つようにしている」という。

(中野目純一)

[日経マネー2021年6月号の記事を再構成]

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